第2話

文字数 14,968文字

 底抜けに晴れた土曜日。こんな爽やかに晴れた日なのに、河原で私はとんちき三人組とカレー作り、ってこれなんの拷問?
河原の芝生の上に広がるのはアウトドアテーブルにイス、パラソル、そして昨日教室で見た鍋はじめカレー作りセットの一式だった。
バーベキューをやっている人はいても、キャンプじゃあるまいしカレーを作る人なんていないだろう。
なんだか恥ずかしいし、現にまわりの人たちがちらちらとこっちをうかがっているのが分かる。
「いいか、我々はただ何を作るのか迷った末にカレーを夕食に作るような主婦と違い、最初からカレーを作るつもりで作るのだ!いいな⁉」
 裾を何回か折ったジーンズに緑チェックのワイシャツの彼井さんは、腰に手をあてて偉ぶりながら私たちに指示した。
お世辞にもおしゃれとは言えないファッションだが、素材がいいので不思議と「シンプルで洗練されているなあ」と思ってしまう。
「おう、今日は最高のカレーを作れるように研究するぞ!」
元気に声をあげた林先輩はサングラスとヘッドフォンはそのままに、スポーツロゴのTシャツとスッキリしたシルエットのデニム。彼井さんよりはましな気がする。
私の右隣にぼうっと突っ立っていた飯田先輩は、袖の余った黒パーカーにベージュの短パンというスタイル。
「じゃあさっそくとりかかるぞ、林に飯田。あと新入部員のレイカ!手を抜くのは厳禁だからな。カレーの神様が罰を与えてくる」
 カレーの神様ってなに?
そう思った矢先にずっとだんまりをきめこんでいた飯田先輩が口を開いた。
「彼井……でも材料が、ない」
 材料がなくってどうやってカレーを作る気だったのよ。
「あ、昨日のカレー作りで全部ルウも野菜も使ってしまったんだった。よし、商店街のスーパーと八百屋で買ってこよう。全員で行くと面倒だから二人ずつそれぞれ担当を決めるか。はい、くじ引き」
 用意していた割り箸をバキッと折って、長いものと短いものに分けて彼井さんが握る。長い方がスーパーでルウ、短い方が八百屋で野菜。
一人ひとり選んで一斉に彼井さんの手から引き抜くと、私のは長かった。ばちっと彼井さんと目が合う。
「お、引いたな。林と飯田が短い……。私とレイカは長いからスーパーだな!この私と一緒なんてツイているな」
 憑いているな、の間違いじゃないんですか?


 「レイカ、ルウとはなんだかわかるか?」
  肩を並べてせかせかとスーパーマーケットへの道を歩いていると、彼井さんが口を挟んできた。私は今まで男子と二人で歩く時の会話はもっとドキドキ甘酸っぱいものをイメージしていたが、どうやら違うらしい。
「カレーやシチューに入れるあれじゃないんですか」
「ちっがう!ルウというのは小麦粉をバターと一緒に炒めたものだ。種類もいろいろとあって、ルウ・ブラン、ルウ・ブロン、ルウ・ブルンの三種類に分けられる。これらは色が全て異なり──」
 彼井さんの話を適当に聞き流しながら歩くこと数十分。
ちょうど昼時と言う事もあって、スーパーは主婦やら暇な学生やらでごった返していた。帰りたい。
野菜売り場や魚売り場を素通りして、陳列棚が並ぶ調味料売り場に到着。
「彼井さん、種類がたくさんありますけれどどれにするんです?」
 やたらと種類が多いルウを一つ一つ手に取って吟味していく。気づくと彼井さんは隣のお菓子売り場に移動していた。
「ちょっと! ルウを選ぶんじゃなかったんですか⁉ 彼井さんが選んでくれないと買えません」
 小さな子供たちがうろちょろしているお菓子売り場に高校三年生の男子──しかも長身──がいるのは異様に見えた。当の本人は、その子供よろしくチョコレートを前にして目を輝かせている。
「せっかくだし隠し味にチョコレートを入れてみようと思ってな。レイカはどれがいいと思うか?」
 私に聞かれても困る。と言うか、彼井さんが持っているのはチョコはチョコでも抹茶チョコレートだ。これをカレーに入れておいしくなるはずがない。
「入れるならこっちのチョコレートにしてくださいよ。抹茶なんて危険です」
 一つ上の段にあったビターチョコレートを引っ張り出してかごに入れる。
彼井さんが「そうか」と納得して一安心したのもつかの間、いきなり腕を引っ張られた。
そのまま引きずられて中央の通路に出る。
顔を見ると、チョコレートを選んでいた時と裏腹に彼井さんは真剣な顔でくちびるに人差し指を当てていた。
「今日の練習マジ疲れたな~! 足がもう痛いよ」
「それな、早く帰ろう」
お菓子売り場の方からけだるげな声が聞こえてくる。彼井さんの後ろからそっと覗いてみると、どうやら運動部の生徒たちのようだ。
