第13話 ネットに書き始めた動機

文字数 1,134文字

 私が初めてネットに文を書いたのは、ビッグローブの「ウェブリブログ」が最初だった。
「新着記事」を見れば、いっぱい、いろんな人がいろんな発信をしていて、何を読んだらいいのか分からなかった。
 最初の頃は、白状すると、恋を探していたフシもあった。女性のかたの文章を積極的に読んだ。(こんなこと書いてるの、家人に見られたら気まずくなりそうな…?)
「我が家のセックスレス事情」というのが面白く、よく読ませて頂いた。

 だが私がほんとにネットに求めていたのは、ひとつの「社会運動」だった。
 小泉の靖国参拝問題だとか、あのJR宝塚線の事故のこと、子どもが子どもを殺傷する事件、年間の自殺者が交通事故死者より多い現実……。
 おなじ、この「社会」という共通の世界で息をしている人どうしが、「このままでいいのか?」と感じたような対象を、このインターネットを通じてコミュニケイトをとりあい、その対象に対して、変えていけるかもしれない、何かうねりのようなものを起こせたら、と幻想を抱いていたのも事実である。
 だが、結局小泉は小泉であり、宝塚線は運行を再開し、高校生は家族を殺し、べつに、それでどうしたというわけでもない。
 原子力発電所に反対したところで、原子力発電所は運転をやめないのだ。

 原発。原発の話を少し。
 以前、原発の燃料を運ぶトラックを、追走したことがあった。
 そういった情報をゲットする場所にいたせいもあり、「何時何分に高速道路のここを通過する」というのが分かっていた。Sさんと、Sさんのお子さんと、私と私の友人、4人で行った。
 危険物を積んでいる、という表示の、ドクロマークが、小さかった。あれでは、誰も、ヤバイ燃料を積んでいることなんか、気づかない。
 高速のサービスエリアに、そのトラックが止まる。私たちも止まる。放射能漏れを感知するガイガーカウンターは、数値が上がっていた。輸送途中でも、しっかり漏れているのだ。

 私たち4人のほかにも、原発に反対する人たちが、そのサービスエリアに待っていて、「原発反対」の横断幕を掲げていた。
 今も、どこぞの原発で火災とか事故があっても、「放射能漏れの心配はありません」という。
 ほんとうなのだろうか。近くの住民がパニックにならないように、隠しているのではないのか。

 知らないことは、罪だ。だが、知らせないことは、もっと罪だとおもう。
 この国の気質みたいなものを考えると、ヤバイことは隠蔽しようとするだろうし、それについて、ひとのいい民は慣れっこになっているような気がする。
 とにかくこの「社会」に生きている以上、その共有できる問題に対して、何らかの働きかけをしたい…というのが、ネットに対する私のおもいだった。
 もちろん、恋もしたかったが。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み