第3話 結婚式

文字数 6,523文字

翌日の朝、エヴァンとティファーはカルベロッカの国民達に囲まれて盛大に結婚式の舞台が行われた。

まず始めに式は2段階でエヴァンとティファーは和装に着替え、最初に結婚式が行われた。

おちょこの器に少量の酒をいれてもらい、それを飲むエヴァンとティファー。

二人はこの時顔を赤くし照れ臭そうにし、国民の前で式を披露していた。

エヴァンは式を披露しながらある男の存在をふと頭に浮かんでいた。

それは日本人で騎士団時代に共にパートナーを組み、任務をこなしていた男の存在だった。

その男はこの時心が荒んでいたエヴァンに向かっていろいろ声をかけ、ちょっかいを出し絡んでいた。

なかなか他者に心を開かない騎士団時代のエヴァンだったが、次第に正反対の彼の明るい性格にひかれ、少しずつ心を開くエヴァン。

そしてその時彼が任務途中で戦死する前、印象に残った言葉がふとエヴァンの頭の中で蘇り、今ある現状のシーンからその風景を照らし合わせていた。

そう、その時彼が言った言葉とは、


「今まで自力で鍛え上げてきた力を他者の為に使え。

そしてその力を使い他者を守るんだ。

いいもんだぜ、人の笑顔を見るのは……

悲しんでる顔の人達を見るより、うれしい顔をされたほうが気分がいいじゃない……」

「…………」

人の幸せを願い、 それを守り抜く力……

私に出来るだろうか、この私に……

コウ、私は……

エヴァンが結婚式の最中に考え事をし躊躇していると、結婚式を見ていた子供や国民達が二人の結婚式を心から祝い、目を輝かせながら二人を祝福していた。

そして次々に二人の姿を見て、国民達はエヴァンに向かって、

「頼もしい我らの王が誕生したのぉ~。

ティファー王妃もいい婿さんをゲットしてからに……

やはり若い王は初々しくて印象がいいのぉ~。

これからもよろしく頼みますぞ、エヴァン王……」

一人のカルベロッカの国民の老人がエヴァンに向かってそう言うと、今度は隣にいた小さい男の子が目を輝かせながら、

「王様、16の時騎士団に入っていたんだって~、へぇ~すごいな~。

魔物ってやっぱり怖かった?ねぇ。

僕も大きくなったらバシバシ魔物倒して、父ちゃんや母ちゃんを守りたいんだ。

ねぇ、式が終わったら後で魔法教えてもらえる?ねぇ、ねぇ」

子供がせがみエヴァンに話しかけてると、その隣にいたその親がその子供に怒りながらその子に向かって、

「こら!カン!いい加減にしなさい!

今は王様式の最中なのよ!空気を読みなさい!もうっ!

すいません、王様、子供が騒がしくって……

あの……、すいません、行事が終わったら後でサイン下さい…………」

エヴァンはこの時この親子に向けて笑顔で顔を返した。

子も子だが、親も親……

親子揃って空気を読まず考えが似てるとは正にこの事である。

その後、和式の結婚式が終われば洋式の式が行われた。

ウェディングドレスを着て喜ぶティファー。

カルベロッカの結婚式は物凄く盛大で華やかな演出で盛りだくさん盛られていた。

国民性も陽気で楽天家な人が多いせいか、二人の結婚式の姿を見てお酒や明るい笑い声がそこら辺で飛び交うなか、レオはエヴァンの心底喜んでる表情を見て、この時レオは遠くからまるでこの時長年のパートナーと一緒にいた旅がここで終わりを告げるんだなあ~っと思い、この時別れの時がきたような気がした。

二人の仲を祝うなか、少しもの悲しさを感じたレオ。

だがエヴァンがようやく初めて人を好きになり、本気でティファーに向かってプロポーズをした姿を見た時、ようやく師にも春がきたんだなあと思い、二人の仲を心の底から祝福した。