腰に巻いたウインドブレーカーに我が高校の校章が入っているから、同じ学校の生徒だろう。
「……あの人たちが怖いんですか?」
 彼井さんは私の腕をつかんだまま眉間にしわを寄せて、深刻そうな顔をした。
「ばれてはいけないんだ、私がここにいると言う事は」
 ──一体あの人たちに何をしでかしたのかしら。どうせつまらないことだろうけど。
運動部集団の中で一番大きなスポーツバッグを持っていた男子生徒は、セール中だったジュースを一つ手に取ってレジに向かって行った。他の生徒たちもぞろぞろと彼に従っていく。
私はそれを確認してから、彼井さんの背中をつついた。もう行ったわよ。


 大きな鍋の中でカレーがぐつぐつと煮え立っている。今回は真っ黒ではなくきれいな茶色だ。
お菓子売り場でのくだりからしなびた青菜のようだった彼井さんは、河原についたとたんにシャキッという擬音が付きそうなぐらい元気になり、私たちにカレー作りの手順を説明しだした。
「切った具材は全て入れたし、後は煮込むだけだ! あくが出ていないかちゃんと確認するんだぞ」
「カレーの作り方ぐらい知っているんですけど」
 炊飯ジャーからご飯をよそって盛り付けていると、本音が漏れた。
「レイカ!そんなにカレーを作る事を甘く見てはいけないぞ!私が昨日のようなハーブやスパイスの組み合わせを発明するのに、何年かかったと思っているんだ⁉ 二年と半年だぞ⁉」
 彼井さんは聞いてもいないことをぺらくちゃとしゃべり、その勢いのまま隠し味にと買ってきたビターチョコレートをぶっこんだ。そういうのって、割ってから入れるんじゃないの。
「問題ない、すぐとけるさ」
 もくもくとスプーンやフォークを並べる林先輩と飯田先輩の横で、きりっと顔をきめる彼井さん。アウトドア雑誌の表紙にでもなりそうな顔だ。
ありがたいことにチョコレートは一つ残らず解け、かくして私がカレー部に入部して初めてのカレーが完成した。テーブルの上にカレーを並べていざ実食。
「どうだ林、隠し味にチョコレートを入れてみたのだが、おいしいか? 副部長として意見を聞かせてくれ」
 チョコレート、と聞いた林先輩は一瞬嫌な顔をしたものの、彼井さんの手前断るわけにもいかず少しすくって口に押し込んだ。林先輩の目が──サングラスの奥で──見開かれた気がした。
「フッ、割と……食える!」
「それならいいんだ。やっぱり抹茶味の方がよかったかもしれないと思っていたから心配だったんだ。さあみんなどんどん食べてくれ、おかわりはたくさんあるからな!」
 誰がどう考えてもカレーに抹茶チョコレートはない。
私の隣に座った彼井さんはどんどん食べてくれ、と自分で言った割には二杯しか食べず、林先輩に至ってはおかわりしなかった。
その代わりに飯田先輩が余った大量のカレーを一人で全部食べてくれたので、おかげさまでタッパーに小分けにしたカレーを持ち帰る必要はなくなった。かく言う私も一杯しか食べていないんだけど。


「あー食べた食べた! 私は昼寝する」
 そう言って芝生の上に寝転んだきり彼井さんは起き上がらなくなったので、もれなく私が食器を洗うことになってしまった。
近くの水道に鍋やら食器やらを運んで、スポンジの泡をたてる。
乾いたカレーのルウが鍋の側面にこびりついてなかなか落ちない。鍋相手に五分ほど苦戦していると、林先輩と飯田先輩が顔を出した。
「すぐに水につけられなかったからな、汚れが落ちにくいのも無理はない。手伝うぜ」
「……僕も」
「ありがとうございます、彼井さんってば突然寝ちゃって起きないのでどうしようと思って……」
「いいんだよ。こんな皿洗い、先輩がやらなくてどうするんだ」
 どこかの彼井さんとは大違いね。見た目こそとっつきにくい二人だけど、中身はきっとお人よしなんだろう。
てきぱきと皿を洗ってはタオルで拭いて持ってきていた袋の中に戻しながら、ふとスーパーでのことを思い出した。
「……あの、彼井さんって誰かに追われているんですか?」
 何の気なしに聞いてみるとぴたりと先輩二人は硬化して、またすぐに皿洗いに戻った。林先輩が洗剤をスポンジに出しながら、口を開く。
「ああ、バレー部のやつらの事か」
 驚いた。
あんな世間の一般常識が通じなさそうな部の部長と、ちゃんとした体育会系部活が関わりを持っているだなんて。
「関わり、ってもんじゃないぞ。ああ見えて彼井はバレー部の部長だからな」
「え?」
 洗いたての皿を地面に落とすかと思った。彼井さんがバレー部の部長だって?とてもそうには見えない。
「──知りませんでした」
