7.

文字数 1,210文字

「ねえ、何か聞こえない?」

 突然AKIが声を上げた。

「何も聞こえないが……?」
「でも、何か……」
「?」

 俺も気になり始めた。とは言うものの、俺の耳には特別なものは聞こえない。船内のセンサーを見てみようと、パネルを操作した。船内の各部屋の様子と共にセンサーを見ていた。だが、ある部屋の様子を見て気付いた。

「端末の電源を点けっぱなしにしていた!」
「あ、なるほど」

 それは今朝、AKIと対話していた部屋だ。ケージポッドを外したものの、繋がっていた端末の電源を落としていなかったのだ。電源が入りながら操作されない場合、あの端末は警告音が鳴る仕組みになっている。個人で活動することが多いためのちょっとした工夫だ。強制的に電源が落ちるのは俺の性格に合わない。

「よく聞こえたな。だが、助かった。ちょっとあの部屋まで行ってくる」
「ええ」

 俺はAKIを操縦席に残して、その部屋まで向かう。端末の電源を落とし、操縦席まで戻る。それほど時間はかからなかった。だが、操縦席に戻った時、AKIの表情が険しくなっているのに気づいた。

「どうした?」
「何だろう? 何かが……何かが引っかかるような……?」
「ふぅむ……記録を見てみるか?」

 俺は印刷された事故の記録をパラパラとめくって眺めていく。ちょうどこの辺りは、暴走が起こった場所だ。やはり、何かがわかるのだろうか? 俺とは違い、AKIはじっくりと考えているようだ。そのまま沈黙が場を支配した。そして、AKIが呟く。

「ノック、ノック」
「?」
「ノック、ノック、天国の扉を」
「??」
「何だろう? 私、そういう風に聞こえた。何が私に訴えているんだろう? ノック、ノック、ノック、天国の扉」
「???」

 よくわからないが、さっきの警告音を察知できたという事は、AKIはどういうわけか音を捉える機能がとても優れているのだろう。ケージポッドは標準仕様だからそんなことは起こりえないはずだが、今はそれはいい。その機能があるとして、先を考えてみよう。

 AKIの言っていることを考慮すると『AKIにはアラート音が扉をノックする音に聞こえる』ということだろうか? 俺にはとてもそうは聞こえない。しかし、それは……?

「歌か?」
「歌?」
「多分それ、昔の歌だよ。でも、名曲だ。数多くの歌手やバンドがカヴァーしてる。今でも歌い継がれているってことだな」
「へえー」
「何故それが思い浮かぶのか、だな」
「ええ」

 イメージされるのは保安官が疲れ切って地面に倒れているような姿だ。その歌を作った歌手はフォークとロックの狭間に居た人だったと聞いている。その歌を作った際に、どんなことを想っていたんだろう? それを考えてもしょうがないか。しかし、関係性を見出すにはこうすることも必要で……

 うーん……?

 !

 奇跡的に俺の頭にはある答えが閃いた。
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