第14話
文字数 4,119文字
「…いい加減にしろよ、清水…」
ミニパトの中から、声がした。
アタシは声のする方向を振り返る。
そこには、ミニパトに乗ったユウの姿があった。
「…ユウ?…」
アタシは思わず声を上げた。
「…アンタ、どうして、ミニパトに乗ってるの?…」
と、アタシ。
アタシはスカートの端を指で掴んで、パンチラを見せるのを止め、ビックリして、ミニパトに乗ったユウを見た。
「…アンタ…まさかワルさをして…」
そう言いながら、内心ユウに限ってそんなことはないと考える。
なぜって、ユウは、
偏差値65
の高校に通っている、スゲエ頭のいいオトコだ。
そんな頭のいいユウがミニパトに乗せられるようなワルさをするはずがない。
アタシがそんなふうに考えていると、
「…オマエが清水か…たしかに外見と中身がこうも違う人間がいるとは驚きだ…」
と、近くで、誰かが言った。
アタシはその声の主を見た。
それは、たった今、アタシがパンチラで誘惑した、若い警官だった。
アタシはビックリして、若い警官を見る。
「…先輩だよ…高校の…」
ミニパトの中から、ユウの声…
「…斉藤だ…ユウの高校の先輩の…」
と、若い警官は名乗った。
アタシは黙って、その斉藤と名乗った若い警官を見た。
「…どうした、なにを、本官をジロジロ見てる?」
と、斉藤。
アタシはニヤッと笑った。
「…斉藤さんって、童貞?…」
アタシは言ってやった。
アタシには確信があった。
アタシのパンチラの威力がここまで効くことは滅多にない。
それが、これほど効くとは、この斉藤は童貞に違いない!
ホントはこの斉藤が童貞であろうとなかろうとそんなことは、アタシにとってどうでもいい(笑)
ただ、昨日の今日だ…
今もこの斉藤と会ったのは、初めてですと大うそついたことがバレた。
このままでは、アタシはおおいに不利!
ここで、アタシが斉藤は童貞だと一発で見破れば、以後、この斉藤と会ったとき、アタシはいつもイニシアチブを握ることができる。
つまり、主導権を握ることができるのだ、
アタシはそう見た、
アタシはそう考えた、
初対面の相手にとって、相手の弱みを握るのが、勝負の決め手…
アタシは、ニヤニヤ笑いながら、斉藤に近寄っていく。
「…やっぱり、斉藤さんって、童貞でしょう…」
アタシはニヤニヤ笑いながら、斉藤に詰め寄る。
斉藤は、
「…いや…本官は…」
と、戸惑いながら、カラダがコチコチに固まっていく。
「…斉藤さん…ごまかしてもダメなんだから…ユリにはお・み・と・お・し…」
アタシは甘ったるい声で、斉藤の手のひらを指で軽くつねった。
斉藤の顔が見る見る真っ赤に変色していく。
…勝った!…
…この勝負、アタシの勝ちだ!…
アタシは確信した。
その勝利の確信を覆したのは、またもユウだった。
「…バカ…この斉藤さんが、童貞であるもんか…」
「エッ?」
アタシは絶句する。
斉藤さんが、童貞でないと、どうしてユウに断言できるんだ。
アタシはユウを睨む。
「…どうして、アンタにこのひとが童貞でないことがわかるんだ…」
アタシは言ってやった。
…事と次第によっては、ユウ…アンタでも許さないぞ…
ユウにアタシの気迫が伝わったのか、ユウは言い辛そうに、アタシに言った。
「…この斉藤さんはオレの姉ちゃんの旦那…子供もいるよ…」
アタシは絶句した。
と、同時に、斉藤から、パッと、カラダを離す。
距離を置いた。
ユウが言った。
「…乗れよ、清水…」
ミニパトの中から、アタシを誘う。
アタシは斉藤を見た。
斉藤は無言で、首を縦に振った。
