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 うーんと考え始めた児童たちを、エレン先生は階段の上から眺めているようだった。
 不敵な笑みを浮かべ、どこか満足げだった。

 六年生。ひとりの児童が手を挙げた。

「使いません」

 それはどういう意味?とエレン先生が聞いた。

「使わなかったら、少し復活するかもしれないから」
「電池自体がってこと?」
「はい」
「どうして?」
「なん、となく」
 今度試してみようかな。エレン先生はそう言って、大きく頷いた。

「真っ直ぐ目的地に向かうかなあ」

 RPGゲームに熱中していると言った、四年生の児童が言った。

「どういう意味?」

 エレン先生が聞く。

「レベルが低くても、最終ボスに挑んじゃうかも」
「お、勇敢者だね。どうやって戦おう」
「今持ってるありったけの剣とか槍とか装備して、仲間も連れて」
「勝てるかな」
「分からない」
「でも行くんだ、ボスのとこ」
「だって電池切れるし。どっちにしろ終わるなら」
「かっこいい」

 エレン先生は、花音にも聞いた。

「花音。君の花畑はどうするの?」
「どうしようかなあ」
「もう花屋で全部売っちゃう?」
「それはしない」
「どうして?」
「だってもうお金はいらないもん。電池切れちゃうんでしょ?」
「うん」
「だったら最後は、綺麗なお花畑がもっと綺麗になるように、水をたくさんあげるかな」
「わあ。最高だ」

 洞窟で財宝を採掘する、というゲームをしている児童は、慌てて持ち帰ると答えた。
 どうして?とエレン先生が聞くと、王様に見せたいから、と言った。
「王様の笑顔が見られるといいね」

 曲のリズムに合わせて太鼓を叩く、というゲームをしている児童は、もう何遍も叩いた曲を選曲すると答えた。
 どうして?とエレン先生が聞くと、だってこの曲が一番好きなんだもん、と言った。
「僕もあるよ、毎回カラオケで歌っちゃう曲」

 ゾンビを倒していく、というゲームをしている児童は、逃げまくると答えた。
 どうして?とエレン先生が聞くと、最後の最後で食われたくねーし、と言った。
「それはそうだ。痛いのはいやだ」

 オンラインで仲良くなった人物がいると言った児童は、ゲームの中、その人物に会いに行くと答えた。
 どうして?とエレン先生が聞くと、もう会えないことを伝えておかないと、相手が心配しちゃう、と言った。
「さようならを言いに行くんだね」
 

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