第8話 四女の名前

文字数 1,153文字

テ、テンテンテン〜♫

テンテンテンテン〜♫

え〜、毎度馬鹿馬鹿しいお話を一席〜
え〜、令和の日本は少子化時代と言われまして、赤ん坊が生まれない。やっと、男女が一緒になっても経済的な理由やら何やらで、一家庭平均で1.4人とまるで低調だ。
しかし、そんな令和の日本にあっても、まれに子沢山の家庭がある。

東京は下町の大工、留吉の家もその一つだ。

(親方)おーい、留吉。

この御時世で、おまえんとこえらい子沢山だそうじゃないか。

(留吉)へいっ、かかあのやつ、頑張ってえらい産んでくれたんで。俺自身、貧乏だから娯楽っちゅうもんがないし、趣味もないんで、夜女房の顔を見ると励みたくなるんで、子供だけはいっぱいできました。
うおっほん(咳払い)

そ、それで子供は何人?

子供は、子宝っていうからなあ。

それがオンナばかり四人なんで。
ほうっー、女の子ばっかり四人かい。よかったら名前だけでも聴かせてもらえないかな。
長女が産まれた時は、赤貧洗うが如しで、隅田川の土手で春の七草を摘んで、七草粥を啜っている時に産まれたんで、春菜です。
ひゃー、おまえにしちゃ風流な名前をつけたじゃないか。

きっと将来は、周囲に希望を与える様なポカポカとした春の陽みたいな娘さんになるんだろうね。

で、次女は?

次女が産まれた時も金がなくて。キャベツの千切りを山盛りにして、それにトマトと胡瓜をのせて、マヨネーズをいやっというほどかけて、これをオカズに飯を食っている時に産まれたから夏菜です。
夏場の暑い時のサラダはヒヤッとして美味いもんな。

それにしても肉がでてこないね、ベジタリアンだね、おまえさんは。

きっと将来、周囲に活気を与える様なパリっとした元気な娘さんになるんだろうね。

それで、三女は?

少々、金が入りましてね。

春菊を天ぷらで揚げまして、これを蕎麦に載っけて天麩羅蕎麦にして食っている時に産まれましたんで、秋菜です。


おまえのことだ。芋か栗、芋菜か栗菜かと思ったけど、やはり

秋菜かい。あいもかわらず、肉がでてこないね。

落ち込んだ周囲をもちあげる明るいムードメーカーになりそうな娘さんだ。

もう、ここまでくれば四女の名前は分かったよ。

分かりますかい?
ああーあ分かる。

お前さんのことだ。じゃがいもや人参、たまねぎなんぞの冬野菜を煮込んだカレーやシチューを食ってる時に産まれたから、

冬菜だろ。(相変わらず、肉は入ってねえんだろうな)

それが違うんで。

あっしが悪疫に罹りまして、病気でPCR 検査を受けたら陽性と判断されました。

それで、コロナ…

ほーうっ、コロナ?

将来、周囲をころっとやっつけるオンナヤンキーの頭目になりそうだね、それで仲間をどんどん増やしてオンナ紅蓮隊を結成してって、憎たらしいオンナになりそうだね。

馬鹿野郎っ!

アッハハ〜
テンテンテンテン〜♫


お後がよろしいようで。
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