第6話 私たちは平気!

文字数 951文字

 朝、ラインで追及したけど、するりと言葉のマジックでかわされた。
 ますます上手く使いこなしてる。「ああ、はい」って感じの文章しか書けなかったのに。
 けーちゃんは神様の呪いを演じることで、上達した。
 恋でもなく、文字コミュニケーションを免除されるためでもなく、それこそ正面突破するために、下手くそな文章で、道を切り開いていった。
 苦手なことも、得意な仲間を見つけると変わるのかな。
 でも、考え続けるのはしんどくない?
 
Yunami
 (いつまで呪いのフリすんの?
  逆に大変じゃない?)

けいしゃちょー
 (明日リリースするから、みんなよろしくね!)
  metahighschool /highcontextclub.com

 なにを⁉︎
 けーちゃんは翻訳機アプリを作った。もちろん、サクキョンや嶋崎さんの関与が大きいけど。性能は良くない、というか、まだこれから発達させる試作アプリで、学校の巨大ネットワークを利用して、大勢の生徒たちに遊んでもらうことで完成させるつもりだ。サクキョンが絡んでいるあたり、そのうち商売にするのかな。
 どこまでも用意がいい……。
 そっか、これでけーちゃんは神様の呪いも、アプリの力で相殺出来ましたとか言って、自分の言葉を取り戻したってことにすんのか。
 神様の呪いでテキストがバグるとか、好きな人を追いかけて鉄道会社に就職して初対面を実現させるとか、話題性抜群。みんなしばらくはアプリを使ってくれるはず。
 賑やかなコミュニティがあちこちで爆誕しそう。
 驚かされ続けた私は、一年後、さらにのけぞった。
 通信インフラがさらに発展して、重い動画もどんどん送れるようになったある日、けーちゃんが子どもの写真を送ってきた。
 もうパパになったの⁉︎
 あのまま新潟にいつて、なんだ、やっぱ恋だったのかとほっとしていたら、最速で家族が増えてる!
 これがけーちゃんなんだ。
 いいね。
 誰もが家に閉じこもる世の中。
 あまりにも多くのものが姿を消して、大人たちは憐んでくれるけど、平気。
 達者な言葉の熱さも、未熟な言葉の強さも知った。
 私たちは神様を繰り出せるし、病気だって作れるんだし、沼雪の中もクロールして、たまに音信不通になったって、距離を飛び越えていけるんだ。
 もちろん、スマホと一緒に。
 だよね!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

ユナミ(瀬川 ユナミ/せがわ ゆなみ)

高校生。

近所に住むいとこのけーちゃんとは兄弟のような関係。

驚きの恋を目撃することになる。

けーちゃん(瀬川 蛍/せがわ けい)

高校生。

話すのは好きだが書くのは苦手。

容量がよく、神様さえも使いこなそうとしている。

嶋崎 ルチア(しまさき るちあ)

高校生。

けーちゃんの好きな人。

コンテキスト同好会の部長。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み