唐突に始まる三国志【上】
文字数 2,472文字
「―――――と言うわけで授業を始めるわ。」
「すまん何がと言うわけなんだ?」
ここはとある高校の空き教室。
夕暮れ時のこの教室で、ホワイトボードの前に立つ一人の女性と対面する形で俺は椅子に座っていた。
女性はセーラー服で、化粧をしていないが整った顔立ち、腰辺りまでまっすぐ伸びた黒髪とDはあるであろうおっぱいが特徴的な人であった。
「あら、分からないの?……全くこれだから文系は……読解力が無いってよく言われない?」
彼女は俺を見下すようにしながら言った。
いや、多分これだけじゃ誰も理解できんぞ。
プロローグ位書けよ作者。
「これはね……あらすじから繋がってるのよ。なぜなら、細かい説明なんてものは試験直前で焦っている作者には到底書いてる暇なんて無いからよ。」
いちいち話がメタいわ!
……まああらすじから繋がってるから、読者の皆はあの内容うっすーーーーーいあらすじ読んでからこっちを読んでくれな。
あと試験前ならこんなん書くなよ作者……
「じゃあ長話もあれだから、早速始めるわよ。今日は三国志から始めるわ。」
「分かりました。」
「早速だけど、あなた、三国志前って何があったかわかるかしら?」
「ええ。後漢の時代ですから……*党錮の禁とか*黄巾の乱とかがあった頃ですよね。」
「そうよ。ちなみに漢王朝の期間は『にれつにつづれ(前202~後220)』で覚えるのがいいと私は習ったわ。」
「そうなんすか……覚えやすいっすね。」
「そうね。そして、この時代において、政治はとても停滞していたわ。そしてこの後、曹操の息子曹丕によって、後漢の皇帝から帝位を*禅譲という形で貰い、曹丕が文帝として220年に即位、魏が始まったわ。その頃からが、三国時代と呼ばれる時代なのよ。」
「……はあ。でもその前に*赤壁の戦いってありませんでしたっけ?そこは三国時代とは違うんですか?」
「違わなくはないけど、微妙な所であるのは確かね。でもそれによって天下三分状態になったのは覚えておいてね。」
なるほどな。……ってか流石自称歴女、何でも分かってんな。
「まあここから三国志的な内容に入るわけだけど……あなた、三国志ってどんな話だと思う?」
「どんな話って……蜀と呉が協力して魏に勝利するってゆー感じで、諸葛亮孔明とか劉備とかの英雄伝みたいな感じなんじゃないですか?」
「そうね……諸葛亮孔明や劉備が登場し、魏という悪の帝国を滅ぼそうとする英雄伝のような物語……な訳があると思っているの?」
あっ……違うんですねハイ。
「そもそものところ劉備なんて言ってはあれだけど、ほとんどチンピラのリーダーみたいなものよ。ただの好戦的なおっさんよ!そんな劉備がいきなり、『俺ってさ~、*劉邦と同じで劉って文字が名前の中にあって、しかも俺ってば漢の帝王の子孫なワケよ。これは俺が天下とるっきゃなくない?』みたいなこと言い出して、魏と戦ったのを中国史特有の内容をモリモリに盛って、物語風味にしたのが今の三国志なのよ!」
西野先輩はビシッとこちらを指差してきた。
オーウ、マジかい。
こいつぁビックリだぜ!
