第4話

文字数 426文字

栄養の無いサプリを飲み続け思考力の無くなった人々はバーチャルで満たされているので何も気付かず、呑気に遊び暮らしていた。
痩せこけた腕で。水で膨らんだ腹で。
誰も働かない国は空気が淀みゴミに溢れ、腐臭が漂い始めた。
政府は、マスク型より更に小さな特殊眼鏡付きキャップ型マイコンカメラ『バーチャルケロッグ』を全国民に支給した。それには新たな機能が加えられていた。
仮想風景である。

誰も現実の風景を見ようとはせず、バーチャルケロッグを外さなくなっていた。
今日も栄養失調で、バタバタと人が倒れている。
でも、誰も気付かない。

『バーチャルケロッグ』は見目美しい風景を合成する。
「まあ、歩道が植込みだらけで歩きにくいわね。ツツジが良い香りだこと」

ある日、自分が倒れても、皆のケロッグでは美しい風景のひとつに変換されて映るだけだ。
そして、誰にも気付かれぬまま収容され、初めて役立つことが出来るのだ。

残された人口に見合うだけの食糧自給力を携えた新しいアポン国家の礎として……。

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