第4話

文字数 2,637文字

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遊園地といっても

地方都市なのでジェットコースターが

あるような大層な遊園地ではない。

敷地面積こそ広かったが

半分は植物園のように花壇ばかりで

アトラクションなんてものもまるでない

静かな遊園地だ。

乗り物も幼児が喜ぶものに毛のはえた程度。

そう言えばだいたい想像はつくだろう。

一番大掛かりなのは園の外周を回る

四人乗りのモノレール。

まあ、その程度の所だ。

ただ、

日曜日でもそれほど混むことはなかったし

おまけに家から車で十分ぐらいのところに

あるので、

以前から日曜日の家族サービスとして

重宝していた。

冬にしては暖かい日だった。

風もなかったし陽だまりにいると

コートなどいらないくらいだった。

遊園地に着くと僕らはメリーゴーランド、

観覧車、子供用のゴーカート、森の電車などと

お気に入りの乗り物を次々にまわった。

そのあと、ひと休みとランチを兼ねて

レストハウスに入った。

そこは特に変わりばえもしない

普通のカフェテラスなのだが、

僕は一面ガラス張りの造りが好きだった。

特に、日の短い冬の午後を

光の中で過ごせることに感謝した。

僕はお好み焼きを二人分とコーヒーを一杯

注文した。

妻は自分が食べるよりも

赤ちゃんにミルクをあげるのに忙しかった。

娘は一気にお好み焼きをほおばるものだから

例によって口の周りは

ソースでべちゃべちゃだ。

僕はゆっくりとタバコを吸い

コーヒーを飲んだ。

陽光の満ちたこのテラスのなかでは

体中に沈殿した疲労すら

心地よく感じられた。

明るく暖かいテラスは

自分のささやかな幸せを再確認するのに

最適だった。

「ねえ、このお好み焼きちょっと辛い。」

娘はそう言って僕のほうを振り向いた。

「じゃあ、このあとアイス食べようか」

僕がそう言うと、

娘は「やったあ」と両手を挙げて喜んだ。

娘は親戚中から

「この子は本当にネアカだね」

そう言われるほど明るい。

そして、

ひとつひとつの表現が

ややオーバーなくらいハッキリとしているので

いつも周囲を和ませる。

いわば、親戚中の人気者のような存在だった。

レストハウスはすいていたので

僕は家族の写真を撮ることにした。

僕のいつもの撮り方は

家族に自然に振舞わせて

少し離れたところでカメラを構え、

シャッターチャンスがくるたびに撮る

というものだ。

その日も隣の席でカメラを構えて

シャッターチャンスを狙った。

娘が品を作った瞬間。大笑いした瞬間。

赤ちゃんに向かい

お姉さんぶってなにやら説明している瞬間。

赤ちゃんが母親の目を見上げた瞬間。

妻が僕の方を向いた瞬間。

ずいぶん長いこと

レストハウスにいたのだろうか。

気がつくと日が傾いていた。

まだ、肝心のモノレールに

乗っていないことを思い出し、

四人でモノレールに乗ることにした。

小さな遊園地の外周を回るといっても、

そこそこの高さはあったので

モノレールの上からは

園の周りも良く見えた。

音楽にのって四人乗りの車が

モノレールの上を走る。

この辺りは海に面した住宅街なので

家並みの向こうには

西日を受けた海が広がっていた。

娘はまるで

遊園地という王国の王女様のように

満足げにあたりを見下ろしていた。


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ここからは、パソコン向けです

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遊園地といっても、地方都市なのでジェットコースターが

あるような大層な遊園地ではない。

敷地面積こそ広かったが半分は植物園のように花壇ばかりで

アトラクションなんてものもまるでない静かな遊園地だ。

乗り物も幼児が喜ぶものに毛のはえた程度。

そう言えばだいたい想像はつくだろう。

一番大掛かりなのは園の外周を回る四人乗りのモノレール。

まあ、その程度の所だ。

ただ、日曜日でもそれほど混むことはなかったし

おまけに家から車で十分ぐらいのところにあるので

以前から日曜日の家族サービスとして重宝していた。

冬にしては暖かい日だった。風もなかったし陽だまりにいると

コートなどいらないくらいだった。

遊園地に着くと僕らはメリーゴーランド、観覧車、子供用のゴーカート、

森の電車などとお気に入りの乗り物を次々にまわった。

そのあと、ひと休みとランチを兼ねてレストハウスに入った。

そこは特に変わりばえもしない普通のカフェテラスなのだが

僕は一面ガラス張りの造りが好きだった。

特に、日の短い冬の午後を光の中で過ごせることに感謝した。

僕はお好み焼きを二人分とコーヒーを一杯注文した。

妻は自分が食べるよりも赤ちゃんにミルクをあげるのに忙しかった。

娘は一気にお好み焼きをほおばるものだから

例によって口の周りはソースでべちゃべちゃだ。

僕はゆっくりとタバコを吸い、コーヒーを飲んだ。

陽光の満ちたこのテラスのなかでは、体中に沈殿した疲労すら

心地よく感じられた。

明るく暖かいテラスは自分のささやかな幸せを再確認するのに最適だった。

「ねえ、このお好み焼きちょっと辛い。」

娘はそう言って僕のほうを振り向いた。

「じゃあ、このあとアイス食べようか」

僕がそう言うと、娘は「やったあ」と両手を挙げて喜んだ。

娘は親戚中から

「この子は本当にネアカだね」

そう言われるほど明るい。

そして、ひとつひとつの表現がややオーバーなくらいハッキリとしているので

いつも周囲を和ませる。いわば、親戚中の人気者のような存在だった。

レストハウスはすいていたので、僕は家族の写真を撮ることにした。

僕のいつもの撮り方は、家族に自然に振舞わせて少し離れたところで

カメラを構え、シャッターチャンスがくるたびに撮るというものだ。

その日も隣の席でカメラを構えてシャッターチャンスを狙った。

娘が品を作った瞬間。大笑いした瞬間。赤ちゃんに向かい

お姉さんぶってなにやら説明している瞬間。

赤ちゃんが母親の目を見上げた瞬間。妻が僕の方を向いた瞬間。

ずいぶん長いことレストハウスにいたのだろうか。

気がつくと日が傾いていた。

まだ、肝心のモノレールに乗っていないことを思い出し

四人でモノレールに乗ることにした。

小さな遊園地の外周を回るといっても、そこそこの高さはあったので

モノレールの上からは園の周りも良く見えた。

音楽にのって四人乗りの車がモノレールの上を走る。

この辺りは海に面した住宅街なので、家並みの向こうには

西日を受けた海が広がっていた。

娘はまるで遊園地という王国の王女様のように満足げにあたりを見下ろしていた。
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