専業主婦ですが、なにか?

文字数 871文字

先日、私の二女のことを知る友人と話した。
彼女は皆がうらやむほどに、母としてもしっかり家庭を守りつつ、仕事も趣味も充実している人だった。

「あなたに負けやんように私も頑張るわ。あなたは私たちの中で一番頑張っとるやん、感心するよ。ほんとにすごいと思う。」

びっくりした。
私に負けないように?

そして彼女は、お子さんの不登校の話を泣きながら話し始めた。

その時思った。
”みんないろんなことを抱え、必死で生きている。
同窓会の場ではきっと、その中で一番楽しい話題を話しているだけなのかもしれない”と。

「実は私も・・」と、自分の抱えるしんどいことを話してくれる友だちが私のまわりには不思議と集まる。
「こんなときどうしたら?」と、聞いてくる友だちが後を絶たない。

それは、「しんどいこと」をたくさん経験した私になら、しんどいところを出してもいいし、聞いてもらいたいと、相手は思ってくれているのかもしれないと思った。

三人の子育ては、宝物のようなエピソードで溢れていた。
男の子も女の子も障害のある子も育てるなんてなかなかできない。

息ができなくなるほどつらかったことも、涙が止まらないほど人の優しさを感じたことも、100個や1000個のエッセイでは書ききれないほど経験してきた。

私の経験は、そう簡単には手に入らない。

自分の人生も悪くないのかもしれない。


専業主婦というものに、偏見を持っていたのは私だ。

さまざまな事情で、働きたくても働けない専業主婦もいる。
さまざまな事情で、仕事をしなければ生きていけない人もいる。

仕事をしているとかしていないとか、収入があるとかないとか、そこで人の価値を決めている自分の愚かさを恥ずかしく思った。

できるできないで価値を決めることが二女をどれほど傷つけて来たか、痛いほど感じて生きてきたはずなのに、私はとても浅はかだった。

自分で自分の肩をポンポンとたたいて、
『やっとわかったか、ばかだなあ。』
と言ってみた。

コロナが終息し、もしもまた同窓会があったら、娘のことを笑って話そう。
次は誰に聞かれても、専業主婦だと胸を張って言えるような気がしている。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み