第11話

文字数 1,631文字

腐敗惑星のアリス第11回ポッドで降下した男が白熱した後、腐敗惑星・静かの海に隣接するコンピュータが目覚め。地下羊宮チャクラは、人類の記憶バンク。静かの海で運命の少女トリニティが誕生する。



腐敗惑星のアリス第11回


彼女は、海の中を漂っていた。混沌としている。

彼女の総てが、、まだ未成熟だ。



顔も、記憶も。ただ肉体だけが、浮遊している。

その海は、この星の中核部にあった。巨大な球体が腐肉から海を守っていた。



その中で彼女はまどろんでいる。

体は透明なカプセルに守られている。

何者なのか、ただ一人、この大いなる《静かの海》にたゆとうている。



この前はいつ目覚めたのか。

だれもしりはしない。

年もわからない。

幼児の体型だった。



通常は腐肉の表面までしか降下できないのに、

男の乗ったポッドは腐肉を突き切って来た。



フライトデッキから、ポッドで降下した男は、この球形世界(静かの海)にたどり着いていた。

男はこの海に装置されたコアにはいった。

そこにはモニターが設備されていた。操作卓に前に座る。



「トリニティ、我が子よ、目覚めてくれ、お願いだ」叫んでいた。

男の願いが通じたのか、彼女の意識が開いたようだった。

男はくいいるように覗きこむ。



男のいる操作卓のあるコアと《静かの海》は透明な膜でくぎられている。

まだ、二人は遠く離れているのだ。



男はその少女に精神波を送る。

「君、私がわかるか」



「おじさん、だれなの」

しばらくのち、か弱い彼女の思いが、彼の心に返ってきた。



「私は、君に命を与えるためにここに来た」

彼女にとってみしらぬ男はそう言った。



「どういう意味なの」

そう彼女が聞いた瞬間、操作卓の場所が白熱していた。

男の姿は消えている。



「一体、なによ。あたしを起こしてさ。何用なの。へんなおじさん。いい、も一度眠るもん」



 再び、トリニティと呼ばれた彼女はまどろみに戻った。

そのまどろみに入る前に、完全な彼女の顔ができあがっていた。







 男が白熱した後、このコアの付属設備が急に作動し始める。

《静かの海》に隣接した設備、

そのメインコンピュータが目覚めつつあった。



この《静かの海》に近接するコンピュータ地下羊宮チャクラ。

コンピュータ地下羊宮チャクラは、古代人類の記憶バンク。

 

《静かの海》で一人の運命の少女トリニティが、いままさに誕生しょうしていた。



■『おや、ついに、ついに発生したのね。早くここまでおいでよ。私の親よ、妹よ。早くここまでおいで。私、アリスがきれいに始末してあげる。ああ、楽しみだわ』



 腐敗惑星のどこかで、誰かの意識がそう、語っている。

 彼女はしたなめずりをする。少女トリニティと同じ顔をしていた。



■「どうやら、、、あの子トリニティは目覚めたようよ」



腐敗惑星のアリスは父に言う。



腐敗惑星の表面で唯一ヶ所。

大陸化された陸地。そこが「機械城」だった。



その中に「クリスタル=アリス」はいた。



彼女の精神の中で、何かがコトリと音を立てて動いたのだ。



それは、彼女と同一のモノが動き始めたことを意味した。



同時に、クリスタル=アリスか、あるいは新生少女「トリニティ」かどちらかが相手

によって倒されねばならないことを意味した。



本当は二人同時に存在すべきはない個体だった。



「本当か、アリス。いよいよ時が満ちたのだな」

「そのようよ、パパ」

「お前が「世界子せかいし」となれる日が近いのだな」

「うれしい、パパ。私が「世界子」となり、パパがその世界を統べることができるのよ」



父親はその答えをしばらくためらい、そしてつぶやく

「ああ、そういうことだな」



■「パパ見て、」



「ついに、禁断の果実、黄金のリンゴがなったわ」



目の前に広がる、機械城内部になる最後の楽園、その中央にある木に実がなっていた。





「ふふ、ついに、ついに、時は来たりぬか。我がフクシュウの時は来れり。セキリョウ寂寥王よ、早く出現せよ。我々の手にかかれ、ふふ」



アリスから父親と呼ばれたその男は、自己の気分が高揚して、来るべき時をまっている。



腐敗惑星のアリス(続く)20210911改訂
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み