文字数 1,361文字

 
 「おつかれさま、みんな!」
水月ちゃんと咲来さんのおかげで、だいぶ上手になったと思う。
みんなも、満足そうな顔だ。
「それじゃあ」「またね~」「球技大会、楽しみだね」―――
って言いながら、私たちは解散した。
三人が帰ったあと、私たち姉妹と咲来さんは、夕暮れの公園に、ぽつんと立っていた。
「はぁ。………ほんとにびっくりした。まさか、咲来ちゃんが来てくれるなんて」
水月ちゃんはそう言いながらも、すっごく嬉しそう。
「そりゃあ、妹の妹に呼ばれたら、行くっきゃないじゃん」
そう言って、ニカッと笑った。
「ほんとうに、楽しかったわ」
満足そうで、よかった。
伊月ちゃん、ナイスだよ!
声には出さなかったけど、視線を向けると、伊月ちゃんは気付いてみたいで、笑ってくれた。
やっぱり私たち、姉妹だ。
「ちょっと、座ろうか。私も、いろいろと話したいことあるし」
咲来さんが提案したので、私たちは木陰にあるベンチに座った。


「ええっ! 咲来ちゃん、今受験生なの⁉」
水月ちゃんが、がたんと椅子から立ち上がった。
ムリもないかな。だって、咲来さんの大変なことだから。
なんと咲来さん、今受験生らしくて、猛烈に頑張っているんだって。
「そ。私、冬に大学の試験を受ける予定なんだ」
そ、そうだったんだ…………。
そんなときに呼んじゃって、大丈夫だったかな。
「それなのに来てくれて…………大丈夫だったの?」
「ああ。勉強中だけど、妹たちのためなら、少しくらい、休んでもいいかなって思ってさ」
「咲来ちゃん………」
私たちのため、か。
ほんと、咲来さんっていい人だな。
「私さ、冴子さんのあとを継ぐことにしたんだ」
冴子さん………というのは、咲来さんと水月ちゃんの、里親さんのことだ。
「えっ、そうなの⁉」
「うん。そのことを冴子さんに言ったら、別にいいけど、まずは大学に行け、だってさ。だから、大学の試験を受けることにしたんだー」
「咲来ちゃんなら、絶対に合格できるわ! 頑張って!」
水月ちゃんの視線が、熱くて。ほんとうに、大好きなんだなって思った。
私だって、頑張ってほしいし、受かってほしい。
だから―――――。
「頑張ってください! 私、毎日祈ります!」
って言ったら、咲来さんに笑われた。
「ははっ。ありがとよ」
「うちも応援する! だって、咲来さんてすごいいい人やから。だから、頑張ってや!」
「頑張るよ。私、なりたい自分になるって、決めたんだ! だから、もっと頑張って、冴子さんたちに。みんなに認められたい。自分の思ったことを素直に言ったり、ね」
「咲来ちゃん。私たち、みんな、応援してるわ!」
私と伊月ちゃんと水月ちゃんは、ぐっと熱い視線を向けた。
応援してるって気持ちが、伝わるように。頑張ってほしいもん!
佳月ちゃんはというと――――。
どうしたんだろう?
右手を胸にあてて、左手を上に重ねてるみたいだけど…………。
なにか、考えているのかな?
「佳月ちゃん、どうした?」
咲来さんに呼ばれると、佳月ちゃんはちょっとびっくりしてから、うつむいて。
また、私たちのほうを向いてくれた。
「いえ。………僕も、なりたい自分になろうって決めました」
「うん。みんなも頑張れ。応援してるよ」
咲来さんはそう言って、強気に微笑んだ。
水月ちゃんも、唇の端っこをあげて、笑っている。
これからも、明るい未来が待ってるって、信じてた――――。




ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み