第6話 竜二頭!?

文字数 2,546文字

今日は子供達の学校の三者面談。

守ってくれていると言う竜との会話をしているものの、私の本業(?)は母親。

ちゃんとする事はしないとね。

三者面談の順番を待っている間、窓の外の空を見上げる。

きれいな青空のみが見える。当然、竜の姿などどこにもない。

この頃、竜の昔話を聞きながら、ふと考える。

あの竜にとって、私って何なのだろうと。

この私と言うのは、今、生きている「私」。

竜がせっせと、結婚してくれ! と言うお相手は「私」なのか、あの空間で共に過ごした「魂」なのか。

そもそも、あの「魂」と今の「私」は同じ存在なのか?

考えてもよく分からないので、あまり考えないようにしているが、こんな風にポカンと時間が出来た時は考えてしまう。

考えても、状況は変わらないんだけどね。

三者面談とやらは、終わったようだな。
ハイハイ、無事に何事もなく終えました。
まだ中学生だもんね。

受験とか入って来ると大変だなぁ。

まぁ、何処を受験するのも、どんな人生にしていくかも子供次第で、親は見守り、応援するしかないんだけどね。

何事もなく終わったけれど、やはり先生との話は緊張する。

やれやれと思いつつ、ベッドに入る。

ところで、二百年前に別れちゃうまで、あの空間で行ったり来たりしている私と一緒に居たわけ?
布団に潜り込んで、目を閉じると竜の気配が濃厚になる。

その竜に向かって聞いてみた。

ん?

いや、そうではない。

違うの?
うむ。

ある時な、気になっていたので聞いてみた。

何を?
あの空間に居た他の魂達はどこへ行ったのか、だな。
ああ、なるほど。

で? どこへ行ったの?

え? ん~~~と、あっちこっち……?
あっちこっち?
あっちこっち?

要は、わからないと言う事か?

え~~と、「地」とかぁ、「天」とかぁ、「地獄」とか?
ああ、なるほど。

つまりは、神様に呼ばれて行ってる先は「地」で、私が今いる「地上」ね。

で、「天」と「地獄」、どちらかに振り分けられちゃってると。

宗教的な観点からすると納得のいく答えだけど、どうして私は竜の元に戻って来てるわけ?

「天」にも「地獄」にも行けない落ちこぼれ?

おまえは、他の所には行かぬのか?

「地」は、器が壊れても居られるけれど、「地獄」は恐い所みたいだから、行きたくない。

「天」はいい所みたいだし、そこに行けば「人」になれるみたいだけど……。

「人」?
え、とね。

「地」で一番いい、上の器。

殆んどの魂は、その器に入りたくて頑張ってる。

頑張ってない魂も居るけど。「天」にも「地獄」にも行きたくないって、「地」でずっとウロウロしてる。

浮遊霊……て奴かしらね。
おまえは、「人」になりたくないのか?
「天」に行って、それまでやって来たことの評価を受けて、よくやったって評価されれば上の器に入れて、それを繰り返して最後は一番上の「人」になれるみたいだけど。

……その代わり、それまでの事は全部忘れちゃうって。

全部、忘れる?
うん、ここの事も全部。
そう言えば、話してた器の話しって、虫とか魚っぽいのばかりだったわよね。

と言う事は、魂の進歩なし!

考えたくないけれど魂の進歩より、ここに帰って寝る事を選んでたのか、私は。

それで?

それを聞いたからって、何?

ここに帰って来ている限り、「人」とやらにはなれぬようなのでな、結界を完全に閉じた。
結界を完全に閉じた?
それまでは、誰かに邪魔されねばいいだろう程度の結界を張っておったのだが、小さな魂も通さぬように強めに結界を張った。
つまりは、ザルだった結界を、コンクリートにしたわけね。

私、と言うかチビたい魂を思ってのこととはいえ、帰って来た時に入れなくてショックだったろうな。

まぁ、お陰でこうして「人」になれているんだから、感謝すべきなのよね。

それって、何年前の話し?
そうじゃなぁ、二千年ほど前になるか。
二千年!?

じゃ、二千年から二百年の間、何してたの?

あ~~その、なんだ。

結界を閉ざしたのはいいが、ちゃんと「人」とやらになれているかと気になってな。

「地」とやらに様子を見に行ってみた。

だがなぁ……。

何か問題でも?
「地」を見て回ったが、魂がうじゃうじゃと居て、さっぱり見つけられん!
ああ、そうかもねぇ。

その頃の人口が何人くらい居たのかわからないけれど、動物や虫や魚なんかにも魂があるとしたら、そりゃ数えきれないくらい居るわよねぇ。

確か、二百年探したって言ってたわよね。

それじゃ、そのうじゃうじゃと居る魂の中から見つけ出せたわけ?

せっせと探している時に、大御神にとっ捕まった!
大御神様に、とっ捕まった!?
ああ!

おまえの居る場所を教えてやる代わりに、ある条件を出してきおった!

あらま。
本当に、あの魂の居場所がわかるのか?
勿論!

わしはこの辺りの宇宙を統べし神じゃからな。

ちょっと胡散臭い……と思ったら、バチが当たるかしら。
それで、私には会えたの?
うむ。会えた。
あら、良かったじゃない。

さすがは大御神様ね。

で? 大御神様が出した条件って?

竜界の王になってくれ、だ。
竜界の王?
竜界の王? 

なんだ、それは?

困った事に、この近くの竜界で竜王の跡目争いをやっておってなぁ。

その争いを止め、その竜界の王となってくれ。

ああ?

争いを止めるのはいいが、何故に王とならねばならんのだ。

まぁまぁ。

王位争いで、竜界の中はボロボロでなぁ。そこを立て直し、竜界の機能を回復させた後、新たな王を決めるまでで良い。

我が勝手に決めていいのか。
無論じゃ。おまえが王じゃからな。
で、王になってやった。
アハハ~。

そんなに簡単に王になれるのねぇ。

我じゃからな。
はいはい。

とてつもなく、どえらく大きな神様ですからね。

これが、おまえの竜界の王になったいきさつだ。
え?

私の竜界?

あれ?

視線が私の後ろに向いてる?

竜が見えてるわけじゃないから目が見えてるわけでもないので、視線なんかも見えないんだけど、何となく私の後ろを見ている気がする、なんだけどね。

で、チラッと後ろの方に意識を向けてみた。

ゲゲゲ!!!

竜! 竜の気配がする!

勿論、前に居る銀色の竜じゃなくて、違う竜の気配!

はっきり見えてるわけじゃないけど、緑色っぽい。

私の思い込み? 勝手に想像してるだけ?

やれやれ、やっぱりばれましたか。

出来る限り、気配を消していたんですが。

うわぁ~~!!

妄想暴走!?

竜が二頭になっちゃった!!!

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登場人物紹介

子供二人を連れて離婚したオバサン。

一応、主人公。

いきなりトイレで現われるようになった竜

大御神に命ぜられて、主人公を守っている竜。

昔々、魂だった頃の主人公。

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