そして、この時式が終わる頃にはレオは自分の中である決意をした。

それは旅の延長で、一人エヴァンから独立し、もっと自分自身腕の力を磨く事だった。

世界はもっと広い。

あらゆる情景があり、多種多難な姿をした物。

レオはもっと多くの世界を知り、旅を続ける事だった。

レオが一人旅に出る話を聞いてエヴァンはびっくりしてレオに向かって、

「行くんですか?レオ……

ずっと一緒にここにいていいんですよ、レオ……

そんな、一人でなんて……

貴方まだ、10歳の子供じゃないですか!」

エヴァンがこの時レオを説得して必死で引き留めようとしているとレオは、

「いいんです!俺は旅に出るって心の中で決めたんです!

もともと俺、じっとしていられない性格なんで……

せっかくの機会なんでもっと旅に出なきゃ……」

それを聞いたエヴァンはレオに向かって、

「でも、貴方……」

と、言葉を濁し、一人で旅に行くのを反対していた。

「……

……レオ」

エヴァンが下を見てレオが一人で旅に行くのを止めてると、その後ろからティファーが来て、

「……レオ、どうしても一人で行くの?本当に……」

ティファーの言った言葉をレオは大きな声で、

「ええ!俺は行きますよ、王妃。

自分の中で決めたんです、俺は……

もっと世界を見たいんです!

もっといろんな状況を見て、いろんな体験を自分の手でしたいんです。

今までは先生から多くの事を学び助けてもらいました。

生きる為に武術や魔法を教えてもらったり、ギルドに行って一緒にお金を稼いだり、多くの事を先生から学ばせて頂きました。

でもだから、だからこそ、その今までの経験を積んできた事をこの場でいかしたい。

そしていかして自分の手で、これからもずっと今度は自らの手で道を作りたいのです」

「…………」

「………………」

レオとティファーとエヴァンはしばし両者共々沈黙が続いていた。

レオの決意、それは言葉よりも瞳の方が物語っていた。

誰が反対し止めても、一度行くと心に誓った自分への決意。

たとえずっと一緒にいたエヴァンでも、レオが自分で行くと一度決めた道は絶対に折れない性格であった。

その性格を見透かしてティファーはレオに向かって


「本当に一人で旅たつのね?」

と念を押し、レオに向かって言葉を投げ掛けた。

レオはそのティファーに投げ掛けた質問に対してきっぱりと、

「はい!」

と返事をし、

「俺は行きます」

と再度大きな声でティファーに向かって言葉を投げ返した。

ティファーはその返事を聞いて、

「わかったわ、レオ。

貴方の思うように道を進めなさい。

でもこれだけは約束して。

絶対に無茶をしないように……

貴方の命はもう自分一人だけの物じゃないの。

貴方がもし死んで悲しむ人はここにいる……

それは貴方の両親が亡くなってからずっと……

そして何より貴方の事が大切で今では親以上に心配してくれる貴方の師……

だからお願い、無茶しないでね、レオ……

私達はいつでも貴方の帰りを待ってるわ。

ここが貴方の新たな故郷……

いつでも辛くなったら家に帰ってきなさい。

おいしいご飯をたくさん用意してあげる。

さっ、レオ。旅立つ前にまずは腹ごしらえにうんとたくさん食べないとかないとね。今から城に帰り料理を作るわ。

……エヴァン、貴方の返事はまだ聞いてなかったわ。

エヴァン、返答はいかに?」

「…………」

エヴァンはこの時下を向き押し黙りながら考え事をしていた。そしてティファーに向かってエヴァンは、

「……レオと二人きりにして欲しい」

と返答を出し、それを聞いたティファーは、

「わかったわ、エヴァン。夕食ができる前にレオと一緒に戻ってきてね。3人でご飯を食べよう」

とこの時ティファーはエヴァンに向かってそう言い、ティファーは一旦エヴァン達と別れ、夕食を作るために自分の城に戻った。

城に戻るティファーの姿を見たエヴァンはレオに向かって、

「……レオ、ついてきなさい」

とレオの方を見てそう言い、そしてエヴァンが無言でレオを連れていった先にはなんと男同士の400円ぐらいの銭湯だった。

レオはエヴァンの方を向いてエヴァンに向かって、

「……先生、ここって……」

と、驚いた様子でエヴァンの顔を見た。

何故、銭湯?

