1 黒髪と金髪と白金髪と2

文字数 789文字

ミラ、シンクレア助手がお迎えに来たわよ
 放課後の教室で、帰り支度中のクリスが大仰に言うと、周りの級友がクスクス笑った。
もう! 何で校門で待っててくれないの?
一秒でも早く君に会いたいからに決まってるだろう? 

さ、一緒に帰ろう~ミラ♪

 恥ずかしいからやめて、っていつも言ってるのに、彼ってばちっとも聞いてくれない。
 放課後は、私・先輩・クリスの三人で学院近くのカフェのテラス席でお茶会をするのが日課なの。
 さいしょ彼が照れくさそうに『彼女とテラス席でお茶するのが夢だった』って言うから渋々承諾したら、案の定下校中のみんなのさらし者に……。
 そのくせ彼は通行人ばかり見てるって、一体どういう了見なの?
ねぇねぇ、例の事件のことだけど……
 と、クリスが朝の話題を蒸し返した。
 これが教授に頭を叩かれた原因、近ごろ王都を騒がせている『連続婦女誘拐事件』の事なの。
今朝の新聞には……
と先輩が口を挟む。
被害者が若い女性ということ以外関連性は認められず、身代金の要求もないため単純な連続殺人事件との見方を……とあったね
 クリスが自慢の髪をいじりながら
やっぱり殺されちゃってるかなぁ

と呑気に言うと、先輩が

クリス、君達だって他人事じゃないんだ。くれぐれも……
とお説教を始めた。
はいはい、分かってますよ、白金の騎士ナイト・オブ・プラチナム
な~にそれ、ダサーい
クリスが、いつのまにか先輩に、こんな二つ名をつけていた。
そうかい? 僕は気に入ったけど。有り難く使わせてもらうよ、クリス
 貴方は一体、どこでその名を使う気なの?
ま、どんな敵がが来ようとも、彼女は僕がこの身にかえても護るけどね
 と言って先輩は、私に芝居がかったキメ顔で微笑んだ。

 最近は慣れたせいか、彼の愛玩動物も板についてきたカンジ。

 でも、少し不安もあるの。

 彼は優しくていい人だけど、まだ本当の彼を見せてくれてない、って気がするから……。
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登場人物紹介

ミラ・ヤマザキ(16)

王立ローデア錬金術学院高等部、一年生。
遠い東方の小国「八州」人の両親から生まれ、王国では珍しい黒髪を持っている。黒髪がコンプレックスで、友人クリスのような金髪に憧れている。


クリステア=バロウズ(16)
ミラの同級生にして、唯一の友人。
明るい性格のゴシップ好きで、やや変人。他人の目を気にしない。
ふわふわの金髪を持ち、いつもミラにうらやましがられている。

ユノス=シンクレア(24)
ミラの担任教授の助手をしている、師範科の実習生。ミラの恋人。
銀髪長身の美男子だが少々常識に欠けているため、ミラに辟易されている。
二つ名は「白銀の騎士」、命名はクリス。

教授(53)
少々脂の乗った中年男性。
ミラ達の担任。授業を真面目に聞かない生徒には容赦がない。
町外れの大きな屋敷に住んでいるという噂。

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