入口

文字数 764文字

「トンネルを使わせてあげよう」
「やったぁ!」

ぼくは飛び上がった。それくらいラッキーなことなんだ。

おじさんはトンネルをあつかう仕事をしてる。
おじさんのトンネルはどんな壁も通り抜けるんだ。

でもみんなには内緒で、何でも屋さんとして働いてた。

たぶん、おじさんは別の時代の人で、もしかしたら宇宙人かもしれないし、異世界の人かもしれない。

一年前、ぼくはおじさんがトンネルを生み出す瞬間を目撃した。
最新技術だよってごまかしたおじさんに、ぼくは納得したふりをした。

その日から、ぼくはおじさんの仕事を手伝ってる。
おじさんは社会常識が足りないから、けっこう役に立っているんだ。

きっと子ども相手なら、知られても問題ないって考えているんじゃないかな。
騒ぎになっても、トンネルでどこへでも行けるしね。

ぼくが触ってはいけない物だと思ってた。
まさか使わせてもらえるなんて!

おじさんはきらりと光るカードを取り出した。
ぼくは背筋をしゃきっと伸ばして受け取る。
「うわぁ!」
「いいかい? トンネルはひとつ。ゲートやフィルターはどれを使ってもいいよ」


ぼくはドキドキしながら家まで走った。

どこに行こう?

晩ご飯の時も、お風呂に入っている時も考え続けたけど、なかなか決まらない。

なんだか、別れのしるしみたいで。

おじさんは入口と出口を慎重(しんちょう)に選ぶ。
世界のどこへでもつなげられるゲートがあるし、過去や未来につながるゲートもある。
だけど、トラブルから守る機能があって、そのせいで元の世界に戻ると別の時代の記憶は消えてしまう。物も持ち込めない。

他にフィルターやふたがあって、レンズもある。
トンネルは長さも大きさも自由自在だ。

ぼくは布団の中で考えた。

どんな場所にも行けるゲートと、思い出に残らない時間ゲート。

さあ、どうする?


思い出をつくる
→出口Aへ

未来に行く
→出口Bへ

温存する
→出口Cへ

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