第2話 僕の考察 その一 ~『笑顔交換』と悪魔について~

文字数 7,819文字

- 僕の考察 その一 -

『笑顔交換』と〈悪魔〉について記述します。
 悪魔の証明は難しいです。姿が見えなければ、声が聞こえなければ、存在を確認できなければ、説明は出来ません。
―存在を確認出来て説明が出来れば、
存在を認知する事が出来れば―
難問ですが、不可能ではありません。
 悪魔は普通の人には見えません。自称-普通じゃない、幽霊や妖怪が見える、という人でも、僕と契約している悪魔は見えないかも知れません。悪魔が見える様になる為には、その悪魔との契約を結ぶ行為、『笑顔交換』が必要です。契約は悪魔から一方的に交わされます。それまで悪魔は見えません。契約の手続き中と、更新中、契約締結後から見える様になります。契約対象は小さい子供、具体的には、八歳までの小児。周りに誰も()らず、部屋に独りの時だけ、姿を見せます。例外はありません。
僕を契約者B、友人Aを契約者Aと表記し、
『笑顔交換』の説明をします。

 蛇の悪魔X{指輪Aを受け取り、
    ↑     指輪Xを贈る}
『 笑 顔 交 換 』{指輪の交換を行う}
    ↓
 友人A(契約者A)
      {指輪Aを差し出し、
          指輪Xを貰う}

 最初の契約で悪魔と契約者が1つずつ、指輪を使用します。新しく購入、入手した指輪でも契約は可能ですが、悪魔は銀をなるべく忌避(きひ)します。指輪の大きさ程度の銀では、悪魔は死なないので、価値を優先し妥協する事もあるそうですが。また、事前に身辺の調査をしている様で、銀以外の指輪を要求する場合もあります。玩具やお菓子で契約を持ち掛け、指輪を要求し、交換したら契約の一次手続き終了です。契約期間は不明です。
 指輪は、人間の価値観でも、高価であれば悪魔の機嫌が良いですが、悪魔にとって不利益な条件になる事があるのか、悪魔の機嫌次第で、契約の破棄、更新も中断、契約者は悪魔の姿が見えなくなり、悪魔を忘れます。その際、それまでの記憶を奪われます。六歳で契約し、二十六歳で契約を破棄された場合、二十年の記憶を奪われ、二十六歳の身体に六歳までの記憶だけが残り、それからの人生を送る事になります。もし急に、幼児退行したような人がいたら、契約者、だったのかも知れません。が、よほどの事が無い限り、契約の破棄はされません。
 悪魔は、所持者の指輪から血統-過去を視る事ができ、子々孫々に受け継がれるはずの、未来を視る事ができ、それから得られる利益を目算し、その場で契約更新を要求します。
 例えば、飴一つ、を対価として。
飴を受け取れば契約更新を承諾した事になり、悪魔との契約は継続されます。更新の拒否は出来ません。更新後の契約期間も不明です。
 悪魔の興味は、契約者の価値、覗き見た過去と未来から得られる、利益になります。
 まとめると、悪魔は読み書きを覚え始める頃の子供の前に姿を現し、菓子で契約を持ち掛け、指輪の交換、御礼の菓子を受け取れば契約を承諾したことになり、悪魔は受け取った指輪から契約者の過去と未来を覗き視て、利益を目算、更に契約の条件を変更、追加の菓子で更新を要求し、受け取れば承諾、契約手続き完了です。
 菓子と記述しましたが、契約者の欲しいものを差し出します。仮に1億ドル欲しいと、五~六歳の子供が思っていたら、一億(ドル)を用意するでしょう。その際、世界のどこかで一億$が喪失します。悪魔も魔法でお金を造り出す訳ではないので、有る場所から奪い、契約の対価、もしくは御礼として差し出します。奪う方法は分かりません。
 ― 僕が戴いた菓子や飴も、世界のどこか、誰かから、奪ったモノかも知れません ―
 もしお金を、家族や周りの人に発見され、事情を説明しても信じてもらえないでしょう、子供の証言では、なおのこと。悪魔の証明が必要です。お金を押収され、紛失した一億$と照合、返却されなければ、契約者は無報酬(タダ)で契約した事になりますが、悪魔は何も損失しません。仮に一億$が戻り、社会は契約者(子供)に事情を聴き、悪魔の存在を信じてもらえず・・・と、契約者は時間を奪われる事になりますが、悪魔に不利益はありません。
 悪魔の利益は、契約者の過去と未来、いつでも記憶を奪える事、それで得る、何か。契約者は、いつか-いつでも人生を奪われるという不安と恐怖が付き(まと)います。しかし、契約者の記憶を奪う事は、悪魔にとって最終手段であり、それ以上の利益を得られないので、行いません。酷く理不尽な存在ですが、悪魔と交わす契約は絶対です。不誠実で、契約内容について話さないことが多いですが、悪魔はルールに従って行動します。
 悪魔と契約に関連する情報から、悪魔のルールを推察することが出来ます。
 契約者の過去-未来の価値が高いほど、契約内容の開示要求が出来ます。要求に対して悪魔は、内容を開示しなければならないですが、どうでもいい内容しか話しません。これは僕の予測で、正確な内容は不明ですが、重要と思われる契約内容の一項を記述します。
 ― 未来や過去が変わる言動で、契約者と悪魔が不利益になる場合、
契約内容を開示しなくても良い ―
 未来や過去に関わる契約内容は、重要です。そこに悪魔の利益の目算があるので、情報を与える事に慎重であり、過去や未来が変わる発言-契約内容の開示は絶対しません。はぐらかされるか、要求は拒否されます。
 契約者の契約後の利益は、魔術が使用でき、契約した悪魔のみの姿が見え、声を聞くことが出来る事です。―魔術については後述しますが― 結局、自分のみが認識できるだけなので、まだ悪魔の証明は出来ません。妄想と思われるでしょう。もう一度、別の悪魔と契約する必要があります。最初の悪魔と交換した指輪で、もう一門の悪魔と『笑顔交換』を行います。二度目の『笑顔交換』で最初の指輪を手放す事になります。

