第21話 ダンスに生き甲斐を感じて
文字数 1,519文字
夕香は、仕事をしながら久しぶりにダンスを習うことが嬉しかった。
今までに何をするにも気乗りがしなかったが、街で偶然に見つけたダンス・スタジオで入会することができた。
家に帰ると、母が待っていた。
「あら、夕香、どうしたの、何か良いことがあったのかしら?」
いつもとは違う雰囲気の娘に母は気がついていた。
「そうよ、お母さん、私ね……またダンスを始めることにしたの」
「そうなの、まあ何でも若いうちに楽しんでおいで」
「はぁい」
夕香の母は、夕香が病院での勤務に疲れたと言って、そこを辞めたときには心配をしていた。そのことを思うと、明るさを取り戻した娘にほっとした。
夕香はさっそく自分の部屋に戻ると、箱の中にしまっておいたダンスシューズとコスチュームを取り出し、それを身に付けた。
「よかった、これを捨てないで、これからまた頑張ってみよう」
彼女はそう思うと、気持ちが弾んでいた。
そして、竜也という青年に再び巡り会えたことが嬉しかった。
あれから数日が経った。そこはあのダンス・スタジオの中である。
日が暮れる頃になると、ダンスを愛する人達が集まってくる。
仕事を終えてやってきたサラリーマンや、OL、学生など様々な人達だ。
この広い空間にはカップルや、友達、単独で来る人などがいる。
カップルを組んでいる男女は、お互いのステップをさらに高めようと張り切っている。
単独できている男女は、一人でステップを学習しているが、その中でもお互いに声を掛け合ってレッスンに励んで人もいる。
特に熟練者はそんな人達に教えていることもある。
ここでは誰でも相手が了承すれば、踊ることが出来る。
しかし、カップルになっている相手には誘いにくい。
夕香は仕事が終わった後で再びそこを訪れていた。
ロッカーでダンスのコスチュームに着替え、自分のダンスシューズを履いた。やはり借り物で無く自分のものは気持ちが落ち着いてくる。
部屋の中では、オーナーの深山暁代がかけたダンスミュージックが流れている。
皆、それぞれに踊る前には準備体操をする。
ダンスをしなやかに踊るには、このことを欠かせない。
充分に身体をほぐしてでなければ、怪我をすることもあるからだ。
夕香がきたときには、すでに何人かの人達は準備を終えて踊っている。
ここは、一般的なサークルのクラブと違い、同じ時間に集まって教師に同じステップを習うのではない。
彼等は決まった相手と、それぞれに好きなようにダンスを楽しんでいた。
ゆえに早めに来て、踊って帰る人もいれば、最後まで、自分を極めるために励んでいる人もいる。
夕香はそのダンス・スタジオに入会してから1ヵ月ほどが経っていた。以前に習っていたこともあり、彼女の上達は早かった。
夕香の相手をしているのはどうやら竜也のようである。
竜也がその日に夕香に教えているのはスローのようだ。
「夕香さん、今日もスローを練習しましょうか」
「はい、よろしくお願いします、でもいつも私に教えてくれていますが、こんな私でよろしいのですか?」
夕香はここに通ってから、少しずつここの雰囲気にも慣れてきていた。その中で竜也は以前には彩香とよく踊っていたことを耳にして、それが気になっていたからである。
「ああ、彩香さんとのことですね、確かに彼女とはよく踊っていましたがそれはそれで、僕は誰にも束縛されたくなく、誰とでも踊るんです。彼女とは特別にカップルを組んでいるわけではないし」
「分りました、余計なことを聞いてすみません」
「いえ、それでは踊りましょうか」
「よろしくお願いします」
フロアでは、すでに何組かの男女がそれぞれに踊っていた。
竜也と夕香の二人はその中に入っていった。
今までに何をするにも気乗りがしなかったが、街で偶然に見つけたダンス・スタジオで入会することができた。
家に帰ると、母が待っていた。
「あら、夕香、どうしたの、何か良いことがあったのかしら?」
いつもとは違う雰囲気の娘に母は気がついていた。
「そうよ、お母さん、私ね……またダンスを始めることにしたの」
「そうなの、まあ何でも若いうちに楽しんでおいで」
「はぁい」
夕香の母は、夕香が病院での勤務に疲れたと言って、そこを辞めたときには心配をしていた。そのことを思うと、明るさを取り戻した娘にほっとした。
夕香はさっそく自分の部屋に戻ると、箱の中にしまっておいたダンスシューズとコスチュームを取り出し、それを身に付けた。
「よかった、これを捨てないで、これからまた頑張ってみよう」
彼女はそう思うと、気持ちが弾んでいた。
そして、竜也という青年に再び巡り会えたことが嬉しかった。
あれから数日が経った。そこはあのダンス・スタジオの中である。
日が暮れる頃になると、ダンスを愛する人達が集まってくる。
仕事を終えてやってきたサラリーマンや、OL、学生など様々な人達だ。
この広い空間にはカップルや、友達、単独で来る人などがいる。
カップルを組んでいる男女は、お互いのステップをさらに高めようと張り切っている。
単独できている男女は、一人でステップを学習しているが、その中でもお互いに声を掛け合ってレッスンに励んで人もいる。
特に熟練者はそんな人達に教えていることもある。
ここでは誰でも相手が了承すれば、踊ることが出来る。
しかし、カップルになっている相手には誘いにくい。
夕香は仕事が終わった後で再びそこを訪れていた。
ロッカーでダンスのコスチュームに着替え、自分のダンスシューズを履いた。やはり借り物で無く自分のものは気持ちが落ち着いてくる。
部屋の中では、オーナーの深山暁代がかけたダンスミュージックが流れている。
皆、それぞれに踊る前には準備体操をする。
ダンスをしなやかに踊るには、このことを欠かせない。
充分に身体をほぐしてでなければ、怪我をすることもあるからだ。
夕香がきたときには、すでに何人かの人達は準備を終えて踊っている。
ここは、一般的なサークルのクラブと違い、同じ時間に集まって教師に同じステップを習うのではない。
彼等は決まった相手と、それぞれに好きなようにダンスを楽しんでいた。
ゆえに早めに来て、踊って帰る人もいれば、最後まで、自分を極めるために励んでいる人もいる。
夕香はそのダンス・スタジオに入会してから1ヵ月ほどが経っていた。以前に習っていたこともあり、彼女の上達は早かった。
夕香の相手をしているのはどうやら竜也のようである。
竜也がその日に夕香に教えているのはスローのようだ。
「夕香さん、今日もスローを練習しましょうか」
「はい、よろしくお願いします、でもいつも私に教えてくれていますが、こんな私でよろしいのですか?」
夕香はここに通ってから、少しずつここの雰囲気にも慣れてきていた。その中で竜也は以前には彩香とよく踊っていたことを耳にして、それが気になっていたからである。
「ああ、彩香さんとのことですね、確かに彼女とはよく踊っていましたがそれはそれで、僕は誰にも束縛されたくなく、誰とでも踊るんです。彼女とは特別にカップルを組んでいるわけではないし」
「分りました、余計なことを聞いてすみません」
「いえ、それでは踊りましょうか」
「よろしくお願いします」
フロアでは、すでに何組かの男女がそれぞれに踊っていた。
竜也と夕香の二人はその中に入っていった。