と、レオは心の中で思ったが、エヴァンは疑問に思ってるレオに向かって、

「男同士しで腹をわって話せるのはここがいいと思ってね。王妃も夕食を用意してくれるし……

それとも別の場所にしますか、レオ?」

とエヴァンはキョトンとしているレオに向かって話しかけた。

レオはそんなエヴァンに対して、

「いえ、別に……

先生があまりにも突発的な場所に連れてってくれるなんて考えてもなかったので、少し驚いただけです」

と言い、

「一緒に中に入りましょう、先生」

と、レオはエヴァンに向かってそう言い、カルベロッカの付近にある年期の入った銭湯に二人で入っていった。

(銭湯の場所はエヴァンがあらかじめカルベロッカの国に入った時に見つけて知っていた。

そしてエヴァンはこの時いずれレオと行こうと前から考えていた矢先だった)

銭湯の中でエヴァンと話した事は2つ。

まず体を洗い二人が話した内容は、エヴァンがティファーと急にくっついた事によって、レオが気兼ねをし、この事がきっかけでレオが旅に出る事。

この事に対してレオはきっぱりと、元から独立し、強くなりたいと考えていたので時期が早まり旅立つきっかけができたと、決して気兼ねではないとエヴァンに向かってレオははっきりこの時言った。

エヴァンはそれを聞いて、

「……そうですか」

と、下を向きながら石鹸で体を洗い、蛇口からお湯を出し、カランでくんだお湯を体で洗いながしていた。

その時レオもエヴァンの横で並び泡をおとし流しながら風呂に入ろうとした時、エヴァンも一緒に湯船の中に入ってきた。

そして熱い湯船の中でエヴァンがレオに話した二つ目の話は、

「今までずっと一緒にいてくれてありがとう」

と、感謝の言葉をレオに言い、そしてこの時あまり自分の事を話さなかったエヴァンが、自分の生い立ちの話やレオと同じぐらいの弟がその時いたと初めてエヴァンの口から話した。

そしてその弟はもう魔物に殺されてこの世にいなく、同じぐらいの歳のレオを見つけた時には本当にこの瞬間何かを感じ運命を感じたと言い、そしてもう一度レオに向かって、

「ありがとう」

と、レオの顔を見てエヴァンはレオに向かって言った。

それを聞いたレオは照れ臭そうに、

「そ、そんな事……こんな場所で言わないでください。俺、恥ずかしいです」

と言い、レオはお湯の熱さもあってか顔が赤くなりエヴァンの顔を見るのが恥ずかしく、プイッと横を向いた。

そんなかわいいレオの態度を見てかエヴァンは湯船の中で、

「フフフ、レオ」

と笑い、この後一緒にレオと湯船を出て浴槽を後にした。

そしてその後、二人は風呂場の休憩室の所でコーヒー牛乳を売店で買い、二人並んで瓶の蓋を開けて飲んだ。

そして飲んでいる最中、エヴァンはレオに向かってある物をスッと渡してきた。

それはエヴァンの今まで騎士団時代から貯めてきた通帳だった。

レオはそれを見て、

「先生、これって?」

レオは目を丸くし、エヴァンに向かって話しかけると、エヴァンはレオに向かって、

「旅立つ時には何かとお金が必要です。

私にはもう必要ありません。

もう私の旅はここで終わりましたから……

レオ、君にこの通帳を渡しましょう。

私が若い時にコツコツと貯めておいたお金です。

大切に使って下さい。

あっ、でもくれぐれも貴方、ギャンブルに手を出してはいけませんよ、レオ。

貴方、浪費癖がありますからね。

もしそのような事でお金を使ったのなら、この通帳にトラップ発動の魔法をかけておきましたから。

だからくれぐれもパチンコ店とかにいかないように……

わかりましたね、レオ」

「…………(-_-)」

レオはこの時この通帳を持ちながら、

(トラップ?トラップの魔法って何?)

