6.

文字数 1,245文字

 操縦席にある端子にケーブルを接続してケージポッドを再起動。ホログラムが現れる。俺は尋ねる。

「見えるか?」
「お、見えます。これがあなたの船ですか」
「じゃあ、行こうか」
「ワイルドですね」
「……」
「……」
「……それは?」
「……わ、わかりません。おそらく、私の記憶の中の何かかと……」
「とにかく、行こう」
「は、はい」

 俺は船を発進させた。とりあえずは、例の船の軌跡をたどるとしよう。地球から宇宙へ向かうのではなく、宇宙ステーション間を行き来していたようだ。宇宙時代の運送業者だな。

「残っている記録を見ると、そのクルーはこの仕事を長く続けていたようだな。俺は時々地上に降りないと仕事を続けられないんだよな。よくこんなに宇宙に居られるもんだ」
「わかるー」
「……」
「……」
「……わかってもらえたなら、嬉しい」
「は、はい。ありがとうございます」

 俺の船はある地点で動きを止めた。この辺りから記録と共に景色を見ながら辿ってみようと思ったのだ。どうせ一回でわかるはずもない。最初はぼんやりとやってもいいだろう。

「うけるー」
「……」
「……」

 何か口に出てしまっていたのか。

「うける、とはどういう意味なんだ? 俺の言葉を受け取った、という意味か?」
「えーと……多分そういう感じだと思うんですけど、ちょっと違う気もします」
「じゃあ、どんな感じなんだ?」
「えーと、恐らくは『面白い』という意味だと思います。何でこんな言葉が出てくるのかよくわからないんですけど」
「そうだな。考えてみれば、俺は今日ずっと日本語だ。あまりにもスムーズに移行していたから気付かなかったよ」
「ええ、私も……」
「先へ進もう」
「はい」

 進路を辿り、状況をAKIと共に確認。思い当たることは無い。あるような気がする。そんなやり取りを挟みながら宇宙を進む。そんな中、俺は何かがわかった気がした。

「多分こういうことじゃないか?」と言い、俺は考えを述べる。それは大体こんなものだ。

 この時代のシステムに対応させるために、前世代のAIにはひな型を用意する必要がある。それでも完全に再現できるわけではない。俺がAKIという名前を付けることもその一つであるが。その際に、AIに施された改造が妙な作用として働いてしまった。確かに、その記憶領域には娯楽作品のデータや謎の知識がひしめいているだけなのだろう。もしかしたら奥深くに何らかの記憶があるかもしれない。

 その記憶領域がAKIとして再現された際にシステムのキャッシュの一部に常に上書きされる仕様となってしまった。かつては収集したものを保管しておくだけだったのだが、現在は習慣や口癖のようなものとなってしまっている。AKI本人にはそれを習慣化した覚えはない。そのため、ちぐはぐな反応が生まれるのではないか。

「ぬおおー!」
「感心してくれたなら嬉しいが、今日はこのまま進むぞ」
「了解です!」

 俺達は更に先へと進む。
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