起

　明るく優しい女の子〝虹咲(にじさき)優芽(ゆめ)〟は〈夢美ヶ丘小学校〉に通う普通の小学四年生。
　けれど、ただひとつだけ普通の人には無い特徴がありました。
　それは〈妖精〉や〈ふしぎなもの〉が見える〈妖精眼(グラムサイト)〉を持っている事。
　優芽は小さい頃に偶然〈小妖精(ピクシー)〉と出会い、衰弱しているところを助けてあげた事で〈友達〉になりました。
　やがて、この小妖精が〈妖精の国(ティルナノグ)〉へと帰る際に「友達の証として」と授けてくれた恩恵(ギフト)が〈妖精眼(グラムサイト)〉なのです。
「それがあれば、いつでも私達〈妖精〉に会えるから寂しくないよ」と……。
　だから、優芽には〝日常〟のいたるところに〈妖精〉がいるのが見えるし、会話する事すらもできるのです。

　妖精達はイタズラ好き。
　日常に起こる些細な「あれ？」は妖精達のイタズラ。
「手近にあったはずの物が無くなった」とか「向かい風が異様に強い」とか「行く先々で、ちょっとした不運に見舞われ続ける」とか……。
　そんな「あれ？」の真実を、優芽は〝見る〟事ができ、また妖精を諫めて人知れず解決する毎日を過ごしています。

　けれど、それは絶対に『秘密』なのです。
　何故なら、人間に〝妖精の存在〟を知られると、妖精達は人間界からバイバイしなくてはならないから。
　優芽にとって〈妖精〉達は〝大切な友達〟です。
　この〝大切な友達〟と一緒にいたいなら『秘密』は絶対に守らなければなりません。

　内心ハラハラドキドキしながらも、優芽の〝日常〟は明るい楽しさに彩られているのでした。