 {指輪YBと交換}蛇の悪魔X
   ↑    ↑
   |  『笑顔交換』
   |    ↓
   | 契約者A{指輪BYと交換}
   |       ↑
  『 笑 顔 交 換 』
   ↓       |
 契約者B{指輪AXと交換}
  ↑        |
『笑顔交換』     |
  ↓        ↓
蝙蝠の悪魔Y{指輪BYとXAを交換}

 悪魔と契約者間の指輪交換を『笑顔交換』と呼称します。契約者Aは悪魔Xと指輪を交換、経緯としてXAの指輪と表記します、悪魔Yと交換する際、契約者Bを経由した指輪BYを受け取るという図です。受け取った後、所持している指輪は[BYA]となります。悪魔Yに渡した指輪XAは[XAY]の指輪になります。
この相互交換で契約者Aは悪魔Yを知り、契約者Bの存在を知り、悪魔Yの姿を見る事、声を聞く事が出来、他に悪魔が存在する事を知ります。僕Bは悪魔Xと指輪を交換し、指輪[AXB]を所持する事で、悪魔Xと契約者Aを知る事が出来ます。
― 仮にAとBに面識が無く、それぞれ離れた場所で『笑顔交換』を行っても、お互いの契約者と悪魔を知る事が出来ます ―
 契約者はお互いの悪魔を認知する事で、自分が見聞きしている悪魔が妄想ではないと確信する事が出来ます。しかし、契約者間でしか、悪魔の存在を知る事が出来ないのであれば、第三者に説明しても、やはり証明は出来ません。
 冒頭で、―証明は難しいが不可能ではない―と記しましたが、悪魔の証明の為だけに、悪魔と関わるべきではありません。記憶を奪われてもいい、人生や財産を失ってもいい、と自暴自棄になってでも知りたい人に、悪魔は興味を持たないかもしれませんが、大人になってから悪魔に逢うという例外は、有るかもしれません。その時、悪魔が何を差し出すか、誘惑に負けず拒否できるか、誘惑に負けて、記憶や財産を奪われる事になるのか、子々孫々と悪魔が憑き、代々不幸な目に遭うのか、死後、地獄に堕ちるのか、魂を奪われるのか、何もわかりません。
 悪魔と関わってしまった僕の課題は『笑顔交換』を行った人物、契約者と1人でも多く接触し、継続して交流する事、情報の交換を通して悪魔を知る事です。現時点で契約者の人数、悪魔の規模は全く不明です。
 友人Aが契約者だった事は偶然か?
他にも身近な人に契約者はいるのか、
 契約者を発見、判別する方法はあるのか、

   記憶を失わずに、
     契約を解除する方法は、
       あるのか?


