第3話 これで良かったのか?

文字数 2,211文字

「盛大な式だったわよ。それに、彼女は元気そうで幸せそうだったわよ。」
"今の所はね!"と竹美は、心の中で付け加えた。引き出物を床に下して、服を脱ぎながら、彼女は素五井の顔、カメラの液晶画面を見つめる顔を伺っていた、それとなく。
 彼の元妻民華の結婚式の招待状が竹美に届き、
「様子を見てくるわね。」
という彼女を、
「なんで君を招待したのかな?」
と言いながらも、穏やかな表情で彼は彼女を送り出した。
「元気そうでよかった。」
と言う顔は少し陰りがあったものの、彼女が心配するほど、最悪の事態、のことはなかったので、内心ホットしていた。彼が、未練がましく、その画面を見ることなく、カメラの電源をオフにしてテーブルに置き、自分の方を見たので、さらに安心した。それも、彼の表情に救いを求める色はなく、自分の姿を満足そうに見ているように見えたので、さらに安心した。
 わざと乱暴に下着まで脱いでしまい、"汗臭いかしら?まあ、いいか?"、彼に抱きついた。
「もうそろそろ、結婚初夜しているかもよ、あの二人?」
 そう言いながら、素五井の服のボタンを外し始めた竹美は、それを止めようとしない彼をいいことに、
「私達も負けずにさ?汗臭い私じゃ嫌?それなら、一緒にシャワーを浴びてから。」
と囁いた。彼は、それには答えずに、唇を重ねてきた。
"民華。ごめんね。多分、私達が勝っているから。 "
 初めは好奇心と民華のためと思い、それから水に落ちた子犬をさらにいたぶる快感を味わうつもりだった。骨までとは思わなかったが、少しはしゃぶりつこうとは思っていた、憔悴した表情ながらも、仕事に行き、疲れ切って帰路に着く彼を見かけて声をかけたのは。
 謝罪の言葉を告げ、こんなことになったのは自分にも責任がある、自分も恋人と別れたところで、寂しかったものだから結果として誘惑してしまったかもしれないと、言って近づいた。素直に信じ、彼女を許した彼を、"本当に馬鹿ね!こんな奴だから愛想をつかされたのよね。しかも、あっちも下手だし・・・。"と思いつつも、その後付き合っているつもりが、本当に付き合うことになっていた。彼を知るにつれて,考えが変わっていったのだ。
 彼の優しい愛撫に彼女は、すぐに反応して喘ぎ声を出し始めた。"優しい。そう全て彼は優しい・・・そして、強い・・・さらに強い。"、と快感に陥る頭の中で思っていた。"私にぴったしかも・・・。"とも"そう思っていいのかしら。"
 集まってきた、彼の友人という連中は、民華の話にはないものだった。弁護士などの方面で関係、伝手のいっぱいある奴から、もう色々な男女がいた。あっという間に、私のことも、民華のことも実は調べつくしているのではないかと思えた。ただ、彼は私に何も言わなかった。何となく、チラチラ聞こえてきたような情報を民華に送ったが、それ以上は伝えることはできなかった、知りえなかったからである。
 男女のデートの定番の水族館に行っても、公園でも、博物館でも、神社仏閣でも、景勝地でも、豪華なランチもディナーもなかったけど、彼は優しく、そして、何でも知っていた。
 対面座位で抱きしめられ、互いに激しく動きながら、そのことも回想していた。
「いいの~!」
 もう帰ってきた時の汗が感じられないくらいに、二人は汗びっしょりになって動いていた。
 一段と高い叫び声のような、喘ぎ声を出して彼女は動かなくなり、快感の余韻が続いてぴくぴくと痙攣している彼女の上で、ラストスパートかけて激しく動いていた彼の体が止まり、彼の短い一言の後に熱い物が彼女の中に入ってきた。しばらくそのままの態勢だった彼は、すかさず体を入れ替え、彼女を上にして仰向けになった。また、激しく唇を重ねて、吸いあった。
「僕でいいのかい?民華に愛想をつかされたようなダメ男なんだよ。」
「そんなことないわ。あなたは最高よ!私達の相性は最高なの。」
と叫ぶように彼女がいってすがりつくと、彼は満足そうに微笑んだ。"この人、私のこと、やっぱり全部知っている?"実際、彼の友人達は、彼女に面と向かって、真意を確かめるぞ、という顔で、
「彼と本当にいつまでも過ごすつもりか?」
「彼に尽くしてくれるの?」
「奴を愛しているんだよな?」
「男女の関係でも、彼がいいのよね?」
と詰問してきた、個々別々に。そして、彼女の答えを聞いて、しばらくじっと見つめてから、
「まあ、それならしかたがない。」
「まあ、いいわ。」
「それならいいか。」
「そうよね。何も言わないわ。」
と言ったものだ。
 自分が彼を選ぶ理由は幾らでもある、でも、彼が自分を選ぶ理由は何だろう?それが、彼女の不安だった。"とにかく、二回戦も続けられそう。"彼女は彼の上に跨り、騎乗位で一体になり、彼の両手で二つの乳房を揉まれながら、激しく動き出した。二度目で、長く続けられた彼に攻められまくられて、いくつもの体位で二人は愛し合った。
 "ごめんね。彼を・・・素晴らしい彼を・・・この幸せ、貰っちゃうから。"ぐったりして、彼の上にのしかかり、彼に抱かれるまま、快感の余韻に浸りながら、竹美は心の中で叫んでいた。
 二人は、数か月後ささやかな結婚式を挙げた。
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