第5話 行き先

文字数 1,377文字

つまりはぁ。

長い間一緒に居たって言うのは、この空間のど真ん中と端っこに居たって事?

それを一緒に居たと言うのなら、だけどね。
いや、そうではない。
違うの。
うむ。しばらくして、そなたが居る場所を見たら、居なくなっていた。
は?

じゃ、一緒に居たって言うのは何?

ようやく、私も落ちこぼれじゃなくなったのね。

ちょっとホッとしたりして。

だが、もうしばらくして見ると、そこに居た。
なに、それ?
結局、落ちこぼれのままなわけ!?
我も不思議に思い、時々見ておったのだが、居なくなったり、戻って来たりを繰り返しておってな。
へぇ。
ちょっと腹が立って来たので、そなたがいつも寝る所に尻尾を置いてやった。
うわ! 意地悪!

ただ寝てるだけなのに。

帰って来た時に戸惑っておったが、少し離れた所で寝始めたのでな、払うように尻尾を動かしてやったら……。
ら?
居なくなっておった。
あ~、ついに嫌気がさして出て行ったのね。
我もそう思って、尻尾を引き寄せたら、その尻尾の毛に包まって気持ち良さげに寝ておった。
へ?
その余りにものほほんとした寝姿に毒気を抜かれてな。

仕方がないのでそのまま寝かせてやった。

ふぅん……て!

起きた時に、目の前に竜!!

おお!

それは面白い程に飛び上がって驚いておった!

うわぁ~~!

無責任、意地悪、悪趣味! の三拍子揃い踏みじゃない!

驚いた後に、どこかへ行こうとするのでな。
いつも寝てる所へ行こうとしたんじゃないの?
うむ、我もそう思ったのじゃが、全然違う方へ行こうとするのでな。

つい聞いていた。

どこへ行く?
え……? わかんない……。
なによ、それ?
声がするの。
声?
その声がする方に行くと、明るい所へ出るの。

でも、いつも違う場所だから……。

今回は、何処へ行くかわからぬのか。
うん。
誰の声かわかるのか?
ん……とね。

ここに連れて来た声……?

と言う事は、大御神様?
じゃな。
あらぁ~不機嫌な声ですこと。

前々から感じてたけれど、大御神様の事、あまり好きじゃないを通り越して、嫌いよね。

いきなりチビタイ魂を放り込まれたくらいで、心狭いわよ。

あ、呼んでる。

行かないと。

行かなくていい。
え?
あんな奴の言う事など、聞かずともよいわ。
え? それって、まずくない?
行かないと、消えちゃう。
ほらぁ。
消える?
うん。声の所へ行かないと消えちゃうって、みんな言ってた。
そうか……。

では、行くといい。

ん。
いつ、戻る?
はい?
あ~~いや、ついな、つい聞いてしまっていてな。
ふぅ~~~ん。
なんだかんだ言って、気にしてるんじゃん。
……わかんない。
それも、わからぬのか。
声の呼ぶ場所に行くと、何かの器に入るの。その器が壊れたらここに来れるの。

その器がいつ壊れるか……。

わからぬのか。
ん……。
行くといい……。
なにぃ? それじゃ、それから帰ってくる度に、尻尾に包まらせて寝させてあげてたわけ?
ん?

あ~~コホコホッ!

誤魔化し咳払いをする竜。

レアものだわね。

自分から尻尾に包まるようになったのは、相当時間が経ってからじゃがな。
何だか人の恋話を聞いてる感じがして、ちょっと恥ずかしかったりもしたりして。

その時の記憶は丸っきりないから、自分の事とは思えないわよね。

それから数千年間も、その空間に居たのかしらねぇ。

それに、二百年前に分かれる事になった事情も知りたかったりもするし。

と、思っていたら、その辺りの事情がわかった。

もう一匹の竜の登場で。

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登場人物紹介

子供二人を連れて離婚したオバサン。

一応、主人公。

いきなりトイレで現われるようになった竜

大御神に命ぜられて、主人公を守っている竜。

昔々、魂だった頃の主人公。

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