0 プロローグ
文字数 1,077文字
いつの頃からか僕は、毎日同じ夢を見るようになっていた。
夢の中でいる場所は生まれ育った日本とは違い、西洋寄りな雰囲気の国のようだ。
周りを見渡している僕の前を馬車が颯爽と通り過ぎていった。
馬車が通った煉瓦で補強された道の向こうには石畳の広場があり、真ん中では大きな噴水が水柱を高く上げている。
商店街のような露店が並び、いくつもある煉瓦や石造りの住宅。そして奥の丘の上には城のような建物が見えた。
さしずめどこかの城下町と言ったところか。
*
あまりにも自分の日常とは違いすぎる。
この街並みもだが、道や広場を行き交う人々も僕とは全然違う。
僕は日本育ちの中学生だ。髪は黒いし、一応成長期だから身長は伸び始めているけど、言うほど高くもなく低くもない。つまり並だ。
今着ているのは部屋着のジャージ。寝る時はいつもこれを着ている。
だけど周りを見ると僕と同じ風貌の人は誰一人としていない。
髪の色は赤、黄色、茶色、金髪……露店で果物を売っている若い男の人の髪は銀色だ。
服だってどこかの民族衣装や踊り子みたいだし、さっき僕の前を鎧姿の人が通り過ぎていった。
何なら肌の色まで違う人もいる。
目の前に広がる光景はどこか現実離れしていると言うか、これはあれだ。
昔どこかで見た西洋画に描かれていたような風景に似ている。
そしてもう1つ。
ここの人達は誰も僕に気がついていない。
とても至近距離ですれ違う人もいると言うのに一切誰とも目が合わない。
気がついていないと言うか、もはや相手に僕が見えていないようにも思える。
あくまで僕の夢の中の世界だから、と言う事なのだろうか。
ふむ。
それならば心ゆくまで過ごさせてもらおう。
そんな事を考えた僕の前をキャスケット帽を被った少年が駆け抜けていった。
ななめ掛けの茶色いカバンには丸まった新聞のようなものがたくさん入っている。
「みんなおはよう!新聞だよ!」
よく通る声で、その子は新聞を片手に広場の人々に呼びかけ始めた。
そうだ、彼は昨日夢を見た時にも出て来た子だ。
同じように広場で新聞を売っていた。
『月曜日の新聞だよ!早い者勝ちだよ!』
その声にみんな集まっていたのを思い出した。
「おはようカトル!」
「カトルちゃん、1部ちょうだい」
カトルと呼ばれた新聞売りのところには、昨日のように人が群がり始めている。
「毎度あり!まだまだあるよ!刷りたての火曜日の新聞だよ!」
あっという間にカトルが新聞を売り捌いて行く様子を眺めていた僕はある事に気がついた。
カトルは今火曜日の新聞だと言っている。
昨日は月曜日と言っていた。
つまり。
夢の中でも現実と同じように時間が過ぎていっているのか?
夢の中でいる場所は生まれ育った日本とは違い、西洋寄りな雰囲気の国のようだ。
周りを見渡している僕の前を馬車が颯爽と通り過ぎていった。
馬車が通った煉瓦で補強された道の向こうには石畳の広場があり、真ん中では大きな噴水が水柱を高く上げている。
商店街のような露店が並び、いくつもある煉瓦や石造りの住宅。そして奥の丘の上には城のような建物が見えた。
さしずめどこかの城下町と言ったところか。
*
あまりにも自分の日常とは違いすぎる。
この街並みもだが、道や広場を行き交う人々も僕とは全然違う。
僕は日本育ちの中学生だ。髪は黒いし、一応成長期だから身長は伸び始めているけど、言うほど高くもなく低くもない。つまり並だ。
今着ているのは部屋着のジャージ。寝る時はいつもこれを着ている。
だけど周りを見ると僕と同じ風貌の人は誰一人としていない。
髪の色は赤、黄色、茶色、金髪……露店で果物を売っている若い男の人の髪は銀色だ。
服だってどこかの民族衣装や踊り子みたいだし、さっき僕の前を鎧姿の人が通り過ぎていった。
何なら肌の色まで違う人もいる。
目の前に広がる光景はどこか現実離れしていると言うか、これはあれだ。
昔どこかで見た西洋画に描かれていたような風景に似ている。
そしてもう1つ。
ここの人達は誰も僕に気がついていない。
とても至近距離ですれ違う人もいると言うのに一切誰とも目が合わない。
気がついていないと言うか、もはや相手に僕が見えていないようにも思える。
あくまで僕の夢の中の世界だから、と言う事なのだろうか。
ふむ。
それならば心ゆくまで過ごさせてもらおう。
そんな事を考えた僕の前をキャスケット帽を被った少年が駆け抜けていった。
ななめ掛けの茶色いカバンには丸まった新聞のようなものがたくさん入っている。
「みんなおはよう!新聞だよ!」
よく通る声で、その子は新聞を片手に広場の人々に呼びかけ始めた。
そうだ、彼は昨日夢を見た時にも出て来た子だ。
同じように広場で新聞を売っていた。
『月曜日の新聞だよ!早い者勝ちだよ!』
その声にみんな集まっていたのを思い出した。
「おはようカトル!」
「カトルちゃん、1部ちょうだい」
カトルと呼ばれた新聞売りのところには、昨日のように人が群がり始めている。
「毎度あり!まだまだあるよ!刷りたての火曜日の新聞だよ!」
あっという間にカトルが新聞を売り捌いて行く様子を眺めていた僕はある事に気がついた。
カトルは今火曜日の新聞だと言っている。
昨日は月曜日と言っていた。
つまり。
夢の中でも現実と同じように時間が過ぎていっているのか?