アタシは仕方なく、ミニパトに乗ることにした。
ミニパトの運転は斉藤がした。
アタシはユウといっしょに後部座席にふたり並んで腰掛けた。
「…ユウ…アンタ、なんで、ミニパトに乗ってるの?…」
と、アタシ。
「…相談に乗ってもらってたんだ…」
「…相談? …このひとに…」
アタシはユウのお姉さんの夫だという斉藤を見た。
ユウの高校の先輩だから、頭はいいはずだが、ただマジメでおとなしそうなオトコだ。
とても、頼れる人間には見えない。
「…バカ…このひとは東大出のキャリアだぞ…」
ユウがアタシの態度から、斉藤を軽く見たのがわかったらしく、アタシに言う。
「…キャリア? …なにそれ?…」
アタシは言ってやった。
キャリアと言っても、アタシには、自転車の後ろの荷台ぐらいしか思いつかない。
ユウはアタシを見て、
「…清水にキャリアと言ってもわからないか…」
と、落胆する。
アタシはそんなユウを見て、
「…ユウ…いくら、アンタでも、アタシをバカにすることは許さないよ…」
と、言ってやった。
アタシはポキポキと、指を鳴らす。
「…違う…違う…清水…オマエをバカにしてるわけじゃないよ…」
ユウは慌てて否定する。
アタシはとりあえずユウを信じることにした。
「…つまり偉くなるひとだよ…将来、警察の…」
ユウは言った。
「…偉くなるって、課長とか部長とか…」
アタシは言ってやった。
「…課長とか部長とかって…」
ユウは絶句する。
「…なに、他にエライひとっているの…ああ、そうか…署長か…でも、そんなに偉くなれるはずないし…」
アタシの答えに、ユウは気が狂いそうな表情になった。
「…とにかく偉くなるひとだよ…清水…東大出てるんだから、それぐらいわかるだろ…」
と、言って、その話を止めた。
アタシはまだ言ってやりたかったが、
ユウの顔がすでにブンムクレ状態だったので、言うのを止めた。
「…で、相談ってなに?…」
「…今度の一件だよ…」
「今度の一件って?」
「…オマエのことだよ…清水…」
「…アタシのこと?…」
アタシは、
…なに、それ?…
と、思う。
「…濱谷あゆみ…あのオンナの仕掛けた罠にオマエはどんどん引きずり込まれて行くぞ…」
ユウは断言する。
「…引きずり込まれていく? …アタシが?…」
ウーン…ユウの言ってる意味がわからん…
「…アイツは狡猾だ…オレも危うくアイツの毒牙にかかるところだった…」
アタシはユウを見た。
たしかに苦しそうな表情をしている。
「…毒牙って?…」
「色仕掛けで、落とされそうになったってこと…」
「…色仕掛け?…」
アタシは絶句する。
あの濱谷あゆみが色仕掛け…
アタシのようなナイスバディの持ち主ならいざ知らず、あの濱谷あゆみの貧弱なカラダで色仕掛けとは…
アタシはビックリ仰天で、ユウをマジマジと見る。
「…バカ…なに考えてんだ…オマエは…」
と、ユウ。
「…色仕掛け=Hじゃねえよ…濱谷の場合は、あの雰囲気だよ…」
「…エッ? 雰囲気?…」
「…オマエも濱谷同様美人だが、雰囲気がない…せっかくのナイスバディなのに、それを生かせない…だが、濱谷は違う…」
「…なにが違うの?…」
「…自分を何倍にも何十倍にも、魅力的に魅せる独特の雰囲気がある。威厳ってあるだろ…エラそうに見えるひと…」
「…ウン…」
「例えば一流会社の社長でも、威厳があるひとって以外にいないんだ…ところが、平社員でも妙にエラそうに見えるひともいる…それと同じだ…」
「…ウーン…」
アタシは腕組みをして、考え込む。
…威厳か…ユウのヤツ…また、難しい話を持ち出してきたな…
アタシが悩んでいると、
