第3話

文字数 2,591文字

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翌朝十時ごろ僕は帰宅した。

精も根も尽き果てていた。

ドアを開けると四歳の娘が

「パパァー」

と言って抱きついてきた。

硬く凝り固まった胸が

いっぺんにときほぐれていく瞬間だ。

娘が僕の左のほっぺたに

アイスクリームだらけの唇で

ブチュっとキスをするものだから

僕はおもわず苦笑い。

そして、ただいまと言って娘を抱き上げた。

妻はそれを見てクスクス笑いながら

手早く目玉焼きを作り味噌汁を温めてくれた。

僕が朝ごはんを食べていると

娘は横の椅子にピョコンと腰かけ

大人のまねをしてほおづえをついた。

そして

僕が食事をしているのをじいっと見ている。

その視線を感じたので娘のほうに目をやると

「ね、パパ。」

「うん。なあに」

「エリカちゃんねえ、

このおしょくじつくるの、てつだったのよ」

ママが笑って言った

「お味噌汁をかき回してくれたのよねえ」

僕は少し驚いたふりをして

「そっかあ。

だから今日の味噌汁おいしいんだ。

エリカちゃんてすごいね。ありがと」

そのときちょうど一杯目のご飯が終わった。

娘はすかさず

「パパ、おかわりするでしょ」

と言って僕のほうに両手を出した。

お茶碗を渡すと

洗濯物をたたんでいる妻のほうに

トコトコ歩いていって

大きな声で

「パパがねえ、おかわりだってー」

妻は笑いながらご飯をよそうと

「はいはい。じゃ、ご飯よそったから

パパのところに持っていって」

娘がお茶碗を僕に渡したとき

隣の四畳半で寝ていた生後半年の息子が

むずかりだした。

娘はすかさずとんでいって

母親がするように

「いいこ、いいこ」

ポンポンと肩をたたきながらそう言った。

しかし、

そのかいもなく息子は泣き出してしまった。

すると今度は

「トモちゃん。

いいこだから、なかないのよ」

妻はあわてて洗濯物を脇の方にやると

息子の部屋に行って

「あら、しちゃったのかしら」

そう言うと

娘は赤ちゃんのおしめをはずして

「ああーっ。トモちゃんウンチしてるよー」

と大声でそう言った。

やれやれ、食べているときに

ウンチの話なんかするなよ

と思わず苦笑いしてしまった。

結婚して六年。

四歳になったばかりの娘と

六ヶ月の息子のいるこの平穏な家庭。

僕は医者としてはまだ駆けだしだったので

診療や研究で忙しかったが

このぬくもりのおかげで

ストレスがたまることもなく

仕事に没頭することができた。

二杯目のご飯を食べながら

「子供を連れてみんなで

いつもの遊園地にでも行こうかなあ」

だしぬけにそう言うと、妻は

「当直明けで大丈夫?」

と僕の体を気遣ってくれた。

「そうだなあ。でも、

先週まで学会発表の準備で忙しかったから

このところ家族で外出する機会が

なかったでしょ。

今日は天気もいいし

僕もストレス解消になるかもしれない」

ご飯の残りを食べながらしばらく考えてみた。

ストレス解消にもなるし

今夜はぐっすりと眠ることができるだろうし。

いいかもしれないな。

「よし決めた。行こう」

という僕の鶴の一声で

遊園地行きは決定した。

「わーい、やったあ」

と娘の喜ぶこと。

出かける準備はすぐに整い

さっそく出発となった。


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ここからは、パソコン向けです

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翌朝十時ごろ、僕は帰宅した。精も根も尽き果てていた。

ドアを開けると四歳の娘が

「パパァー」

と言って抱きついてきた。硬く凝り固まった胸がいっぺんに

ときほぐれていく瞬間だ。

娘が僕の左のほっぺたにアイスクリームだらけの唇で

ブチュっとキスをするものだから、僕はおもわず苦笑い。

そして、ただいまと言って娘を抱き上げた。

妻はそれを見てクスクス笑いながら

手早く目玉焼きを作り味噌汁を温めてくれた。

僕が朝ごはんを食べていると、娘は横の椅子にピョコンと腰かけ

大人のまねをしてほおづえをついた。

そして、僕が食事をしているのをじいっと見ている。

その視線を感じたので娘のほうに目をやると

「ね、パパ。」

「うん。なあに」

「エリカちゃんねえ、このおしょくじつくるの、てつだったのよ」

ママが笑って言った

「お味噌汁をかき回してくれたのよねえ」

僕は少し驚いたふりをして

「そっかあ。だから今日の味噌汁おいしいんだ。

エリカちゃんてすごいね。ありがと」

そのときちょうど一杯目のご飯が終わった。娘はすかさず

「パパ、おかわりするでしょ」

と言って僕のほうに両手を出した。お茶碗を渡すと

洗濯物をたたんでいる妻のほうにトコトコ歩いていって

大きな声で

「パパがねえ、おかわりだってー」

妻は笑いながらご飯をよそうと

「はいはい。じゃ、ご飯よそったからパパのところに持っていって」

娘がお茶碗を僕に渡したとき、隣の四畳半で寝ていた

生後半年の息子がむずかりだした。娘はすかさずとんでいって母親がするように

「いいこ、いいこ」

ポンポンと肩をたたきながらそう言った。

しかし、そのかいもなく息子は泣き出してしまった。すると今度は

「トモちゃん、いいこだから、なかないのよ」

妻はあわてて洗濯物を脇の方にやると息子の部屋に行って

「あら、しちゃったのかしら」

そういうと、娘は赤ちゃんのおしめをはずして

「ああーっ。トモちゃん、ウンチしてるよー」

と大声でそう言った。

やれやれ、食べているときにウンチの話なんかするなよ

と思わず苦笑いしてしまった。

結婚して六年。

四歳になったばかりの娘と六ヶ月の息子のいるこの平穏な家庭。

僕は医者としてはまだ駆けだしだったので診療や研究で忙しかったが

このぬくもりのおかげでストレスがたまることもなく

仕事に没頭することができた。

二杯目のご飯を食べながら

「子供を連れてみんなでいつもの遊園地にでも行こうかなあ」

だしぬけにそう言うと、妻は

「当直明けで大丈夫?」

と僕の体を気遣ってくれた。

「そうだなあ。でも、先週まで学会発表の準備で忙しかったから

このところ家族で外出する機会がなかったでしょ。

今日は天気もいいし僕もストレス解消になるかもしれない」

ご飯の残りを食べながらしばらく考えてみた。

ストレス解消にもなるし今夜はぐっすりと眠ることができるだろうし。

いいかもしれないな。

「よし決めた。行こう」

という僕の鶴の一声で、遊園地行きは決定した。

「わーい、やったあ」

と娘の喜ぶこと。

出かける準備はすぐに整い、さっそく出発となった。
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