ロスタイムライフ
文字数 1,353文字
「おい」
「はい、なんでございましょう」
「俺は一体何を見せられているんだ」
「これはデュロック様が見たがっていた先でございますよ。
何処にでもある普通の幸せな家庭です」
俺はこんな結末望んじゃいなかった。怒りに身を任せて言葉を吐き出す。
「俺が聞きたいのはそんなことじゃない。
あれは本当に俺なのか」
嫌だ。見たくない。だけどもう閉じるための瞼など持ち合わせてはいない。
「はい。あの食卓に上っているのがデュロック様です」
信じたくない。
「トンカツという人間の料理です。
それにしてもあの奥様は料理がお上手ですね。
カラッと揚がっていて、とても美味しそうです」
「未だ要領を得ていないデュロック様のためにはじめから説明させていただきますと、デュロック様方は豚という種族にあたります。そして豚は、デュロック様が用務員と思っていた人間に飼育され、程良く肥たら殺され、人間の食料となります。豚であるデュロック様方は人間の好物の一つですので大量に飼育され、殺され、食べられるのです」
「さぞショックだったことでしょう。慰めてあげますよ。よーしよし。
あっ、撫でる頭がないんだった。ハハッ」
死神は陽気に笑う。
うまく働かない頭で考える。
「ランドとレースはこれを見たのか」
「その通りでございます。デュロック様のご友人、恋人である御二方も私が担当させていただきました」
「類は友を呼ぶ、人間も的を射た言葉を作りますね。御二方もデュロック様と同じ願いになさったのですよ」
「しかも御二方ともデュロック様と同じ反応をなされているときた」
俺はこんな結末望んじゃいなかった。怒りに身を任せて言葉を吐き出す。死神は高笑いしている。
俺には何がそんなに可笑しいのかわからない。お前がおかしいことしかわからない。
「ちなみにランド様は生姜焼き、レース様は角煮でした。どちらも美味しそうでしたよ。あっ、デュロック様はそれを聞いてもどんな料理かもわかりませんよね」
失礼しました、死神はそう言って頭を下げた。
死神はパチンと手のひらを叩いた。
「では願いも叶え終わりましたので、そろそろ魂を頂戴させていただきます」
「ダメだ、俺はこんなの認めない」
「認める認めないの話ではなく規則ですので。
はじめに言いましたよね。魂を頂くと」
死神がローブを捲り上げると、そこには口があった。腹部に大きな口。小さく悲鳴のようなものが聞こえる。
「お目汚し失礼します。どうにもこの口、締まりが悪いもので色々と垂れてしまうんですよね。涎であったり魂の叫びであったり。
食べられるのは一瞬で痛くありませんのでご安心ください」
「嫌だ。やめてくれ」
「どうにもあなた方はお揃いがお好きなようですね。願いも一緒、反応も一緒、顔も一緒、最後の悲鳴も一緒とは。
顔に関しては私は豚の区別などつきませんから仕方がありませんけどね」
「先の御二方は魂の味まで一緒でしたが。さて、デュロック様はどうでしょうか。わたくし大変興味があります」
「では、いただきます」
「はい、なんでございましょう」
「俺は一体何を見せられているんだ」
「これはデュロック様が見たがっていた先でございますよ。
何処にでもある普通の幸せな家庭です」
俺はこんな結末望んじゃいなかった。怒りに身を任せて言葉を吐き出す。
「俺が聞きたいのはそんなことじゃない。
あれは本当に俺なのか」
嫌だ。見たくない。だけどもう閉じるための瞼など持ち合わせてはいない。
「はい。あの食卓に上っているのがデュロック様です」
信じたくない。
「トンカツという人間の料理です。
それにしてもあの奥様は料理がお上手ですね。
カラッと揚がっていて、とても美味しそうです」
「未だ要領を得ていないデュロック様のためにはじめから説明させていただきますと、デュロック様方は豚という種族にあたります。そして豚は、デュロック様が用務員と思っていた人間に飼育され、程良く肥たら殺され、人間の食料となります。豚であるデュロック様方は人間の好物の一つですので大量に飼育され、殺され、食べられるのです」
「さぞショックだったことでしょう。慰めてあげますよ。よーしよし。
あっ、撫でる頭がないんだった。ハハッ」
死神は陽気に笑う。
うまく働かない頭で考える。
「ランドとレースはこれを見たのか」
「その通りでございます。デュロック様のご友人、恋人である御二方も私が担当させていただきました」
「類は友を呼ぶ、人間も的を射た言葉を作りますね。御二方もデュロック様と同じ願いになさったのですよ」
「しかも御二方ともデュロック様と同じ反応をなされているときた」
俺はこんな結末望んじゃいなかった。怒りに身を任せて言葉を吐き出す。死神は高笑いしている。
俺には何がそんなに可笑しいのかわからない。お前がおかしいことしかわからない。
「ちなみにランド様は生姜焼き、レース様は角煮でした。どちらも美味しそうでしたよ。あっ、デュロック様はそれを聞いてもどんな料理かもわかりませんよね」
失礼しました、死神はそう言って頭を下げた。
死神はパチンと手のひらを叩いた。
「では願いも叶え終わりましたので、そろそろ魂を頂戴させていただきます」
「ダメだ、俺はこんなの認めない」
「認める認めないの話ではなく規則ですので。
はじめに言いましたよね。魂を頂くと」
死神がローブを捲り上げると、そこには口があった。腹部に大きな口。小さく悲鳴のようなものが聞こえる。
「お目汚し失礼します。どうにもこの口、締まりが悪いもので色々と垂れてしまうんですよね。涎であったり魂の叫びであったり。
食べられるのは一瞬で痛くありませんのでご安心ください」
「嫌だ。やめてくれ」
「どうにもあなた方はお揃いがお好きなようですね。願いも一緒、反応も一緒、顔も一緒、最後の悲鳴も一緒とは。
顔に関しては私は豚の区別などつきませんから仕方がありませんけどね」
「先の御二方は魂の味まで一緒でしたが。さて、デュロック様はどうでしょうか。わたくし大変興味があります」
「では、いただきます」