「まあ、知らないのもしょうがないな。彼井は部長である事を周りに知られたくないみたいだし。少し長い話になるが、それでも聞くか?」
 私が首を縦に振ると、林先輩は語りだした。
「そうだな……彼井はバレーがうまかった。いや、あまりにもバレーがうますぎた、ただそれだけのことなんだがな。だいぶ前に体育の授業で同じになった時にバレーをやっているのを見たが、素人目に見てもそうとううまかったぞ。ありゃプロの世界にも通じるレベルだな。でもそれが元で彼井は居場所を失っていった」
 そんなに……? それと「居場所」と言う言葉に、何の繋がりがあるんだろう。
「本当に彼井さんって、林先輩がそう絶賛するほどバレーができるんですか?私、彼井さんが運動している様子を見たことが無いのでよくわからないです」
 水道の少し遠くから見える昼寝中の彼井さんを横目に肩をすくめると、林先輩は軽く苦笑いした。
「信じられないかもしれないが、そうなんだよ。彼井はもともとスポーツ推薦でこの学校に入ったからな。でもそれから彼井のバレーを特集したくてローカルテレビが取材しにきたり、休日の部活中にどっかの大学のバレークラブから勧誘がくるようになってな……。そうなりゃもう部活どころじゃない、大変だった。それで彼井はクラスの中、いや学校のなかで孤立していったんだ」
 変な話だ。
テレビ局が来ちゃうほどバレーができるなら、人気者同然でしょ。なのにどんどん一人ぼっちになっていくなんて。それに、こうしてカレー部と言う意味不明でとんちんかんな部を作っているのもだいぶおかしい。
「よく考えてみろ、その頭で。カレー部は……言うまでもないが同好会にも満たない生徒会も学校も未承認の部活だ。それも活動内容が「おいしいカレーを作って食べるだけ」なんだからな」
 林先輩はぽんぽん、とんがったスポーツ刈りの頭を人差し指で叩いた。ごもっとも。
「カレー部」なんて部、転校してきた時に先生から一言も聞いていなかったし誰も話していなかった。
「でも、カレー部って活動内容がどうであれ『カレーのスパイスについて調べる』とか『インドカレーの歴史について研究する』とかいくらでも言い訳は利きますよね。私が入って規定人数は満たしているんですから、同好会にはできるはずです。あ……もしかして、この学校は兼部ってダメでした?」
 最後の一枚の皿を拭きながら先輩たちにたずねると、二人とも少し困ったような表情を浮かべた。飯田先輩がおもむろに口を開き、「そう言う事じゃ、ない」とつぶやいた。
「居場所が、なかった」
 ここにきてこのワードか。
「飯田の言う通り。彼井の頭を覗いたわけじゃねえから詳しくはわからないが、きっと自分だけの居場所が欲しかったんじゃねえかなあ」
 彼井さんにとっての居場所は学校でも教室でもバレー部でもなくって、カレー部。自分を普通に扱ってくれて自分の好きなことができるクラブ。
「孤立……か」
 彼井さんは私を困らせようとしてカレー部に入部させたわけではないんだろう。
それだけは確かなことだと判明したので、少しはこの部に貢献してやってもいいのかもしれない。


 クラスメイトのお腹の声が教室に響く四時間目。
黒板には見ているだけで頭痛がしそうな数式が長々と白い文字で書いてある。加えて眠気が私のまぶたを下ろしにかかってきていたので、何とか耐えようとシャーペンで手の甲をチクチク刺していた。
「じゃ、問題集の八ページを開いて。問の三番まで解けよ、時間を多少とるが指名するからな」
 おなかの出た担任が問題集のページをペラペラとめくりながらこちらに見せてくる。
さっそく解こうと問題集を出しに机の中を手探ったが、見当たらない。しまった、問題集を家に忘れた。
「宮川、三番を答えてみろ」
 前の学校の制服を着たままで目立っていたからだろう、担任はよりにもよって私を指名した。
さて困った……与式のわからない問題を解け、と言われても答えられないもんね。隣の人の問題集でも覗けばよかった。
「ああ、前の学校と使っている問題集が違うのか……、じゃあいい。隣の人に見せてもらいなさい」
 勝手に担任がそう勘違いしてくれたので忘れ物でとがめられることはなかったが、あまり隣の人に頼りたくない。
特に明確な理由があるわけじゃないけれど、なんとなく他人に貸しを作るのが嫌なだけだ。
そんなことを思っていても忘れた教科書が宅急便で届くわけではないので、しぶしぶ机を隣の人に近づける。
隣の席の主である男子は、私の制服が珍しかったのか何度か問題集と制服の間で視線を往復させ、大きな声でこう言った。

「こいつ、カレー臭くね?」

