出口B

文字数 508文字

ぼくは日にちを定めた。未来で待ち合わせだ!

そして、未来のぼくに会いにーー行ったはずだけど、覚えてない。

時空トンネルを通ると、どんな物も壊れてしまう。
保護機能は人と着てる服しか守ってくれない。守らないようにできてるって、おじさんは言っていた。

でも大丈夫、ぼくは洋服に糸でデジタル数字の8をたくさんぬい付けていたから。

切られた糸でわかった。
大晦日(おおみそか)におじさんはいなくなる。

あと四ヶ月だ。

ぼくは裁縫(さいほう)をいっぱい練習した。
だけど、おじさんはこの世界の言葉も忘れちゃうらしい。
しかも、着ている服は特別で、針が通らなかった。


別れの日、ぼくはありがとうとさよならを伝えて、完成したばかりの刺繍(ししゅう)のタペストリーを見せた。

あんまり似てないおじさんの笑顔と、ブサイクになっちゃったぼくの顔。
そして山と青い風。

ヒマラヤクーラー酸欠事件だとおじさんはわかってくれた。
笑っているうちに涙が出てきた。

もう、時間だ。

今までと雰囲気の違うトンネルを通って、おじさんは帰っていく。
トンネルを出て、振り返ったおじさんはきょとんとしていたけど、ぼくはタペストリーをかかげた。

ゲートが閉じられる。

その時、おじさんは笑っていた。

ぼくも笑おうとして、やっぱり泣いた。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み