第3話 空中散布

文字数 544文字

二人がまた低山をハイキングしていると、一機の飛行機が山にスプレーを散布していた。
スプレーは山、木、土、そして湖にも無差別に撒かれていた。
二人はあわててジャケットのフードを被ったが、スプレーはその上にまで落ちてきた。



月曜日だったので二人は街の市役所に行って、あのスプレーは何を撒いているのですかと聞いたら、木を食い荒らす害虫対策の殺虫剤で、別荘や貸し家の昆虫を退治する目的もあるという。

「僕らはもう数日、貸し家に泊まっていますが、ダニやノミやその他の害虫には悩まされていませんよ」
聡は市役所の係員に言った。
「この空中散布は二年前から行っています。その効果が現れたんでしょう」
と係員の男性は答えた。
「でも山の木はところどころ茶色く変色して、元気がありませんでした」
と潮見が観察を報告した。
「最近は、殺虫剤より害虫の天敵を使うほうが一般的なのでは?」
と聡も付け加えた。
「この空中散布は肯定的な結果を出しています。撒いている量も少ないですし」
と係員。
「でも、この街に訪れるというきれいな鳴き声の小鳥には、一回しか会いませんでした。観光客として期待していたんですが」
聡は食い下がった。
「そうなんですか? 木と害虫については、毎月点検しているのですが、鳥については調べておりません」
という答えだった。
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