        「ありませんよ?」


 ―悪魔について記述します。
 悪魔を見る事が可能でも、悪魔はあまり姿を現そうとはしません、悪魔の気分次第です。悪魔Xは蛇の悪魔を自称していますが、Aが見た悪魔Xは、“長い髪がムカデになっている、上半身だけの裸婦画のような姿”だそうです。僕も契約時に確認しました。パッと姿を現し、指輪を手渡しで交換し、すぐに黒く徐々に薄く消えて、見えなくなりました。恥ずかしがり屋さんなのかもしれません。友人Aの説明と『笑顔交換』だけでも理解できましたが、下手な・・・拙い絵を描いてもらい、恐らくAが見ているXと、僕が見たXに大きな違いは無いと思います。声も聴きました、無表情ですがどこか哀しそうな顔で
{・・・よろしく、お願い、いたします・・・} と、丁寧に挨拶を戴きました。Aによると
「緊張したみたい」とのことで、やっぱり恥ずかしがり屋さんのようです。
 お互いの悪魔と仮契約した後、[とぐろを巻いた蛇の悪魔]になっていたそうで、悪魔の利益が増えた分の報酬として、恐らく蛇の悪魔Xの、本来の姿に関する情報が友人Aに開示されたようです。
「見た目変わってないんだけど」と言っていたので、僕も確認すべく
「姿を見せて」と言うと、パッと現しスーッと黒く消えて、やっぱり同じ姿でした。もう一度、僕が見た名称は[蛇の悪魔]のままでしたが、何故か、腕で胸を隠すようにし、顔を背け、頬をうっすらと赤く染めていました。その姿に僕の方も顔が熱くなり、
「なに照れてんだよ」と言われてしまいました。僕に言ったのか、悪魔に言ったのか・・・僕と蝙蝠の悪魔Yの間では、特に何もありませんでした。
 二度目の『笑顔交換』で重要なのは、蝙蝠の悪魔Yが蛇の悪魔Xの存在を、XがYを、と、お互いを認識する事のようです。悪魔は、相手の悪魔の本来の名称、どちらがより強いか、立場、どこの異世界の悪魔か、などが判ります。
― もし、対立する悪魔だとしても、直接の交流-交渉をしなくて済む、という仕組みでもあります ―
 僕と蝙蝠の悪魔Yとの会話を記述します。
「初めて聞く名、初めて見る姿でちょっと面白いです。吾の界に同じような属の魔は存じませんので、異なる界の魔でしょう」
「髪がムカデの・・・裸、の女性だった?」
「イイエ、とぐろを巻いた蛇の姿でした、魔には魔の術の効は薄いです、恐らく死んだ人の女が霊に成り、百足の呪いで蛇の魔に化したんでしょうか?その百足の女の姿も幻ではなく、人が見える正の姿なのでは?そして、まだ弱い生りたての魔なので、此方(こち)らの利益が少なく、契約の開示ができる程ではなかったんでしょう、残念でしたね?」
「幽霊はいるの?」
「さあ?予想で言ってみただけなので?魔も霊を視認する事が出来ません、契約で其を通して世を覗き見て、立ち聞きするのみです」
「・・・なんかよく喋るね?」
「この会話自体が、件の『笑顔交換』で其が得られる利、ですかね?例えば、蛇の悪魔の名が禁ですね、魔は他の魔の害になる情報を契約者に与えません。魔は『笑顔交換』で知り合った魔の情報を売りません。仮に売ったとしても、別の界の魔なので、値はありません。吾の属、吾の界で人と契約を交わしている魔は、他に3門在りますが、異界の魔を存じている門はいないでしょう、吾が初めてです、稀なことですね、有難う御座います」
「う?うん、どういたしまして?」蝙蝠の悪魔が嬉しそうに礼を述べたので、かなり驚きました。慇懃無礼で不誠実だが、契約者に嘘は吐かない(?)・・・悪魔にとって、未知の存在を知る事も喜びの一つ、なのかもしれません。
 そして、友人Aに蝙蝠の悪魔Yについて聞きました。