ユウが、
「…つまり、平たく言うと、オマエに誘われた方が、嬉しいか、濱谷に誘われた方が嬉しいかの違いだよ…」
…アタシに誘われた方が嬉しいか、濱谷あゆみに誘われた方が嬉しいか?…
アタシはユウの言ってる意味がよくわからないので、ユウを見た。
「…軽さだよ…」
と、ユウ。
「…軽さ?…」
と、アタシ。
「…オマエは美人でナイスバディだけど、軽いんだ…ところが、濱谷は重みというか…独特の存在感がある…だから、濱谷に誘われた方がオトコは嬉しくなる…」
…コレはアタシにも、なんとなくわかる…
…オトコ連中は最初こそアタシの美しさとボディにクラクラと悩殺されるが、知り合うと、すぐに気安くなる(笑)…
…別にキスをしたわけでも、Hをしたわけでもないのに、すぐに仲間状態(笑)…
…気安く、清水と呼んでくる(笑)…
…その対応に、すでに男女の別さえなくなってる(笑)…
…つまり、重みとはそういうものか…
…コレはまたひとつ勉強になった…
アタシは納得した。
「…そして、オレもまたその誘いに乗ったわけだ…」
と、ユウ。
…エッ? 誘いに乗った?…
…今、ユウはなんて言ったんだ?…
アタシはビックリして、ユウを見る。
「…オマエに最初タクが悪いオンナ、つまり濱谷あゆみに騙されてるって言ったよな…」
「…ウン…」
「…アレは、ウソだ…オレが濱谷に頼まれたからだ…」
…やっぱり、そうだったのか?…
アタシはユウを見る。
「…だが、オレは濱谷に使われてはいない…」
…エッ? 使われてない?…
アタシはユウをマジマジと凝視する。
「…使われてないって、どういうこと?…」
ユウは答えない。
すると、運席席の斉藤が、ミニパトを止め、
「…着いたよ…」
と、一言。
そこは、なんと、父の勤める会社の前だった。
ミニパトの中から、声がした。
アタシは声のする方向を振り返る。
そこには、ミニパトに乗ったユウの姿があった。
「…ユウ?…」
アタシは思わず声を上げた。
「…アンタ、どうして、ミニパトに乗ってるの?…」
と、アタシ。
アタシはスカートの端を指で掴んで、パンチラを見せるのを止め、ビックリして、ミニパトに乗ったユウを見た。
「…アンタ…まさかワルさをして…」
そう言いながら、内心ユウに限ってそんなことはないと考える。
なぜって、ユウは、
偏差値65
の高校に通っている、スゲエ頭のいいオトコだ。
そんな頭のいいユウがミニパトに乗せられるようなワルさをするはずがない。
アタシがそんなふうに考えていると、
「…オマエが清水か…たしかに外見と中身がこうも違う人間がいるとは驚きだ…」
と、近くで、誰かが言った。
アタシはその声の主を見た。
それは、たった今、アタシがパンチラで誘惑した、若い警官だった。
アタシはビックリして、若い警官を見る。
「…先輩だよ…高校の…」
ミニパトの中から、ユウの声…
「…斉藤だ…ユウの高校の先輩の…」
と、若い警官は名乗った。
アタシは黙って、その斉藤と名乗った若い警官を見た。
「…どうした、なにを、本官をジロジロ見てる?」
と、斉藤。
アタシはニヤッと笑った。
「…斉藤さんって、童貞?…」
アタシは言ってやった。
アタシには確信があった。
アタシのパンチラの威力がここまで効くことは滅多にない。
それが、これほど効くとは、この斉藤は童貞に違いない!
ホントはこの斉藤が童貞であろうとなかろうとそんなことは、アタシにとってどうでもいい(笑)
ただ、昨日の今日だ…
今もこの斉藤と会ったのは、初めてですと大うそついたことがバレた。
このままでは、アタシはおおいに不利!
