1 今日は水曜日
文字数 1,418文字
昨日あのまま夢から覚めた僕は支度をして学校に行った訳だが、授業は一切聞かずに夢の中のあの街の事ばかり考えていた。
街並みと人々の雰囲気からして、あれはやはりどこかの城下町なのだろう。
文明的な事も考えてみた。
自動車や公共機関がなく主な移動手段が馬車か馬、徒歩な点から見て多分時代は中世、そして西洋色が濃い。
何かの足しになるかと思い、僕は世界史の資料集をパラパラと眺め始めた。
しかしどうやら授業が世界史ではなく英語だったらしい。
僕は外国人の英語教師に早口な英語で窘められてしまった。
何を言っているのかは全く分からなかったけど。
僕に英語力があったらもっと心に響いたのかもしれない。
実に残念だ。
それはよいとして。
結果、世界史の資料集からは一切得な情報は得られないまま帰路についた。
仕方ない。続きは夢を見ながら考えよう。
そもそもこれだけ考えておいて、今日もし全く違う夢を見たとしたらその時は間違いなく自分自身を呪うだろう。
知らない間に僕はあの夢を見るのが楽しみになっていた。
*
僕はいそいそと夕飯を食べて風呂に入り、早々と就寝した。
そして、ゆっくりと目を開けた先には。
昨日と同じ広場が広がっている。僕は静かにガッツポーズをした。
昨日同様、周りを行き交う人々はやはり僕には気がついていない。
僕の見立てが正しければ、そろそろ昨日のカトルと言う新聞売りが新聞を売りにこの広場に来るはずだ。
昨日カトルは火曜日だと言っていた。もし彼が今日は水曜日だと言ったとしたら。
夢の中でも現実世界と同じように、時間が過ぎていっている!と証明される訳だ!
だからなんだとか言われたらそこまでだけど!
まあいい。少しずつだ。
この謎な夢について、僕は解明していってみせる。
意志を固めた僕は、広場の噴水の縁に座りカトルが来るのを待った。
「おはよー!!みんなおはよー!!」
住宅街の奥の方から、大きな声が近づいて来るのが聞こえる。
来た!!
声の方を見ると、キャスケット帽を被った女の子が広場に走ってくるのが見えた。
「みんなおはよう!水曜日の新聞だよ!」
昨日のカトルとは別の子だが、やはり新聞売りのようだ。
「おはようニキータ!」
「ニキータちゃん、おはよう」
ニキータと呼ばれた女の子は、カトルと同じように新聞を売り始めた。
カトルではなかったがまあ良い。新聞売りにもきっと当番はある。
それよりもだ。
「水曜日って言った!!!」
僕は思わず叫んでいた。
やはり夢の中のこの世界も、現実世界と同じように時が流れている。
さて、次だ。
「…………」
何をすればいいんだ?
誰かに話しかけてみるか?
そもそも話しかけていいものか?
悶々と考えていた時、女の子の声が後ろから聞こえてきた。
「見つけた……」
「えっ」
僕が振り返った先に、1人の女の子が立っていた。
肩まで伸びた、夏の空のように澄んだ青い色の髪。
細やかな刺繍が入った紺のワンピース。
その上にキラキラと光る白いローブを羽織っている。
この夢の中で誰かに話しかけられたのは初めてだ。
「え……、」
誰だろう。
見つけたって僕の事か?
僕を見て驚いた顔をしていた女の子は、はっとした表情をした後に僕のところに駆け寄ってきた。
そして何と、僕の手を両手で握ったのだ。
「ええっ?!あ、あの……」
僕は顔が熱くなって、変な声が出てしまった。
女の子から手を握られるなんて初めてだ。
それもこんな可愛い子に!
その子は僕の手を握りながら、嬉しいそうに言った。
「とうとう現れたのね!!トラベラーが!!」
街並みと人々の雰囲気からして、あれはやはりどこかの城下町なのだろう。
文明的な事も考えてみた。
自動車や公共機関がなく主な移動手段が馬車か馬、徒歩な点から見て多分時代は中世、そして西洋色が濃い。
何かの足しになるかと思い、僕は世界史の資料集をパラパラと眺め始めた。
しかしどうやら授業が世界史ではなく英語だったらしい。
僕は外国人の英語教師に早口な英語で窘められてしまった。
何を言っているのかは全く分からなかったけど。
僕に英語力があったらもっと心に響いたのかもしれない。
実に残念だ。
それはよいとして。
結果、世界史の資料集からは一切得な情報は得られないまま帰路についた。
仕方ない。続きは夢を見ながら考えよう。
そもそもこれだけ考えておいて、今日もし全く違う夢を見たとしたらその時は間違いなく自分自身を呪うだろう。
知らない間に僕はあの夢を見るのが楽しみになっていた。
*
僕はいそいそと夕飯を食べて風呂に入り、早々と就寝した。
そして、ゆっくりと目を開けた先には。
昨日と同じ広場が広がっている。僕は静かにガッツポーズをした。
昨日同様、周りを行き交う人々はやはり僕には気がついていない。
僕の見立てが正しければ、そろそろ昨日のカトルと言う新聞売りが新聞を売りにこの広場に来るはずだ。
昨日カトルは火曜日だと言っていた。もし彼が今日は水曜日だと言ったとしたら。
夢の中でも現実世界と同じように、時間が過ぎていっている!と証明される訳だ!
だからなんだとか言われたらそこまでだけど!
まあいい。少しずつだ。
この謎な夢について、僕は解明していってみせる。
意志を固めた僕は、広場の噴水の縁に座りカトルが来るのを待った。
「おはよー!!みんなおはよー!!」
住宅街の奥の方から、大きな声が近づいて来るのが聞こえる。
来た!!
声の方を見ると、キャスケット帽を被った女の子が広場に走ってくるのが見えた。
「みんなおはよう!水曜日の新聞だよ!」
昨日のカトルとは別の子だが、やはり新聞売りのようだ。
「おはようニキータ!」
「ニキータちゃん、おはよう」
ニキータと呼ばれた女の子は、カトルと同じように新聞を売り始めた。
カトルではなかったがまあ良い。新聞売りにもきっと当番はある。
それよりもだ。
「水曜日って言った!!!」
僕は思わず叫んでいた。
やはり夢の中のこの世界も、現実世界と同じように時が流れている。
さて、次だ。
「…………」
何をすればいいんだ?
誰かに話しかけてみるか?
そもそも話しかけていいものか?
悶々と考えていた時、女の子の声が後ろから聞こえてきた。
「見つけた……」
「えっ」
僕が振り返った先に、1人の女の子が立っていた。
肩まで伸びた、夏の空のように澄んだ青い色の髪。
細やかな刺繍が入った紺のワンピース。
その上にキラキラと光る白いローブを羽織っている。
この夢の中で誰かに話しかけられたのは初めてだ。
「え……、」
誰だろう。
見つけたって僕の事か?
僕を見て驚いた顔をしていた女の子は、はっとした表情をした後に僕のところに駆け寄ってきた。
そして何と、僕の手を両手で握ったのだ。
「ええっ?!あ、あの……」
僕は顔が熱くなって、変な声が出てしまった。
女の子から手を握られるなんて初めてだ。
それもこんな可愛い子に!
その子は僕の手を握りながら、嬉しいそうに言った。
「とうとう現れたのね!!トラベラーが!!」