第13話

文字数 474文字

 店の主人は、絵を描くならレイクムーン周辺が神秘的だと教えてくれた。
 そう、聞いてもいないのにーー。

 早速、教えられたまま、店のすぐ前にあったバス停からバスに乗り、レイクムーンへ行ってみた。

 そこは一日中涼しく、人々が住み始めてから人工的に作った湖だった。かつては、水を作る為の研究が行われていた場所だという。月でも水が作れる技術が確立した今、湖は人々の憩いの場所となったようだ。
 青い空とグリーンの水と低い木々とーー鳥や花さえも普通に存在していた。
 しばらくは景色に見惚れていたが、暗くなる前にバスの最終時間までに描かなければーーと夢中でデッサンしていた。
 突然、スーッと、どこからか冷たい風が吹いてきた。
(そろそろ帰り支度をしなくちゃ)
 気がつくと鳥の声もどこかへ消え、淡いグリーンにキラキラしていた水面も深いグリーンへ変化していた。
 自然の大きさと人間の小ささを体感しながら、父さんの家へ急いだ。
 もう角を曲がると父さんの家だ。隣の家の窓から明かりが漏れ、女性の笑い声が聞こえてきた。
(楽しそうだな……)
 ルイの足取りは自然と速くなっていた。
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