ここで、アタシが斉藤は童貞だと一発で見破れば、以後、この斉藤と会ったとき、アタシはいつもイニシアチブを握ることができる。
つまり、主導権を握ることができるのだ、
アタシはそう見た、
アタシはそう考えた、
初対面の相手にとって、相手の弱みを握るのが、勝負の決め手…
アタシは、ニヤニヤ笑いながら、斉藤に近寄っていく。
「…やっぱり、斉藤さんって、童貞でしょう…」
アタシはニヤニヤ笑いながら、斉藤に詰め寄る。
斉藤は、
「…いや…本官は…」
と、戸惑いながら、カラダがコチコチに固まっていく。
「…斉藤さん…ごまかしてもダメなんだから…ユリにはお・み・と・お・し…」
アタシは甘ったるい声で、斉藤の手のひらを指で軽くつねった。
斉藤の顔が見る見る真っ赤に変色していく。
…勝った!…
…この勝負、アタシの勝ちだ!…
アタシは確信した。
その勝利の確信を覆したのは、またもユウだった。
「…バカ…この斉藤さんが、童貞であるもんか…」
「エッ?」
アタシは絶句する。
斉藤さんが、童貞でないと、どうしてユウに断言できるんだ。
アタシはユウを睨む。
「…どうして、アンタにこのひとが童貞でないことがわかるんだ…」
アタシは言ってやった。
…事と次第によっては、ユウ…アンタでも許さないぞ…
ユウにアタシの気迫が伝わったのか、ユウは言い辛そうに、アタシに言った。
「…この斉藤さんはオレの姉ちゃんの旦那…子供もいるよ…」
アタシは絶句した。
と、同時に、斉藤から、パッと、カラダを離す。
距離を置いた。
ユウが言った。
「…乗れよ、清水…」
ミニパトの中から、アタシを誘う。
アタシは斉藤を見た。
斉藤は無言で、首を縦に振った。
アタシは仕方なく、ミニパトに乗ることにした。
ミニパトの運転は斉藤がした。
アタシはユウといっしょに後部座席にふたり並んで腰掛けた。
「…ユウ…アンタ、なんで、ミニパトに乗ってるの?…」
と、アタシ。
「…相談に乗ってもらってたんだ…」
「…相談? …このひとに…」
アタシはユウのお姉さんの夫だという斉藤を見た。
ユウの高校の先輩だから、頭はいいはずだが、ただマジメでおとなしそうなオトコだ。
とても、頼れる人間には見えない。
「…バカ…このひとは東大出のキャリアだぞ…」
ユウがアタシの態度から、斉藤を軽く見たのがわかったらしく、アタシに言う。
「…キャリア? …なにそれ?…」
アタシは言ってやった。
キャリアと言っても、アタシには、自転車の後ろの荷台ぐらいしか思いつかない。
ユウはアタシを見て、
「…清水にキャリアと言ってもわからないか…」
と、落胆する。
アタシはそんなユウを見て、
「…ユウ…いくら、アンタでも、アタシをバカにすることは許さないよ…」
と、言ってやった。
アタシはポキポキと、指を鳴らす。
「…違う…違う…清水…オマエをバカにしてるわけじゃないよ…」
ユウは慌てて否定する。
アタシはとりあえずユウを信じることにした。
「…つまり偉くなるひとだよ…将来、警察の…」
ユウは言った。
「…偉くなるって、課長とか部長とか…」
アタシは言ってやった。
「…課長とか部長とかって…」
ユウは絶句する。
「…なに、他にエライひとっているの…ああ、そうか…署長か…でも、そんなに偉くなれるはずないし…」
アタシの答えに、ユウは気が狂いそうな表情になった。
「…とにかく偉くなるひとだよ…清水…東大出てるんだから、それぐらいわかるだろ…」
と、言って、その話を止めた。
アタシはまだ言ってやりたかったが、