「それに蜀の辺りって昔何があったか分かる!?三星堆遺跡よ!三星堆遺跡!あの目玉飛び出したよく分からないモノを作ってた場所よ!ろくな場所ではないわ!そんなところに諸葛亮孔明みたいな超のつくような天才策士がいるわけないじゃない!」
はあはあ息を吐きながら熱弁をふるう先輩。そろそろ落ち着いてほしいものである。
……しかし世界史って奥が深いな……こいつは覚えておくのが大変だぜ。
「……落ち着きましたか?先輩。」
「ええ……取り乱して悪かったわね。……それじゃあ、逆に魏はどうだったのか話していくわ。魏は曹操によって建国され、スタートは文帝として即位した曹丕だとされているわ。ちなみに都は洛陽よ。」
そこまでは中国史常識だな。
「そして曹操だけどね……もう天才よ。」
……マジか。
「彼は軍人と政治家としての実力はさることながら、文学の才能もずば抜けていたの。その文学人としての才能は、照明太子の『文選』という文集に詩が載せられるほど優れていたらしいわ。」
「そうなんすか……他には何かやったんすか?」
「そうね……これは曹丕の話になってしまうけど、*屯田制の導入や郷挙理選に変わる*九品中正法を導入したり……それに邪馬台国の卑弥呼が魏に使いを送ってきたりとか、決して悪の帝国ではなかったのよ。」
「へえ~、凄かったんすね。」
「ええ。確かに凄かったわ。……でも、そんな魏も、265年には滅んでしまうのよ。」
先輩は険しい顔をしながらいった。
「えっ、まさかそれって……」
先輩は息を吸い込んで、少し溜めてからゆっくりと口を開いて言った。
「ええ。晋……西晋の……登場よ―――――」
――――――――――――――――――――――
【*用語解説】
・党錮の禁……宦官という地位の人々が政治の実権を握ることに反発した儒教的教養をもつ官僚(党人と呼ばれた)の反抗に対して宦官が行った弾圧のこと。不当な逮捕などが行われていた。
・黄巾の乱……張角という仙人を中心とした反乱。黄色い布を着けていたためこう呼ばれた。
・禅譲……前の皇帝から有徳者等に対して平和的に皇帝の位が引き継がれること。また、武力による引き継ぎは放伐である。
・赤壁の戦い……魏の曹操対蜀と呉の劉備、孫権による208年に起こった戦い。この戦いでは蜀と呉は勝利している。この戦い以降天下三分状態になった。
・劉邦……漢の最初の皇帝。古典でやる剣の舞にも登場している。
・屯田制……国有地化した耕作地を農民や流民に耕させる制度。軍人が耕す軍屯と農民が耕す民屯があった。
・九品中正法……郷挙里選に変わる役人の登用制度として作られた。これも結局は上級官僚職を豪族が独占してしまったため、後の科挙へと変わっていくこととなった。
「すまん何がと言うわけなんだ?」
ここはとある高校の空き教室。
夕暮れ時のこの教室で、ホワイトボードの前に立つ一人の女性と対面する形で俺は椅子に座っていた。
女性はセーラー服で、化粧をしていないが整った顔立ち、腰辺りまでまっすぐ伸びた黒髪とDはあるであろうおっぱいが特徴的な人であった。
「あら、分からないの?……全くこれだから文系は……読解力が無いってよく言われない?」
彼女は俺を見下すようにしながら言った。
いや、多分これだけじゃ誰も理解できんぞ。
プロローグ位書けよ作者。
「これはね……あらすじから繋がってるのよ。なぜなら、細かい説明なんてものは試験直前で焦っている作者には到底書いてる暇なんて無いからよ。」
いちいち話がメタいわ!