 世界が止まったかと思った。
前の席に座っている人も、加えて通路を挟んで私の隣に座っている人もこちらを凝視し鼻をひくりとさせて、神妙な表情をした。なんだその顔。
それから教室に嫌な笑い声が満ちるまで五秒もかからなかった。
担任は安っぽいハンカチをポケットから取り出して汗をぬぐった。どうせ冷や汗だろう。
クラスのムード―メーカーでもなければ学級委員でもない、転校したての女子生徒。そんな存在をいじっていいのは、とんでもなく空気を読めないやつぐらいだ。
こんな風に頭の中ではぐるぐると思考は回るのに、私の口は思うように回らなかった。
実際「は……カレー……」としか言えなかったし。
教室がざわつきそれを誰も注意しないまま、むなしく授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
こういう時ぐらい仕事しなさいよ、学級委員。名前も顔も知らないけど。


 数学の時間に起こったバカ男子の「カレー臭くね発言」のせいで私はトイレで二回も手を洗ってしまった。隣のやつが教科書見せてって私に泣きついても、もう絶対に見せてやらない。
そう固く決心してトイレを後にする。ぐるぐるとお腹が悲鳴をあげた。そういえば朝から何も食べていない。
教室の裏手にある購買部に出向くと、人の良さそうなパン屋のおばさんが店じまいを始めている。おばさんが私の存在に気付くと、申し訳なさそうに眉根を下げた。
「ごめんなさいねえ……。パンはもう全部、売り切れちゃったのよ。プリンかヨーグルトならあるんだけれど……」
 さっきまでパンがいっぱい詰まっていたはずのトレイを持ち上げて、おばさんが中身を見せた。
「そうですか……」
 プリンとヨーグルトじゃあ、お腹も膨れないだろう。今日は放課後までご飯は抜きだ。あきらめて教室で読書でもしていよう──と、きびすを返した時だった。
「おや、レイカじゃないか!」
 聞き覚えのある声が背後から聞こえてきた。
本当は振り向くのも嫌だったけど、無視しても後が面倒くさいので仕方なしに前に向き直る。
「げ、やっぱり彼井さん……それは」
 泥で汚れた青ジャージに身を包んだ彼井さん。きっと前の時間は体育だったのだろうが、それにしてもずいぶん汚れている。
その両腕には購買のカレーパンがこれでもか!とばかりに抱えられていた。
「げ、とはなんだ、げ、とは! これから静かなところで一人カレーパンを食そうと思っていたところなんだ。レイカもどうだ?」
「結構です」
「冷たいなあ。あ、そういえば──。お前のクラスのやつ、声大きいやつが多いんだな。笑い声が校庭にまで聞こえてきたぞ」
 耳がかっと熱くなるのが分かった。
聞こえていた?笑い声が、校庭に?しかも私の席は窓際……ってことは、「カレー臭くね発言」も……。彼井さんは軽く笑って私の肩をぽんとたたき、大量に抱えていたカレーパンの一つを差し出した。
「まあ、気にするなよ。元気を出せ。ほら、カレーパン」
 なによ、やっぱり聞こえてたんじゃない!
「いりません」
自分でも思ったよりずっと冷たい声が出た。彼井さんの憐れむような視線をひしひしと感じる。
「でも何も食べていないんだろ。そうじゃないと五時間目にお腹が鳴ってもっと恥ずかしいぞ」
「うるさい!」
 彼井さんがびくりと体を震わせ、床に大量のカレーパンがこぼれ落ちる。
「いい加減にしてください、余計なお世話です。私はあなたの部に無理やり入れられて……それで毎日毎日カレーを作らされて、カレーのにおいが全身に染みついちゃったんですよ!」
 カレーをたくさん作ったくらいで体ににおいが染みつく事は無いと思うが、当たり散らさずにはいられなかった。
 河原でカレー作りをしたあの日から、部活ではずっとカレーを作らされ続けている。「最高においしいカレーを作るため」だと言って。
彼井さんは落ちたパンを拾いながらのんきな声で「ま、臭いはないよなあ~。せめてハーブやスパイスの香りとか」とのたまった。
「そう言う事じゃありません! 私、転校生だからただでさえ浮いているのに、今回のせいでみんなからさらに余計に浮いちゃったんですよ⁉ どうしてくれるんですか!」
 もう彼井さんに顔向けできなかった。口の中が異常に乾いて声が出ない。
このまま教室に入ることもできないので、ひとまず先程手を洗っていたトイレの個室に駆け込んだ。
最低だ、私。
一番奥の個室に入りカギを閉めると、たった今自分自身が放った暴言の数々がリフレインしてきた。彼井さんうんぬん以前に、彼井さんは三年生であり先輩だ。先輩になんてこと言ってしまったんだろう。
