イチイの種には毒がある

文字数 1,891文字

 約十ヶ月振りにノベルデイズに戻ってきて、二ヶ月が経過したところです。つまり、こちらでの活動を一度休止したのが約一年前……。
 その後は、主にnoteで遊んでおりましたが、基本的には過去作の整理がメインでして、時々イラストを描いたり料理の日記を書いたりしつつ、「54字の物語」だけはコツコツと書いておりました。
 肝心の小説は、noteのお遊びイベントで時々書いておりましたが、本腰を入れて書いたのは僅か数作のみです。長編にいたっては、もう何年も書いていない気がします。

 そんな中、コンスタントにずっと書き続けている唯一のジャンルが、エッセイです。と言っても、そこまで真剣に向き合って書いているわけでもなく、なにか思い付いた時に、思い付くままに書き綴るだけで、日記とか雑記に違い「殴り書き」のようなスタイルの雑文です。
 でも、色々と事情があり、この「雑文」をnoteやその他のプラットフォームに書き残すことに少し抵抗を感じるようになり、「54字の物語」も書き残す場所が欲しかったので、色々と思い悩むこともありましたが、ノベルデイズに戻ってきた次第です。

 ということで、ごく簡単に自己紹介させていただきます。と言っても、名前にまつわる話だけですけど。
 私のペンネームは、この数年はずっと「櫟茉莉花」を使っております。苗字の「櫟」も名前の「茉莉花」も、私なりの思いを込めているのですが、残念なことにどちらも読み方を本当によく間違えられます。
 まず、名前の「茉莉花」ですが、よく「マリカ」と呼ばれます。正直なところ、所詮はペンネームですのでどちらでもいいのですけど、由来はお花の「ジャスミン」でして、その正式な和名が「マツリカ(茉莉花)」ですので、やはり「マツリカ」で通したいと思います。
 つまり、「櫟マツリカ」です。

 苗字の「櫟」も、基本的にパッと見て読める人は少ないでしょう。もし、ご存知の方がいらしても、「クヌギ」と読む人が多いようです。一度だけ、「ユズリハ」と呼ばれたこともありますが、「ユズリハ」は「木へんに葉」ですので、漢字そのものが違います。
 でも、「クヌギ」は確かに「櫟」と書きます。クヌギの木と言えばカブトムシが集まる木で、大きな団栗の成る広葉樹ですが……実は、「櫟」と書いて「イチイ」とも読むのです。で、私のペンネームは「イチイ」なのです。
 イチイってなんやねん! と思う方もいらっしゃるでしょうけど、「イチイの木」というのも実在するのです。お察しの通り、「イチイの木」から付けた名前なのですが、面白いことに、この「イチイの木」は針葉樹でして、「クヌギ」とは似ても似つかぬ全く違う木なのです。
 何故、ややこしいのに同じ漢字を使うのか不思議なのですが、見た目も種別も櫟は櫟とは全く違う木で、櫟は櫟みたいに団栗は成らないし、櫟のようにカブトムシも寄って来ないでしょう。櫟は針葉樹なので、見た目はトウヒとかヒノキに似た感じの木なのです。ね、ややこしいでしょ?

 では、何故、こんなマニアックな木をペンネームにしたのか……ですが、実はほんの一時期ですけど、趣味で木工彫刻を嗜んでいた時期があり、色んな木材で色んな作品(駄作)を(遊びで)作っていたのですが、その時に一番好きだった木材がイチイだったのです。硬いけど硬過ぎず、加工し易く、でもすごく繊細で、赤みがかった色合いも良く、変形しにくく、割れにくく、独特の雰囲気があるのです。
 それに、イチイは団栗と違って真っ赤な実が成る木ですが、これがなかなか甘酸っぱくて美味しいのです。滅多に口にする機会はないでしょうけど、一部の地域では「オンコ」とも呼ばれ、今でもジャムや果実酒として利用されています。

 しかし、気を付けないといけないことに、実は食べられても、種にはなかなかの毒があるのです。「タキシン」というアルカロイドが含まれており、摂取量によっては呼吸困難を引き起こし、最悪の場合は死に至る可能性もあるそうです。
 この「毒性」も、(不謹慎かもしれませんが)ペンネームに使っている理由の一つでもあります。と言いますのも、私も結構「毒のある」文章を好んで書いているからです。「54字の物語」なんて典型的ですが、エッセイもなかなか毒を孕ませております。

 というわけで、このエッセイ集のタイトルは「イチイの種には毒がある」にしました。
 多分、果肉の部分は美味しく感じる人もいる(はず!)ですので、どうか、表面を軽く味わう程度にとどめ、種までは飲み込まないように慎重にお楽しみいただければと思います。

 でも、念の為、解毒剤も用意してください。



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