「や、姿は黒い霧っぽい(もや)っぽくて分かんなかった、そこから出てきた手?に指輪を渡して、指輪を受け取って終わり。特に声は聴いてない、シャイなの?」・・・僕とはお喋りなくらいだけど・・・守秘義務なのか、人見知りではないな、秘密主義なのか、と考えていたら、
()の方は吾の苦手な(タイプ)、陽キャですね、油断したら思わず秘を洩らして、情報を与えてしまいそうです。なかなかの人タラシかと思いますよ、良きご友人をお持ちですね」とのこと、
・・・そんなら僕は陰キャか・・・?
 僕が蝙蝠の悪魔Yに渡した、形見の指輪は契約者Aに渡ったが、手放しても良いのか?と聞いたら、
「指輪の価値に意味はありません、所謂(いわゆる)、布教活動みたいなモノです。其から戴いた指輪に、吾の呪/護を付与してA氏に渡す、A氏と吾に繋がりが出来ます、A氏に吾を知ってもらえた分、吾の利が増します、ええ、微々たるモノですが。阿方(あがた)、人の婚姻とは違い、連絡先の交換や名刺交換に近いですかね、プリクラの交換の方が分かりますか?」
・・・まあ、僕もプリクラした経験はあるが・・・
 婚姻という言葉で気付いてしまった、元は僕が所持していた指輪がAに渡り、Aが所持していた指輪は、悪魔X経由で、今、僕の指に()まっている・・・
「なんか結婚式の指輪交換みたいだね?あっははは」と、Aは照れ隠しに笑っていた。意識しすぎるのもどうかと思ったけど、一応、薬指以外に嵌めよう・・・
蝙蝠の悪魔Yはニヤニヤしていて、蛇の悪魔Xは無表情だが、両手で口を覆うようにして、キラキラと目を輝かせている様に見える。悪魔にも恋愛感情が有るのだろうか?
「魔に恋や愛、情けはありません、人は面白いなと、他意はありませんよ?」とニヤニヤ。・・・蛇の悪魔は、なにやら落ち着かない様子である・・・
「おばあちゃんの形見なんだって?」
「・・・うん」
「ふーん・・・じゃあ、無くさない様に大事にするね!フフーン♪」
・・・
・・・惚れてしまいそうです。
・・・
後日、Aは偶然知り合った他の契約者と『笑顔交換』したそうです。蝙蝠の悪魔は相変わらずニヤニヤしていましたが、悪魔達はこの未来を視ていたのかもしれません・・・
 Aに交換した指輪について聞きました。
「ん、その指輪?さあ?道に落ちてて拾ったモノだよ、価値とか知らんし」・・・まず、交番に落とし物で届けてみては?
 蛇の悪魔Xにも話を聞きました?ボソボソと、
{お気に、召さなければ、他の指輪と、交換、出来ます、如何でしょう・・・?}と暗い顔に泣きそうな目で・・・いや、目にたっぷり(なみだ)をためて、申し訳なさそうに。しかし、今のはどういう意味?
{最初に、悪魔が、契約者に渡す指輪は、悪魔の体毛や爪、体の一部で、造ります・・・そちらの方が、いいですか?交換、しますか・・・?}と、プルプル震えながら聞いてきた。いやいや、気に入らないから交換したいわけじゃなくて、なんか僕がハラスメントしているみたいじゃないかと思っていたら、
「泣かした、サイテー、甲斐性ナシ」
此方(こなた)は女泣かせですか?罪な人ですね、地獄行き確定です、衆合(しゅごう)地獄で悔い改めるといいでしょう」
・・・コイツら面白がってるよな?悪魔に悔い改めろ、なんて言われてたまるか#・・・別の指輪との交換は丁重にお断りし、
「ありがたく頂戴します」と御礼を述べ、蛇の悪魔はペコリとお辞儀をしたままスーッと消えました・・・恐らく、さっきのやりとりで、僕が気分を害したと思い、気を遣って申し出たのだろう、心優しいというか、思いやりがあるというか、本当に悪魔なのだろうか、天使のようである・・・いや、聖母かもしれない・・・
 いやいやいや?そんな事じゃなくて、
と、蝙蝠の悪魔が
「其が聞きたかった事は、呪/護、についてですね?」
「そそ、どんな効果があるの?」
「少し凶になります」
「え?凶って?不幸になるって事?マジで?」