と、疑問に持ちながら、さらにもう一度、

(……何?トラップって……)

と頭の中でエヴァンの顔を見ながら繰り返していた。

わずか10歳でいろいろと大人の味を覚えてるレオ。

興味本意で動いている元からの性格なのか、これから旅に出るレオが別の意味でお金を違うことでつぎ込んでしまうんではないかとこの時一人心配しているエヴァンだったということは言うまでもない。

風呂屋から出て夕方レオとエヴァンは城に戻り、ティファーが腕によりをかけて作った夕食をティファーを交えて3人で美味しく食べた。

レオはティファーに向かって、

「王妃、おかわり!」

と言い、ティファーはそんなレオの姿を見て、

「こらこら、慌ててそんなに早く食べないのレオ。料理は足が生えて逃げないから、ウフフ……

まだまだたくさんあるからゆっくり食べなさいレオ」

と笑い、レオが催促をした料理を調理場の所に行ってニコりとしながらレオのほうを向いて、

「はいはい、今持ってくるからね……

やっぱり男の子ねレオ。たくさん食べる食べる(笑)

エヴァン、貴方も何か欲しいものない?

何かもってくるけど……

お酒は?」

と、今度はレオとは対照的に黙々と料理を食べているエヴァンに向かってティファーは話しかけた。するとエヴァンはそんな声をかけたティファーに向かって、

「冷えたビールが欲しいんですけど、ビールはありますか、ティファー?」

と、エヴァンはティファーに向かってそう言い、エヴァンは、

「ビールが欲しい」

と調理場にいるティファーに向かって注文をつけた。

ティファーはこの時心の中で、

(あっ、はじめて私の名前ティファーって呼んだ。

今まで,さん付けで名前を呼んでたのに、なんだか変化があって私達の仲がより近くなったって感じ。

うれしいわ、エヴァン。

やっぱりお互い夫婦だから,さん付けは他人行儀であまり好きじゃないわ。

ビールね、ビール。今持っていくわね、貴方( ´Д`)=3(^з^)-☆)

と、初めて,さん付けせずエヴァンに呼び名で呼ばれたティファーは、この時ビールとレオから頼まれた食べ物を持ちながら舞い上がり、ルンルン気分で二人の元に行った。

(通常王族は召し使いや執事などをいて料理などをしてもらうが、ティファーは料理が好きで上手などで、この時は自分で用意をしたり料理を2人の為に作った。外交的なおもてなしなどは、回りの者にしてもらうようにしている)

それからレオがいろいろ支度をし旅立ちの準備期間の間、レオはその期間の間にティファーと一緒に買い物や遊園地などを連れていった。

そして二人は有意義な時間を過ごし、ティファーとレオはこの時お互い性格をさらに知りあい、二人とも男女問わずお互い深い友情関係の近いものになっていった。

元々性格は明るく活発な動きをし何にでも挑戦する二人。

エヴァンとは対称的に頭で考えず後先を考えないレオとティファーだが、失敗を恐れずどんどん何でも果敢に取り組む二人だった。

そんなレオを弟のように可愛がり、実の家族のように接するティファー。

二人が過ごす時間は早く過ぎ夕日を見ながら手を繋ぎ、二人仲良く夕闇の中を歩き城に向かいエヴァンがいる所に戻っていった。

(エヴァンはこの時二人が遊んでいる間、前任の王から王の仕事の役割を教えてもらっていた。

外交で取り合う各自の国々の王。

細かい問題や民が困っていることをエヴァンはひたすら現場に出てその声を聞き、問題解決の糸口を考えエヴァンは一生懸命全力で王の仕事に取り組んだ。

そして彼が王に就任してから数年の間、カルベロッカの国はますます発展し活気に溢れ、力強い平和な時代をハーバーが現れるまで長く過ごすことなった)
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