林先輩や飯田先輩に絞められたらどうしよう……土曜日にはお人よしのいい人たちなんだな、と思ったけれど本当はそうではないかもしれないし。
トイレットペーパーの銀のホルダー部分に映った私の顔は真っ赤だった。……予鈴のベルに追い出されるまではずっとここにいよう。


 結局、放課後のカレー部には行くことができなかった。
自動販売機で買った炭酸飲料をのどに押し込めて何とか空腹をしのぎ、早く帰っても絵美さんに何か言われる気がするので図書館で自習することにした。
図書室には学年別の問題集がそろっており、忘れた問題集もその中にちゃんとある。
先生が出した問題をやろうとしたら案外難しく、うんうん考えている間に眠くなってきてしまい、船を三漕ぎしたほどで頭は机に倒れてしまった。
目を開けた時にはもう赤い太陽の光が窓から差し込んでいて、退室せざるを得なかった……あーあ、眠気め。
 ところで、今日はどこで部活をやったんだろう。
カレー部は基本的に毎日あるが、場所は日によってばらばら。普通教室であることが多いが、学年につきクラスは四つある。
多目的室も含めるとさらに増えるので、探し出すのは非常に面倒くさい。
二年生の教室がある方まで来た時、廊下の曲がり角からケンカするような声が聞こえてきた。
ピリピリとした雰囲気が曲がり角の向こうから漂ってくる。
よく通るがねちねちした男子の声で「何を考えている!」「お前に何が分かるんだ!」などなど大声がこちらに飛んでくる中で「バレー」と言う単語が耳に止まった。
もしかしたら、いや絶対彼井さんと誰かがケンカしている!
彼井さんの声は全くしないけれど、なんとなく彼井さんがらみの事な気がする。ばれないようにほんの少し目を出して、角の向こうをうかがってみた。
「私は絶対出ないからな!」
 さけんでいるのは聞き慣れた声。やっぱり彼井さんがそこにいた。
彼井さんと敵対しているのは黄色の蛍光色のビブスを着た三年の男子で、会話から察するにバレー部の選手だろう……あ。
「知ってる」
 うっかり小声が漏れた。
そうだ、どこかで見たことのある顔だなと思ったら、確かスーパーマーケットへ彼井さんとルウを買いに行ったときに見た男子じゃないか。
彼井さんが見つかっちゃいけないと言った、逃げたがっている相手。一番大きなスポーツバッグを持ち、セール中のジュースを買った……。ユニフォームの男子はさらに続ける。
「悪いが、絶対にインターハイには出てもらう。そもそもお前は部長だ。バレー部のな。部長の出ないインターハイってなんだよ。お前だって、大学の推薦が欲しいだろ」
 インターハイ、バレー部、推薦、部長。
私には一生縁のない、キラキラした青春語録には必要不可欠な言葉たち。改めて彼井さんがバレー部の部長であることを思い知らされて、腹の底がぐにょりと変な感じにうずいた。
「いらない!私にはそんなもの、必要ない!」
 静まった学校の廊下に、彼井さんのはっきりとした声が響いた。
「バカだな、彼井。こんなにおいしい話なのにな。バレーの才能がある……いや、バレーの才能しかないお前にはさ」
 そいつはにたりと見下したような表情を浮かべた。即座に彼井さんが訂正する。
「バレーだけではないぞ金本! 私にはカレーを作る才能も」
「お前見てると腹が立つんだよ!」
 金本と呼ばれた先輩は壁を蹴る。
蹴られた壁は低く鈍い音をたてて、少し黒ずんだように見えた。先生を呼びに行った方がいいかな、と考えて思いとどまる。
外もかなり暗い。こんな時間に残っているのは仕事を溜めた忙しい先生くらいだ。
それにこの二人の話を聞いている限り、先生や私のような第三者が解決できるような問題ではないような気がする。
「せっかくの才能をムダにして。必死にレギュラー争いをしているやつらを知らないのか⁉ ……いや、知るわけねえか。お前はスポーツ推薦でこの学校に入った。入学したその時からずっとレギュラーなんだからな!」
 林先輩も言っていたことだ。彼井さんはだまりこくって下を向く。やっと、話の本筋が呑み込めてきた。
この金本とか言う先輩は彼井さんをどうしてもインターハイに出場させたい。
だけど彼井さんは──おそらくカレー部の方を優先させたいため──出たくない。
だから金本先輩は、彼井さんにとって有利な大学の推薦の話を持ち出して説得を試みている。
「君が何と言おうが、私は出ないからな。なぜなら、君は私をチームに入れることで勝たせ、自分が大学の推薦をもらえると思って利用しようとしているんだろ。推薦は部長と副部長の特権だからな」
 金本先輩はどうやら副部長のようだ。なるほど彼井さんが一番避けたい相手なはずだ。