……まああらすじから繋がってるから、読者の皆はあの内容うっすーーーーーいあらすじ読んでからこっちを読んでくれな。
あと試験前ならこんなん書くなよ作者……
「じゃあ長話もあれだから、早速始めるわよ。今日は三国志から始めるわ。」
「分かりました。」
「早速だけど、あなた、三国志前って何があったかわかるかしら?」
「ええ。後漢の時代ですから……*党錮の禁とか*黄巾の乱とかがあった頃ですよね。」
「そうよ。ちなみに漢王朝の期間は『にれつにつづれ(前202~後220)』で覚えるのがいいと私は習ったわ。」
「そうなんすか……覚えやすいっすね。」
「そうね。そして、この時代において、政治はとても停滞していたわ。そしてこの後、曹操の息子曹丕によって、後漢の皇帝から帝位を*禅譲という形で貰い、曹丕が文帝として220年に即位、魏が始まったわ。その頃からが、三国時代と呼ばれる時代なのよ。」
「……はあ。でもその前に*赤壁の戦いってありませんでしたっけ?そこは三国時代とは違うんですか?」
「違わなくはないけど、微妙な所であるのは確かね。でもそれによって天下三分状態になったのは覚えておいてね。」
なるほどな。……ってか流石自称歴女、何でも分かってんな。
「まあここから三国志的な内容に入るわけだけど……あなた、三国志ってどんな話だと思う?」
「どんな話って……蜀と呉が協力して魏に勝利するってゆー感じで、諸葛亮孔明とか劉備とかの英雄伝みたいな感じなんじゃないですか?」
「そうね……諸葛亮孔明や劉備が登場し、魏という悪の帝国を滅ぼそうとする英雄伝のような物語……な訳があると思っているの?」
あっ……違うんですねハイ。
「そもそものところ劉備なんて言ってはあれだけど、ほとんどチンピラのリーダーみたいなものよ。ただの好戦的なおっさんよ!そんな劉備がいきなり、『俺ってさ~、*劉邦と同じで劉って文字が名前の中にあって、しかも俺ってば漢の帝王の子孫なワケよ。これは俺が天下とるっきゃなくない?』みたいなこと言い出して、魏と戦ったのを中国史特有の内容をモリモリに盛って、物語風味にしたのが今の三国志なのよ!」
西野先輩はビシッとこちらを指差してきた。
オーウ、マジかい。
こいつぁビックリだぜ!
「それに蜀の辺りって昔何があったか分かる!?三星堆遺跡よ!三星堆遺跡!あの目玉飛び出したよく分からないモノを作ってた場所よ!ろくな場所ではないわ!そんなところに諸葛亮孔明みたいな超のつくような天才策士がいるわけないじゃない!」
はあはあ息を吐きながら熱弁をふるう先輩。そろそろ落ち着いてほしいものである。
……しかし世界史って奥が深いな……こいつは覚えておくのが大変だぜ。
「……落ち着きましたか?先輩。」
「ええ……取り乱して悪かったわね。……それじゃあ、逆に魏はどうだったのか話していくわ。魏は曹操によって建国され、スタートは文帝として即位した曹丕だとされているわ。ちなみに都は洛陽よ。」
そこまでは中国史常識だな。
「そして曹操だけどね……もう天才よ。」
……マジか。
「彼は軍人と政治家としての実力はさることながら、文学の才能もずば抜けていたの。その文学人としての才能は、照明太子の『文選』という文集に詩が載せられるほど優れていたらしいわ。」
「そうなんすか……他には何かやったんすか?」
「そうね……これは曹丕の話になってしまうけど、*屯田制の導入や郷挙理選に変わる*九品中正法を導入したり……それに邪馬台国の卑弥呼が魏に使いを送ってきたりとか、決して悪の帝国ではなかったのよ。」
「へえ~、凄かったんすね。」
「ええ。確かに凄かったわ。……でも、そんな魏も、265年には滅んでしまうのよ。」
先輩は険しい顔をしながらいった。
「えっ、まさかそれって……」
先輩は息を吸い込んで、少し溜めてからゆっくりと口を開いて言った。
「ええ。晋……西晋の……登場よ―――――」
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【*用語解説】
・党錮の禁……宦官という地位の人々が政治の実権を握ることに反発した儒教的教養をもつ官僚(党人と呼ばれた)の反抗に対して宦官が行った弾圧のこと。不当な逮捕などが行われていた。
・黄巾の乱……張角という仙人を中心とした反乱。黄色い布を着けていたためこう呼ばれた。
・禅譲……前の皇帝から有徳者等に対して平和的に皇帝の位が引き継がれること。また、武力による引き継ぎは放伐である。
・赤壁の戦い……魏の曹操対蜀と呉の劉備、孫権による208年に起こった戦い。この戦いでは蜀と呉は勝利している。この戦い以降天下三分状態になった。
・劉邦……漢の最初の皇帝。古典でやる剣の舞にも登場している。
・屯田制……国有地化した耕作地を農民や流民に耕させる制度。軍人が耕す軍屯と農民が耕す民屯があった。
・九品中正法……郷挙里選に変わる役人の登用制度として作られた。これも結局は上級官僚職を豪族が独占してしまったため、後の科挙へと変わっていくこととなった。