ユウの顔がすでにブンムクレ状態だったので、言うのを止めた。
「…で、相談ってなに?…」
「…今度の一件だよ…」
「今度の一件って?」
「…オマエのことだよ…清水…」
「…アタシのこと?…」
アタシは、
…なに、それ?…
と、思う。
「…濱谷あゆみ…あのオンナの仕掛けた罠にオマエはどんどん引きずり込まれて行くぞ…」
ユウは断言する。
「…引きずり込まれていく? …アタシが?…」
ウーン…ユウの言ってる意味がわからん…
「…アイツは狡猾だ…オレも危うくアイツの毒牙にかかるところだった…」
アタシはユウを見た。
たしかに苦しそうな表情をしている。
「…毒牙って?…」
「色仕掛けで、落とされそうになったってこと…」
「…色仕掛け?…」
アタシは絶句する。
あの濱谷あゆみが色仕掛け…
アタシのようなナイスバディの持ち主ならいざ知らず、あの濱谷あゆみの貧弱なカラダで色仕掛けとは…
アタシはビックリ仰天で、ユウをマジマジと見る。
「…バカ…なに考えてんだ…オマエは…」
と、ユウ。
「…色仕掛け=Hじゃねえよ…濱谷の場合は、あの雰囲気だよ…」
「…エッ? 雰囲気?…」
「…オマエも濱谷同様美人だが、雰囲気がない…せっかくのナイスバディなのに、それを生かせない…だが、濱谷は違う…」
「…なにが違うの?…」
「…自分を何倍にも何十倍にも、魅力的に魅せる独特の雰囲気がある。威厳ってあるだろ…エラそうに見えるひと…」
「…ウン…」
「例えば一流会社の社長でも、威厳があるひとって以外にいないんだ…ところが、平社員でも妙にエラそうに見えるひともいる…それと同じだ…」
「…ウーン…」
アタシは腕組みをして、考え込む。
…威厳か…ユウのヤツ…また、難しい話を持ち出してきたな…
アタシが悩んでいると、
ユウが、
「…つまり、平たく言うと、オマエに誘われた方が、嬉しいか、濱谷に誘われた方が嬉しいかの違いだよ…」
…アタシに誘われた方が嬉しいか、濱谷あゆみに誘われた方が嬉しいか?…
アタシはユウの言ってる意味がよくわからないので、ユウを見た。
「…軽さだよ…」
と、ユウ。
「…軽さ?…」
と、アタシ。
「…オマエは美人でナイスバディだけど、軽いんだ…ところが、濱谷は重みというか…独特の存在感がある…だから、濱谷に誘われた方がオトコは嬉しくなる…」
…コレはアタシにも、なんとなくわかる…
…オトコ連中は最初こそアタシの美しさとボディにクラクラと悩殺されるが、知り合うと、すぐに気安くなる(笑)…
…別にキスをしたわけでも、Hをしたわけでもないのに、すぐに仲間状態(笑)…
…気安く、清水と呼んでくる(笑)…
…その対応に、すでに男女の別さえなくなってる(笑)…
…つまり、重みとはそういうものか…
…コレはまたひとつ勉強になった…
アタシは納得した。
「…そして、オレもまたその誘いに乗ったわけだ…」
と、ユウ。
…エッ? 誘いに乗った?…
…今、ユウはなんて言ったんだ?…
アタシはビックリして、ユウを見る。
「…オマエに最初タクが悪いオンナ、つまり濱谷あゆみに騙されてるって言ったよな…」
「…ウン…」
「…アレは、ウソだ…オレが濱谷に頼まれたからだ…」
…やっぱり、そうだったのか?…
アタシはユウを見る。
「…だが、オレは濱谷に使われてはいない…」
…エッ? 使われてない?…
アタシはユウをマジマジと凝視する。
「…使われてないって、どういうこと?…」
ユウは答えない。
すると、運席席の斉藤が、ミニパトを止め、
「…着いたよ…」
と、一言。
そこは、なんと、父の勤める会社の前だった。