1 黒髪と金髪と白金髪と2
文字数 789文字
放課後の教室で、帰り支度中のクリスが大仰に言うと、周りの級友がクスクス笑った。
恥ずかしいからやめて、っていつも言ってるのに、彼ってばちっとも聞いてくれない。
放課後は、私・先輩・クリスの三人で学院近くのカフェのテラス席でお茶会をするのが日課なの。
さいしょ彼が照れくさそうに『彼女とテラス席でお茶するのが夢だった』って言うから渋々承諾したら、案の定下校中のみんなのさらし者に……。
そのくせ彼は通行人ばかり見てるって、一体どういう了見なの?
と、クリスが朝の話題を蒸し返した。
これが教授に頭を叩かれた原因、近ごろ王都を騒がせている『連続婦女誘拐事件』の事なの。
と先輩が口を挟む。
クリスが自慢の髪をいじりながら
と呑気に言うと、先輩が
とお説教を始めた。
クリスが、いつのまにか先輩に、こんな二つ名をつけていた。
貴方は一体、どこでその名を使う気なの?
と言って先輩は、私に芝居がかったキメ顔で微笑んだ。
最近は慣れたせいか、彼の愛玩動物も板についてきたカンジ。
でも、少し不安もあるの。
彼は優しくていい人だけど、まだ本当の彼を見せてくれてない、って気がするから……。