文字数 479文字

「電池なんて切れないよ」

 ある男子児童が言った。

「その前に、充電するし」

 後頭部に両手を回したエレン先生は、ワーオと言った。

「そうか、今の時代は電池なんか使わないよね。コンセントにさせば、それでいいんだもんね」

 皆の頭にハテナが浮かんだと思う。
 そうだよ、それで?っていうハテナが。

「じゃあさ」

 半笑いのエレン先生は続けた。

「充電器っていうものがこの世にはなくて、全てのものは電池で動いている。だとしたら君たちはどうする?ゲーム機の電池がなくなりそうになった時」

「替える」

 満場一致。それ以外、あり得ない。
 なに言ってんのとか、当たり前じゃんとか、そんな言葉が飛び交った。

「何に替えるの?」
「新しい電池に」
「家に替えがなかったら?」
「買う」
「どこで?」
「電気屋、かな」
「お店がお休みの、夜中に切れるかもよ?」
「じゃあコンビニ」

 便利な世の中になったなーなんてエレン先生は目を丸くして、感嘆する。

「じゃあさ」

 そして頬杖をついて、続ける。

「どこにも電池が売っていなかったら、どうする?」

 皆は途端に静かになった。

「今日は電池の切れる前夜です。さあ、考えてみて」

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