「……そうやって自分で上手いとはっきり言えるところが嫌いだ」
 副部長は静かに吐き捨てると、あきれたようなまなざしを彼井さんに向けた。
「ま、なんでもそんなこと言っても、お前がインターハイに出るか出ないかはオレが決められるんだがな。もう部員たちは動いている」
「どういうこと……だ?」
 不敵な笑み。彼井さんも余裕ぶって笑みを浮かべているけど、ひきつった顔にしかならない。
「それは、インターハイの会場にて、だな」
 金本先輩のいやに粘性の高い声が耳につく。
インターハイくらい出場してもいいんじゃない、と一瞬だけ思ったけれど、林先輩と飯田先輩の言っていた事を思い出して「そう言う事じゃない」と考え直した。
彼井さんはカレー部の方に力を入れている。
それはもう、スパイスづくりの話を聞くにずっと前から。
だからバレー部の方だって、彼井さんがいないことなんてとっくに慣れてしまっているはずだ。
そこでもう「彼井にはやる気がない」と強制退部させてもよかったのに、今までされていなかったのは……。
『大会の時だけ出場してもらい、勝たせてもらうため』。
 要は、必要な時だけ都合よく借りることができる、お助け人材。
インターハイと言うのだからバレー部の中でも特に上手な精鋭部隊が出場するに違いないけど……。でも、それで自分の推薦を得ようだなんて絶対におかしい。誰がどう考えようと間違っている。
「おかしいわよ!」
 腹の底から声があふれて、あわてて口を両手でふさいだけれど遅かった。金本先輩と彼井さんが勢いよく私の方へ顔を向ける。もうどうでもいいや、出ちゃえ。
「レイカ……?」
「誰だ?」
 彼井さんは曲がり角から突如現れた私を見て、豆鉄砲を食らった鳩のような間の抜けた顔になった。
「か、彼井さんが嫌がっているじゃないですか。そんな人をインターハイに出場させてもきっと何もしてくれないし、失格になります!」
 いきなり目の前に知らない学校の制服を着た女子生徒が飛び出せば、誰だって驚くだろう。ましてやその子が突然どなり始めたら。金本先輩は眉間にしわを寄せて私を一瞥すると、「……まあいい」とだけつぶやき、こう続ける。
「お前は彼井の何が分かってそれを言っているんだ?」
 今度は私が彼井さんのような表情をする番だった。
鏡が無いからわからないが、今の私は相当みっともない顔をしているに違いない。
そのまま金本先輩は私の方へつかつかと歩み寄り、思い切り顔を私の耳の方へと近づける。一瞬だけ目線があったが、見たものをたちまち氷に変えてしまう呪いでも持っているのではないかと疑ってしまうくらいの冷たい目だった。
「……オレはバレーボールを前にすると嫌でもゲームに参加してしまう、彼井の性格を分かった上で言っているんだ。あいつはもともとバレーが嫌いなわけではない。お前に彼井の何が分かる? どうせあいつの作ったお遊びサークルの一員なんだろうが、他人にとやかく言われる筋合いはない」
 小声のせいで耳に息が吹きかかる。人はこういう時「ぞくっ」とすると聞いたことがあるけれど、私は別の意味で「ぞくっ」とした。ひどく冷たい息。童話にでてくる雪の女王レベル。
 私の全身をそう冷たくさせるほどには、金本先輩の言葉は正論だった。
でも、ここで引き下がるわけにはいかない。両手を固く握りしめて、負けるものかと口を開いた。
「でも、自分が大学の推薦欲しさに彼井さんに頼るのは間違っていると思います!推薦が欲しいなら、自分自身の実力とチームをまとめる力で勝負したらどうなんですか⁉ だってあなた副部長なんでしょう?」
 金本先輩の目が細くきつくなる。
顔の前にナイフを突きつけられたらこんな気分になるのかー、と思うくらいには心臓が飛び跳ね、それでいてのど元にはまだ熱い何かが残っていた。
「お前、転校生だな」
 私の制服をなめまわすように上から下まで見てから、先輩は低く唸った。
「……顔は覚えた」
 およそ不良マンガにしか使用されないセリフを吐くと、金本先輩は足音も立てず昇降口のある廊下の先──暗闇の中へと溶けて行った。
放っておいてしまった彼井さんの方へと向き直る。彼井さんは口を固く閉じて、床に視線を落としていた。
「彼井さん」
 いつもうるさい彼井さんが何も言わないので、心配になり駆け寄ろうとすると足に力が入らず、勢いのままその場に両ひざをついてしまう。骨を硬い床に直接打ち付けてしまったようで、しびれたように鈍く痛んだ。
「大丈夫か、レイカ」
「──大丈夫です」
 彼井さんがかがんで右手を差し出し、私はそれを左手で受け取りゆるゆると立ち上がる。
