第3話
文字数 515文字
しかし、一日一食に不満を覚えた国民は遂に暴動を起こした。
その怒りを鎮めるため、政府は従来のヘルメット型より小さいフルフェィスマスク型の『バーチャルランチ』を開発した。
軽くて機能的なバーチャルランチは全ての家庭に支給され、誰でも気軽に仮想体験が楽しめるようになった。
国民はさらに欲求を深めた。
数年後、機器同士を連動させるバーチャルデートの機能が開発され、人数を設定し、大勢で楽しめる「バーチャルコンパ」や「バーチャルパーティー」があちこちで開かれるようになった。
バーチャル体験は、国民の生活を明るく豊かにした。
世界の料理への関心は高まったが、料理という行為は忘れ去られた。
料理とは食べる物であり、作る物では無くなった。女性は家事から解放され趣味や稽古ごとに精を出した。
食の心配が無くなり、誰も働かなくなった。
政府はバーチャル文化の陰で食糧自給率をあげるための政策を密かに推し進めていたが、ある日突然、樹海のアポンFの原料が病気で枯れ、全滅した。
暴動を恐れた政府は応急措置として、毒にも薬にもならない植物のカスをアポンFと偽り、配給し続けた。
樹海を開墾し家畜を増産するのと国が滅亡するのと、どちらが早いか、政府は必死だった。