第3話 引きこもり

文字数 1,519文字

さて、どうしよう?

本当にオジサンの言う神様なのかしら?

だとしたら、無視し続けるのはヤバい?

神様に失礼を働いたら、祟られるかも?

いや、もう十分失礼な事をしてきてるけど。

問題は、『妻になってくれ』よね。

そこの所を無視すれば、守って下さっている有り難い神様となるのよ。

よし! そこをスルーして付き合おう!

日常の家事をこなしつつ、数日悩んでこう結論付けた。


誰かに相談でき話しじゃないものねぇ。

言ったら間違いなく病院に行けって言われちゃうわよ。

今日も今日とて、せっせと家事をすませてようやくベッドに入れる。

子供達は真面目に学校に通ってくれているし、これと言って問題もない。

あの竜が守ってくれているお陰?


寝るのか?

そうかそうか、寝るのか。

こうして、寝ようとすると嬉しそうにニッコニコ笑顔で言ってくるのも受け止めよう!
どうして、寝ようとすると、そんなに嬉しそうにするの?
ん?

それはじゃな、眠ると魂が身体から離れやすくなっての。

そうするとそなたとの距離が近くなるのじゃ。

それって、幽体離脱とか言うのじゃない?

あまり離れすぎるとヤバいとか聞いた事があるんだけど。

とにもかくにも、眠る前にストーカー竜(?)と話をする事が多くなった。
200年も探し続けてたのって、どうして?

200年前も、こんな風に守ってくれてたの?

んん?

200年前に、少々腹の立つ事情でそなたと別れることになってしまったが、そなたとはずいぶん長い間共におった。

長い間?

どれくらい?

そうじゃのぉ。

ずっと共に居たわけではないが……。

初めてそなたに会ったのは、数千年前になるかのぉ。

数千年前!?


この世界の時間観念からすると、4,5千年前になるか。
4,5千年前って!

縄文時代よ、縄文時代!

そんなころから一緒に!?

その頃って、竜と人間は一緒に居られたの?
……いや、会ったのは……この星ではない……。
なんか……歯切れが悪くない?
それじゃ、どこで会ったの?
まさか、火星とか木星とか言い出さないわよね。
ん~~~。我が作った空間じゃな。
あなたが作った空間!?
んむ。その頃我は何もかもが嫌になってなぁ。

自ら空間を作ってそこに居たのじゃ。

…………竜の引きこもり……?
そんな空間を作って引きこもっちゃうほど、嫌な事があったの?
……………………。
あ~~言いたくないなら……。
いや! 言いたくないわけでない。

…………忘れただけだ。

忘れた!?


よ、良いであろう!

忘れたものは、忘れたのだ!

4,5千年前だものねぇ。

忘れても仕方ないかも?

本当は言いたくないだけかもしれないし。

深くは聞かない方がいいわよね。

で、あなたが作った空間で、私はどうやってあなたに会えたの?

誰でも入れる空間だったとか?

まさか!

ちゃんと結界を張ってあったわ!

結界ですか。

普通の人間のオバサンには、よく分からないわ。

どんな空間だったのかしら。

ん?

ここじゃな。

ストーカー……もとい! 

守護してくれているらしい竜がそう言うと、広い広い空間が見えた。

実際に見えたわけじゃなくて、頭の中にそんな映像が浮かんできた。

広くて、何もない!

壁(?)は岩みたいな感じで、他は一切何もない。

その空間の中央に、大きな銀色の竜が座っていた。

広いけれど、何もないのね。
何か必要か?
ん~。そう聞かれると……。

竜が必要とするものって、何?

服は当然必要ないし、食べ物は……何を食べるんだろう?

一人……一頭? だから、部屋とかも要らないか。


私はここにどうやって来たの?
大御神がいきなり放り込んできた。
大御神って、この辺りの宇宙を統べているとかって神様よね。
どうしてそんな事を?
知らん!

我が聞きたい!

いきなり、山とチビたい魂を放り込んで来おったのじゃ!

もしかして、そのチビたい魂の一つが……私?
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登場人物紹介

子供二人を連れて離婚したオバサン。

一応、主人公。

いきなりトイレで現われるようになった竜

大御神に命ぜられて、主人公を守っている竜。

昔々、魂だった頃の主人公。

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