第3話 時ラーメン

文字数 1,206文字

テケテンテン♫

テケテケテンテン♫

毎度、馬鹿馬鹿しいお笑いを一席。
真打の古今亭江戸前が登場。
夏が終わり秋風が吹くようになりますと、朝晩がめっきり冷え込むようになります。
そうするってえと恋しくなるのが、関西だったらうどん、関東だったら蕎麦だ。この熱々の出来立てをはふっーはふっってかきこむのが日本人には堪らない。
でも世の中は、コロナ禍だ。

時短、時短で世の中は厳しい。

庶民の懐にも秋風が吹きやがる。

...さて、

太郎と次郎の兄弟が、池袋に1日限りのスポット派遣に来ました。

一日中働きづめで、夕方にはもうハラがペコペコだ。

(次郎)兄さん、この辺は有名なラーメン激戦区、いい匂いがするなあ。

おっ、あそこにチャーシュー麺で有名な大便軒があるじゃないか、食いてえなあ。

(太郎)おいっ、次郎。おめえさん、今いくら持ってる?だしてみな。
(次郎)ひい、ふう、みい、よう、いつ...500円だ。

(太郎)ちっ、三十路の男がしけていやがる。

(次郎)じゃあ。兄さんは?

(太郎)ひい、ふう、みい...と、300円だ。

(次郎)あきれたな。兄弟合わせて800円とは、これじゃ、コンビニのおにぎりとお茶で今日はおしまい。

(太郎)待て待て早まるな。800円あれば、チャーシュー麺が食える。大盛りを頼んで、兄弟で半分子にすればいい。
(次郎)でもね兄さん、大盛りにすると100円増になっちゃうよ。足りないじゃないか。
(太郎)だからな、こういう時のためにだ。江戸の古人が時蕎麦っていう知恵を残してくれてるんじゃないか。
(次郎)えーっ、兄さん漫才しか観ないのに時蕎麦なんて知ってるの?それに蕎麦とラーメンは違うし。
(太郎)馬鹿言ってるんじゃないよ。俺は、中学しか出ていねえがジアタマはいい方なんだ。一を聴いて十を知るタイプよ。それに応用が効くしな、見てやがれ。
ガラガラっ!(トビラを開ける音)

(太郎)オヤジっ、すまねえがチャーシュー麺大盛りで頼む。あっ。それとトリバチもな。

..それから暫く..

(オヤジ)へいっ、当店自慢のチャーシュー麺です。熱々ですから、気をつけて召し上がってください。
(太郎)すまねえがな、勘定を先にしてもらえるか。台本を忘れちゃうんでな。
(オヤジ)えっ?まあ、勘定は食べた後でもいいんですけど、前がいいっていうならいただいときましょう。
(次郎)なんか、不安だなぁ。
(太郎)ひい、ふう、みい、よう...オヤジ、今何時だい?
(オヤジ)へいっ、ちょうど17:00でやす。
(太郎)デジタルの方じゃなくて、アナログの方だっ!アナログにしてくれなきゃ困るよ。
(オヤジ)変わったお客さんだなぁ、午後5時ですよ。
(太郎)だろうっ、5時だよな...むう、なな、やあ、ここのつ...と。
(オヤジ)お客さん。

(太郎)んっ?何だ。

(オヤジ)さっきから、頭の上にしきりにチャーシューを置いて何やってるんですか?

アッハハハヒ
テケテケテンテン♫
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