第4話 父は二十三代

文字数 577文字

 父の(次六)生誕を
庄吉は天下を取ったように喜んだという。
母親「ふじ」他界しているが、次六と八重は
つつがなく、義母「イチ」に育てられる。
 
 大正十二年(1923)一月父に赤紙がきた。
歩兵通信術を取得して、十三年(1924)一月帰還。

 同年の秋。今の国体に当たる第一回目の
国民体育大会が神宮外苑で開催される。
 父は相撲の部で県を代表して出場。
よい成績を残したと記録にある。刺激を受けた
村の若者が、我も我もと相撲にのめり込む。
 ついに作った化粧回し。四股名を太陽という。
 大正十五年(1926)五月二日母、榮と結婚。
母子同時、入籍している。アバウトに驚いた。
こんな話は往々にしてあったらしい。
 翌年、主屋普請をしている。昭和四年二兄誕生。
そのころ、村に橋が竣工。三夫婦揃う家族は珍しい。
橋の渡り初めに招かれて揃って出かけたと聞く。
母にとって一番幸せな時でなかったと思う。
 私と弟が生まれ父に、二回目の召集令状がきた。
 父は支那で、被弾した。
 「天皇陛下、万歳」と叫んだが死にきれず、
野戦病院を巡った末、内地に召還された。          
 父の留守中。庄吉は他界した。
 また、弟の一歳の誕生日も待てず母も帰らぬ旅に出た。
 庭の讃(棺が庭を回る事)は粛々と執り行われた。 
                        白衣の父につづく           
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み