(9)

文字数 1,193文字

「な……何だ……ありゃ?」
 凍り付いた筑後川の上を走って来るモノが有った。
 4輪バギーが2台。
「いてっ?」
「ん? 何だ?」
 その時、何故か社長と師匠が声をあげ……。
「あれ?」
 続いて、(りん)ちゃんが明後日の方向を見る。
 そこには……ネズミよりは大きいけど、猫よりは小さい動物が走り去っていくのが見えた。
「どうしたの?」
「さっきのあれ……多分だけど……誰かの『使い魔』」
「えっ?」
「フェレットみたいな動物に……『使い魔』を憑依させてるみたい」
「な……何?」
「どう言う事だ?」
 それを聞いた社長と師匠が、(りん)ちゃんを問い詰めようとした時……。
 凍り付いた筑後川の上を走っていた4輪バギーが……1台は停止、もう1台は……こっちに向かって来る。
「撃てッ‼」
「撃てッ‼」
 温厚そうな外見なのに声だけはドスが聞いてるお爺さんと、四十代ぐらいの一見サラリーマン風の男の人が怒鳴り……。
 ヤクザさん達が次々と、こっちに近づいて来る4輪バギーに拳銃を向け……。
 轟音。
 轟音。
 轟音。
 次々と轟音。
 でも、効いてない。
 止まる様子さえ無い。
 良く見ると……こっちに近付いて来る4輪バギーの運転手は……。
「ぱ……強化装甲服(パワードスーツ)?」
 あ……っ、あの時の……魔法使いの女の子だ。
 あの山奥の「麻薬農場」で出会った……強化装甲服(パワードスーツ)を着けた「魔法使い」。
「ぐえっ⁉」
「うげっ?」
 その時、次々とヤクザさん達が倒れる。
「ゆ……弓矢?」
 倒れたヤクザさん達には……先端に注射器のようなモノが付いた矢が刺さっていた。
 その矢を射てるのは……途中で停車した4輪バギーの運転手。
 しかも……麻酔薬(多分)付きの弓矢で狙われてるのは……ヤクザさん達全員じゃなかった。
「おい……誰か……俺の……」
 温厚そうな顔の小柄な……でも声だけは恐いお爺さんの前に居たヤクザさん達は……全員倒れていた。
 そして……。
「ぐえっ?」
 今度は……お爺さんの体に……注射器みたいなモノが()()()()()矢が何本も突き刺さり……。
「うげええ……」
「オヤジ、下手に抜いちゃダメっす。その矢、無理矢理抜くと傷口が広がり……」
「阿呆……なら……どうしろって……あっ?」
 そして……更なる矢が、お爺さんの……喉元に1本……心臓の辺りに1本。
 ゆっくりと……電池が切れたロボットみたいに(そんな光景、見た事ないけど)お爺さんが崩れ落ち……。
「おい……何で……こいつが居る?」
 河原に上って来た強化装甲服(パワードスーツ)は……微かな震え声でそう言った。
 その視線の先には……。
「こっちが訊きたい」
 もう1つの4輪バギーの運転手も河原に上がって来た。
 身長一五〇㎝台前半。
 青メインの迷彩模様のズボンとボディアーマー。
 2つの「鬼の角」を思わせる飾りが有る青いヘルメット。
 黒いコート。
 声だけは……異様に冷静。
「どうしたの? ()()()()()()()、御自慢の『鎧』は?」
「あんたのせいで修理中だ、佐伯漣」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み