第2話

文字数 1,046文字

「これがブランチ」
圭介はちょっとドキドキしながら
削って整えた木の枝を見せました。
『コノカ』と名乗った
その子は自分の腕の長さ程もある枝を
珍しそうに持って眺めています。

この街に越してきたばかりで
『ブランチ・ブランチ』の事を
知らないというこの子に教えるのは
なんだか自分が偉くなったような
強くなったような変な気分です。

「朝ごはんと昼ごはんの間くらいに
食べるご飯をさ、ブランチって
言うんだって」と圭介。
「知ってる!
ブレックファーストとランチの間だから
ブランチ。ダジャレだよね」とコノカ。

うわ!あったまいい!
圭介は怯んだのを悟られないように
もうちょっと声を張って

「で、木の枝の事も発音は違うけど
『ブランチ』って言うんだって」
「すごーい!そうなんだ!」

今度はやった!
圭介は跳び上がるほど嬉しいのを
押し隠して、広場を指さしながら

「それで、この木の枝に皆んなが売ってる
パンとかソーセージとかチーズとか
色んな好きな物をさして
キャンプファイヤーで焼いて食べるんだ。
ブランチに刺して食べるブランチだから
『ブランチ・ブランチ』」

コノカは目をまん丸にして
「すっごくおいしそう!」
目はリヤカー屋台に釘付けです。


その時
ポン!ポン!と花火が上がって
キャンプファイヤーに火が入りました。

『ブランチ・ブランチ』の始まりです。


「あ、始まった!急がなきゃ!こっち!」
圭介は思わずコノカの手を取って
走り出しました。

うわぁ!どうしよう!手つないじゃった!
真っ赤になった顔を見られないように
チラッとだけ振り返ると
コノカは目をキラキラさせて周りを
見ながら走っています。

ようやく
空いている『ブランチ売ってます』の
テーブルを見つけて自分の削った枝を
広げると、早速お客さんが並びます。

「圭介君待ってたわよ。
やっぱり圭介君の枝が
1番刺しやすくて折れなくていいわー」
みんな口々にそう言って次々枝が
売れていきました。

「枝を売っていいのは子供達だけなんだ」
あっという間に枝を売り切って
圭介はお金を数えながら言います。

「そしてね、そのお金でブランチに刺す
食べ物を買うんだ」
「じゃあ、たくさん枝を売った人が
たくさん食べ物を刺してるの?」
「みんながそうじゃないけど、
僕ら男子はそれで競争してる…」

アイツには去年2個差で負けた。
それが本当に悔しくって
今年はすごく頑張ったけど…。

なんだか口に出して言うと
ひどく子供じみている気がして
圭介は恥ずかしくなってきました。

それに今年は…

「あのさ、よかったら…」
圭介が振り返った時、コノカは1人
林の中へ駆けていくところでした。
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