「お会計で一円、1(セント)足りなくて困るとか?」
「何それ、しょうもな・・・」
(たわむ)れです」
「・・・#」
「魔力の微増が期待できます」
「微増とは?具体的な数値でいくつ?」
「1.88967%ですね」
「・・・ん?やっぱりしょうもないじゃん?
百あっても付加で約二・・・じゃ本当に微小じゃん・・・」
「微小と微笑を掛けているという説もあります」
「駄洒落じゃん・・・?」
「『笑顔交換』の由来と()われています」
「・・・なるほど?」
「魔は布教が出来て嬉しい、契約者は友が出来て嬉しい、という事です、悪い気はしないでしょう?」
「・・・まあ」・・・言いくるめられている、もしくは重要な部分を、はぐらかしている様にも感じるが、
「其の素直じゃない所も嫌いじゃありませんよ?
今後とも宜しくお願いします」
「どーも、こちらこそよろしく・・」
 相手は悪魔だ、不誠実で理不尽で、信用、信頼は契約次第、過去はともかく、未来や弱みを握られている、付き合い方を間違えないようにしないと、
「記憶を奪ったトコロで、買い手がいないんですよね、良い質屋を知っていますか?」
・・・心を読んだのかもしれない
・・・知らないし、買い手がいないなら返せや。
「戯れですよ?くくくフフフ・・・」
何やら、ご機嫌よろしい様子でした。
言葉遣いが乱れました、失礼しました。
 僕は友人Aに出会うまで、蝙蝠の悪魔Yは僕の妄想なのではないかと、ずっと思い悩んでいました。両親が仕事で忙しい時、読み書きや勉強、社会の常識を教えてくれたのは、悪魔です。感謝はしています。
「礼には及びませんよ?人も魔も、学があればある程、利、になりますからね?」君に利益はあるの?と聞いたら、
「出世払いで頼みますよ?(笑)そこ、式が違います、解までやりますよ」・・・無料(タダ)-ロハでしているわけでは無いようです。
しかし、(異形な見た目に反して)思ったより面倒見が良いというか、万能というか?
「契約者の利は、吾の益になります。吾の害は契約者の凶になります、他の魔の考えは知り得ませんが、其の幸を考える事が、吾の利になると信じています、そこ、字は雑に書かない、1と2と7、6と0と9、しとレ、つとフ、シとツ、ソとン、出来るまでです」
・・・結構、厳しく教鞭を戴きました。
 契約を結んだ悪魔は一蓮托生、もしくは呉越同舟なのか、一生を付き合っていかなければなりません。契約の破棄は、今までの記憶を奪われるので、死ぬも同然です、もし、失った記憶の分の人生を、長い時間を掛けてやり直したとき、隣に誰かいるでしょうか。理不尽で不誠実でも、僕の初めての友人です。そして、悪魔にとって契約者だけが、人間社会と異世界をまたいで交流できる存在になります。人間の敵が、孤独だとしたら、悪魔はその弱みにつけ入る詐欺師でしょうか?
「考え事ですか?手が止まってますよ?そこまで終わったら、おやつにしましょう、其の好きなドーナッツを用意してありますよ?」
・・・少なくとも虫歯には気をつけたいです。
 ―ちなみにそのドーナッツは、僕がお金を渡してちゃんと購入したものです。悪魔は条件付きで短時間、人間に変身できるそうです―

 魔術、魔術師、については後の機会に記述します。
ご拝読、ありがとうございました。

僕の考察 その一 了
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登場人物紹介

ぼくb(子供時代) 六歳の時に悪魔と契約を交わす(一話)

蝙蝠(コウモリ)の悪魔Y

僕B(学生)

友人A(学生)

蛇の悪魔X(女性?)

あたしa(友人Aの子供時代)

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