「面倒なところに来てしまったな」
「いえ」
 毎日見ている彼井さんの顔に影がかかっているのは、廊下の蛍光灯が切れかかっている事だけが理由じゃないことぐらいは私にも察することができた。
まず、私は彼井さんに昼間の事を謝らなくてはならない。左手を離すと、心なしかこぶしがじっとりと汗ばんで熱を持っていた。
「あっ、あの……、あと」
 なぜか声が震えてつまる。おかしいじゃない、さっきまではすらすらと出ていたのに。
私がどもっているうちに彼井さんは光の映らない目で私を見つめてから、深くため息を吐いた。
「すまないが、話だったら明日にしてくれ」
 彼井さんの目は最後の方で、私を視界から外したようだった。
返答は許さないとでも言いたげな背中を向け、速足で昇降口へと向かう。もう深追いはできなかった。
「……明日は土曜日だよ……」
 一人ごちると、ふいに背後から足音がした。
息を飲んで振り返ると、決まりの悪そうな顔を浮かべた林先輩と無表情の飯田先輩が立っている。この場を走り去ることもできたけれど、先輩たちの顔を見てからそんな行動に移せるほど私の心は強く育っていない。
「あ、二人ともまだ帰っていなかったんですね。もしかしてカレー部が長引いたんですか?お疲れ様です」
 今の事に口を出されたくなくて、矢継ぎ早に適当な言葉を並べていく。しかし、そんな私の魂胆はあっさりと見破られた。
「食器を洗っていたら彼井が涼に突然連れていかれてしまってな。実はレイカの後ろからずっと見ていたんだ。ごめんな」
 林先輩はちょっとキザな風に人差し指を口に添えた。そのしぐさが妙に優しくて、心の隙間にするりと落ちる。
「ああ、涼っていうのはさっきのやつ。わかっていると思うが、バレー部の現副部長だな。さて……困ったことになったなあ」
 林先輩の声に合わせるように、飯田先輩も腕組みをして「うーん」とのどを鳴らす。きっと考えていることはみんな同じだ。
「このままでは絶対、彼井は無理にでもインターハイに参加させられるだろう。オレたちには直接関係のあることではないが、これでもオレは一応カレー部の副部長だしな。何とかしないわけにはいかないだろう? なあ飯田、レイカ」
「そうですね。インターハイで結果を出して、学校のヒーローになったり有名大学の推薦をもらったって彼井さんはそれを望んでいないんですから」
「無理やり、反対……」
 飯田先輩が軽くこぶしを突き上げた時、天井のスピーカーから無機質なチャイムが鳴りだした。チャイムが終わると、続けざまにやたら間延びしたトロイメライが始まる。
「もう最終下校の時間だな。外は暗いし、送っていこう」


 外はとっくに暗くなっており、空には一切の隙間もなく暗雲が広がっている。学校の周りの住宅街からは子供が多いのか、はしゃぐ声や泣き声が時折聞こえた。
「こりゃ明日は雨だな……」
 林先輩が空を仰いで独り言をつぶやくと、鼻先に冷たいものが触れる。雨だ。
雨は優しく、かつ存在を知らしめるかのようにアスファルトに跳ねては水たまりを作っていく。
道を歩く先輩たちの歩幅が広くなった。黙々と歩く気まずさに耐えかねて、それとなく言葉が出た。
「あ、あの……、今日の部活、さぼってしまってすみません」
 私の右側を歩く飯田先輩は首を横に振って、「ううん、いい」。
「別に、気にしてなんかいないさ。部活って言ったって非公認だし。そこまで詫びる必要なんてない」
 学ランの肩についた雨粒を払いながら、林先輩は軽く笑って見せた。見た目に反して、この二人は私よりずっと人間ができているのかもしれない。
「それに、カレー部にこなくなると言う事は自分の居場所を見つけることができた、ってことだ。それは誰にもとがめられないし、むしろ喜ばしい」
 それなら、今カレー部にいる先輩たちは──。
「林先輩たちは、どうしてカレー部に入ったんですか?」
 ここまでで一番気になった話。ふと口をついて出ただけの質問だったけれど、林先輩はゆっくりと歩みを止めて下を向いた。
「そう言えば、話していなかったな。──オレもお前と同じで突然彼井にカレー部へ入部させられた。有無を言わさずな」
 顔をふたたび持ち上げ、さっきよりは遅く歩き始める。
有無を言わさずって……彼井さんてば、なんでそんな無理やりな姿勢で入部させるんだろう。私の時だって、本人の意思なんてまるで関係なかった。
気が付くと眉をひそめていたようで、林先輩がとっさに手を振った。
「いや、まあレイカがそんな顔するのもわかる。だけど今思うとオレは彼井に救われたんだよ。彼井がカレー部に誘うまでのオレはクラスでものすごく浮いていて、友達なんか一人もいなかった」
