第1話 崩れていく家族
文字数 820文字
これは永遠に忘れる事のない
僕と彼女の恋物語。
あの夏の記憶。
◇◇◇◇◇◇
「優希、早くしなさい!」
母の不機嫌な声に腹の底から嫌悪感が芽生えた。
「ぐずぐずしてるとおいてくから!」
頭ごなしにヒステリックなカナキリ声で怒鳴られる。
毎度のことながら吐き気と頭痛に眩暈がした。
「ごめんね‥母さん、直ぐいくから」
僕は怒りを心に留めながらできるだけ優しく言う。そうしないと面倒なことになりかねないからだ。
今日、僕と母さんは住み慣れた家を引っ越す‥そして母の古里へ移り住むのだ。
事の発端は数ヶ月前に遡る。
◇◇◇◇◇◇
学校から帰って来た僕は母のただならぬ雰囲気に息をのんだ。
真っ青な顔
眼孔鋭く、怒りや哀しみを全身に溢れ出させた母の姿。
そのあまりに別人と化した母の姿に僕の脳裏に【鬼】の文字が浮かんだ。
目の奥に潜む恐ろしくも荒々しい黒々と光る何かを見てしまったからだ。
当日、僕は14歳。
そう‥子供だった。
母は、いつも優しく美しい人だった。
それなのに何が母を【鬼】に変えてしまったのだろう?
本当に【鬼】が存在しているなんて信じている訳ではない。
でも人は時に心に【鬼】を宿すのだと、おばあちゃんが話してくれたお伽話を思い出した。
そして僕は、はじめて人の心に潜む【鬼】の存在を垣間見て恐怖し怯えたのである。
数日後、母を変えた原因が父であることを知った。
誰も僕に事の真相を教えてくれなかったが子供ながらに二人の様子から察していた。
母さんと僕以外に父に守りたいと思う大切な存在が出来てしまったのだと幼いながらも理解した。
積み上げてきた大切だった時間も形も全て作り物だったみたいに簡単に崩れて散っていく。
そうして母が【鬼】に心を支配されてからというもの仲の良かった僕達、家族は壊れていった。
僕と彼女の恋物語。
あの夏の記憶。
◇◇◇◇◇◇
「優希、早くしなさい!」
母の不機嫌な声に腹の底から嫌悪感が芽生えた。
「ぐずぐずしてるとおいてくから!」
頭ごなしにヒステリックなカナキリ声で怒鳴られる。
毎度のことながら吐き気と頭痛に眩暈がした。
「ごめんね‥母さん、直ぐいくから」
僕は怒りを心に留めながらできるだけ優しく言う。そうしないと面倒なことになりかねないからだ。
今日、僕と母さんは住み慣れた家を引っ越す‥そして母の古里へ移り住むのだ。
事の発端は数ヶ月前に遡る。
◇◇◇◇◇◇
学校から帰って来た僕は母のただならぬ雰囲気に息をのんだ。
真っ青な顔
眼孔鋭く、怒りや哀しみを全身に溢れ出させた母の姿。
そのあまりに別人と化した母の姿に僕の脳裏に【鬼】の文字が浮かんだ。
目の奥に潜む恐ろしくも荒々しい黒々と光る何かを見てしまったからだ。
当日、僕は14歳。
そう‥子供だった。
母は、いつも優しく美しい人だった。
それなのに何が母を【鬼】に変えてしまったのだろう?
本当に【鬼】が存在しているなんて信じている訳ではない。
でも人は時に心に【鬼】を宿すのだと、おばあちゃんが話してくれたお伽話を思い出した。
そして僕は、はじめて人の心に潜む【鬼】の存在を垣間見て恐怖し怯えたのである。
数日後、母を変えた原因が父であることを知った。
誰も僕に事の真相を教えてくれなかったが子供ながらに二人の様子から察していた。
母さんと僕以外に父に守りたいと思う大切な存在が出来てしまったのだと幼いながらも理解した。
積み上げてきた大切だった時間も形も全て作り物だったみたいに簡単に崩れて散っていく。
そうして母が【鬼】に心を支配されてからというもの仲の良かった僕達、家族は壊れていった。