同窓会

文字数 703文字

同窓会は疲れる。
帰ってくると一週間はへこむ。

「今、何やっとんの?」
「専業主婦やけど。」
「え?仕事辞めたん?いいご身分やなあ!めっちゃ楽しとるやん。」

何十年ぶりかの再会で、最初の会話はだいたいこんな感じになる。
退職の理由を説明すると、なんとなく場の雰囲気が暗くなりそうで、とりあえず笑顔で適当にごまかす。
でもわが家の事情を知る友人が「大丈夫?」という顔で私を見つめるので、結局は娘の話をすることになってしまう。

「娘に重い障害があってね。仕事を辞めるしかなかったん。」

必ず、相手は申し訳なさそうな表情に変わり、
「そうやったんやな、大変やな...」
と、しばらく沈黙の時間になる。

高校を卒業して30年経ち、同級生全体の同窓会があった。
それ以来、集まれる人だけでも集まろうと、定期的に同窓会の誘いが来るようになった。
ちょうど私たちの年齢は、子育てもひと段落して、少し時間のゆとりも持てる頃だ。

同級生たちはみな、バリバリに働いている。五十歳を超えればベテランの域だ。
バブル期に就職した人ばかりなので、一流と言われる企業に勤めている人が多い。
海外赴任経験者や職場の長も珍しくなく、旅行や趣味など、自分にお金も時間もかけている。

そんな話を聞いていると、毎日家にいるだけの自分の話などできなくなる。

そもそも同窓会に出席している人は、生活にゆとりがある人が多い気がする。
そんな中にわざわざ出向かなくてもよさそうなものだが、同じことの繰り返しのような日常からほんの少しでも自分を解放してあげたくて、つい参加をしてしまう。

たとえ後から劣等感でいっぱいになるとしても、少しだけ命に対して無責任な時間を過ごせるほうを選んでしまうのだ。
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