 苦いものを飲み下すような林先輩の言葉に、一瞬にして身につまされる思いになった。
「オレは、中学のころはいじめられていたんだ。今じゃこんななりだけどな。これを見てみろ」
 ほら、と言いながら先輩はおもむろにサングラスを外す。
サングラスを折りたたんでこちらに向き直ると──そこにはとんでもなく小さく、細い目があった。飯田先輩の目の三分の一もないくらいに開いていない目。例えるならキツネ目……と言ったところか。
「オレの目、小さいだろ?これが原因でいじりがいじめまで行った。最初は見た目だけをバカにされるくらいだったが、だんだんオレ自身を否定するような事を言うやつも出てきてな……オレは他人が怖くなった。だから、高校に上がったらキャラを変えてやろうと決心したんだ」
「高校デビューってやつですか」
「そうだな。サングラスをして、髪を染めてパーマをかけた。人っておかしいよなあ、それだけでオレの周りのやつらは全員話しかけてこなくなったんだから。でも、良かったのは最初だけだった」
 にわかに切ないようなさみしいような表情をして、先輩はうつむいた。
「本当に誰も人っ子一人オレに話しかけないし、おふくろもオレがいきなりぐれたと思ってびくびくするようになった。申し訳ないと思ったさ、だけど自分で蒔いた種のようなもんだろ。家に入った瞬間パーマはなおらないし、髪色だって戻せない。そりゃあ時間がたてば戻っていくが、やめたくてもやめらないんだ」
 林先輩のオレンジ色に染められた髪が街頭に照らされて鈍く光る。
「そこに彼井が現れた。最初は入部の誘いを突っぱねたさ、ちょっと前のレイカみたいに。でも、彼井はわかっていたんだ。オレの心が本当は弱いことにな。そのまま彼井の押しに負けて、入部しちまった。でも後悔はしてねえよ」
 サングラスなしの細い目で笑う林先輩は少し滑稽だったけれど、特別変には見えなかった。
不思議と少しずつ彼井さんがすごい人物なのでは?と思えてくる。
確かにバレーはうまいらしいけど、あんな四六時中カレーのことしか考えていないような人が、人の心の弱さに気付けるものなのかしらね。
私には「カレー臭くね発言」のフォローもできなかったくせに。そっと心の中で鼻を鳴らすと、次に飯田先輩が口を開いた。
「僕も……だ。彼井に助けられた。僕も、レイカと同じ転校生だったんだ」
 飯田先輩が話した言葉で、一番長いセリフな気がする。淡々とした口調で、先輩は語りだした。
「高校一年生の時、イギリスから来た。最初は……新しい国でたくさん友達を作ろうと頑張った。だから、少しずつだけど友達ができた。男の子も、女の子も」
 飯田先輩はそこで一度言葉を切ると、陰った視線を夜道の奥へと移した。
なるほど、初めて会った時に何らかの異国の血が入っているんだろうとは思ったけど、イギリスだったのか。
それにしては日本語が上手なのも、友達作りのために一生懸命に勉強したからに違いない。
「でも、そのできた友達の中に不良のガールフレンドがいた。だから、殴られた」
 先輩はそっと白いほっぺたに手を当てた。
「たくさん、たくさん殴られた。たぶらかしたつもりはなかったのに。怖くなった、みんな。話せなくなった」
 最後の方は尻すぼみになりながらも、先輩は一度もつっかえることなくよどみなくしゃべった。
「そこに彼井が来た。カレー部に入らないかって。そんなクレイジーな部に入れるか、って言おうと思ったけど、言えなかった。そして気づいたら部に入っていた」
「つまりレイカもオレと飯田と同じように見えたんだろうな。自分の居場所がなくて困って苦しんで、追いつめられているように」
 彼井さんは最初、自分のためだけにカレー部を作ったのだろう。でも、一人だけでは意味がない。
そこに林先輩、飯田先輩、そして私──と言うように、自分に似た境遇の人を見つけて入部させていった。強制と言う形でも、これは彼井さんにとって間違いなく「救済」だった。
「なんだか複雑な気分」
 自分自身が困って苦悩していたことが他人に見抜かれたことが、なんとなく恥ずかしかった。
この一言はどうやら先輩たちには聞こえなかったようで、林先輩が少し熱のこもった声色を発した。
「とにもかくにも……レイカ、彼井を止めるんだ。もしかしたら、このままでは彼井が涼の言いなりになってしまうかもしれない」
「わかりました」
 湿気を含んだ風が、雨とともに私たちの間を吹き抜けていった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み