第8話 最後の戦い(自由)
文字数 1,578文字
「ここは?」
五人は、何も無い空間にいた。周囲には、色々な時代の映像が映っている。
実名報道される被害者。プライベートをフォーカスされる芸能人。面白おかしく誇張される報道。忖度される内容。政権賛美と失態内容の封鎖。都合のいい数字とバラエティという嘘。
「どこに真実があるのかね。多くの先進国が一党独裁、長期政権に走り、メディアコントロールによる国民洗脳に血眼になっている。金と数こそが、すべてで心情というものは省みられない。こんな価値観でいいのかね。われに従えば、悩むこともない。唯一絶対の価値が手に入るのだ。」
もっともなことだった。五人はしばし反論できなかった。
謙虚、知力、共存、互助といったかつての美徳は失われ、利己、財力、寄生、権利といった自己中心的な思想が尊重される社会。これが自由の代償ならば、あまりにも大きな損失だ。
「まどわされるな。与えられる幸せと、掴み取る幸せ。どちらを求めようというのか。」
仙人の声が五人の心に流れ込んできた。
「失敗しても挑戦し続けられる社会。これこそが人類の進歩をもたらしてきた。われわれは鎖国の江戸時代より、開国した明治を生きる。」
五人の心は決まった。それとともに、彼等の意識はもどった。
「われわれには、価値観を押し付ける神はいらない。古来より、自然を敬い、恐れながらも共存してきた祖先の英知を守りながらも、互いの力を信じ、道を切り開いていく。」
オウリンの気捲によって造られた閉鎖時空がミドリンの包影圏で満たされた。シェン○ンを鎧のように覆っていた空間がニチリンの猪炸拳によってこじ開けられ、セイリンの乳嬢妍が流れ込む。それは、極上の歌の調べのように母の愛で獣をやさしく穏やかに包み込んだ。
「五倫書、奥義!真理は己の心の奥底にある。」
コクリンの開剣がむき出しとなった獣の心を切り開いた。
シェン○ンは深い水の底にいた。そこには彼を包む巨大な母龍の姿があった。
「ママ。みんなが僕のことを避けるんだ。それっ僕たちが怖いからかな。」
子供の彼が母に問いかけた。
「力があることは悪いことではないわ。でもそれは与えられたもの。正しく使わなければいけないの。よく相手を見て、自分に何ができるか考える。そうすれば何をすべきかわかる。」
そういって、母龍は消えた。シェン○ンは遠くの空間を眺めていた。小さな光があった。やがてそれは五色に分かれ、彼を包んだ。
「偉大なる王よ。我等が母星、慈守稀星は行き過ぎた価値観の多様化ですっかり自己中心的になってしまいました。自分だけでなく、相手にまで自制を求める余り、誰もが何も表現できなくなってしまった。どうか正しき道をお示しください。」
それは、五倫獣の心の叫びだった。
「自制を廃止するため、規制を選んだ。しかし、押し付けられた規制ではなく、思いやりの中から生まれる真の自制でなければ、息苦しいだけになってしまうというわけだ。」
悟りを開いたシェン○ンは目覚めた。そこには開放されたゲンブ、ビャッコ、セイリュウ、スザク、キリンの姿もあった。
「帰ろう。我等の星の未来のために。しかし、われわれだけでは心もとない。どなたか、一緒に来てはくれまいか。」
「わしが行こう。」
すかさず仙人が申し出た。
「この星には、もうワシの居場所はない。弟子たちも立派になった。」
獣たちは、キリンの能力で自分たちの星へともどって行った。
いつしか映像から規制は消えていた。そして観客たちは涙した。
「すばらしい閉会式でした。親が子供に託す、未来へのメッセージ。子供たちの胸にもしっかりと刻み込まれたことでしょう。」
五倫獣もゴリン者も、もういない。しかし、かれらは人々の心の中で行き続けていくことだろう。
五人は、何も無い空間にいた。周囲には、色々な時代の映像が映っている。
実名報道される被害者。プライベートをフォーカスされる芸能人。面白おかしく誇張される報道。忖度される内容。政権賛美と失態内容の封鎖。都合のいい数字とバラエティという嘘。
「どこに真実があるのかね。多くの先進国が一党独裁、長期政権に走り、メディアコントロールによる国民洗脳に血眼になっている。金と数こそが、すべてで心情というものは省みられない。こんな価値観でいいのかね。われに従えば、悩むこともない。唯一絶対の価値が手に入るのだ。」
もっともなことだった。五人はしばし反論できなかった。
謙虚、知力、共存、互助といったかつての美徳は失われ、利己、財力、寄生、権利といった自己中心的な思想が尊重される社会。これが自由の代償ならば、あまりにも大きな損失だ。
「まどわされるな。与えられる幸せと、掴み取る幸せ。どちらを求めようというのか。」
仙人の声が五人の心に流れ込んできた。
「失敗しても挑戦し続けられる社会。これこそが人類の進歩をもたらしてきた。われわれは鎖国の江戸時代より、開国した明治を生きる。」
五人の心は決まった。それとともに、彼等の意識はもどった。
「われわれには、価値観を押し付ける神はいらない。古来より、自然を敬い、恐れながらも共存してきた祖先の英知を守りながらも、互いの力を信じ、道を切り開いていく。」
オウリンの気捲によって造られた閉鎖時空がミドリンの包影圏で満たされた。シェン○ンを鎧のように覆っていた空間がニチリンの猪炸拳によってこじ開けられ、セイリンの乳嬢妍が流れ込む。それは、極上の歌の調べのように母の愛で獣をやさしく穏やかに包み込んだ。
「五倫書、奥義!真理は己の心の奥底にある。」
コクリンの開剣がむき出しとなった獣の心を切り開いた。
シェン○ンは深い水の底にいた。そこには彼を包む巨大な母龍の姿があった。
「ママ。みんなが僕のことを避けるんだ。それっ僕たちが怖いからかな。」
子供の彼が母に問いかけた。
「力があることは悪いことではないわ。でもそれは与えられたもの。正しく使わなければいけないの。よく相手を見て、自分に何ができるか考える。そうすれば何をすべきかわかる。」
そういって、母龍は消えた。シェン○ンは遠くの空間を眺めていた。小さな光があった。やがてそれは五色に分かれ、彼を包んだ。
「偉大なる王よ。我等が母星、慈守稀星は行き過ぎた価値観の多様化ですっかり自己中心的になってしまいました。自分だけでなく、相手にまで自制を求める余り、誰もが何も表現できなくなってしまった。どうか正しき道をお示しください。」
それは、五倫獣の心の叫びだった。
「自制を廃止するため、規制を選んだ。しかし、押し付けられた規制ではなく、思いやりの中から生まれる真の自制でなければ、息苦しいだけになってしまうというわけだ。」
悟りを開いたシェン○ンは目覚めた。そこには開放されたゲンブ、ビャッコ、セイリュウ、スザク、キリンの姿もあった。
「帰ろう。我等の星の未来のために。しかし、われわれだけでは心もとない。どなたか、一緒に来てはくれまいか。」
「わしが行こう。」
すかさず仙人が申し出た。
「この星には、もうワシの居場所はない。弟子たちも立派になった。」
獣たちは、キリンの能力で自分たちの星へともどって行った。
いつしか映像から規制は消えていた。そして観客たちは涙した。
「すばらしい閉会式でした。親が子供に託す、未来へのメッセージ。子供たちの胸にもしっかりと刻み込まれたことでしょう。」
五倫獣もゴリン者も、もういない。しかし、かれらは人々の心の中で行き続けていくことだろう。