第1話 妄想
文字数 1,419文字
離婚した。
子供を二人連れて出て来た。
離婚理由は色々あるが、今さら言った所で離婚した事には変わりはない。
下の子が中学に入ったのを機に、しばらく厄介になっていた実家を出て、賃貸マンションに引っ越した。
少々狭いが、親子三人暮らして行くには十分だ。
子供達は、片親になった子にありがちないじけた所もなく、道を曲がりくねりそうな様子もない。今の所はだけど。
ただ、ちょっと困っていると言うか、悩んでいる事がある。
子供達を送り出し、あらかたの家事をすませると、ちょっと溜め息を吐きながらトイレに入った。
蓋を上げて、どっかと腰を降ろす。
だが、これが困ってる事でも悩みでもない。
実際に、目の前に現れると言うわけではない。
何となく、頭の中に竜っぽい姿が浮かび上がり、何となく頭の中でこんな事を言っている気がするのである。
星が入った球を集めると出て来る竜に似ている気がする。
色は銀色っぽい。
しかし、どうしてトイレなのよ!
自分に突っ込みつつ、私はトイレを出た。
私は覚悟を決めて、妄想竜に話しかけてみた。
手はせっせと窓拭きしつつ。
だからさっさと消えてくれ!