6000文字恋愛Ver 3話 大好きなストゥへ

文字数 959文字

大好きなストゥへ

ストゥ、隠しててごめん。
僕は『果実』なんだ。
8歳のときに、好きに生きると決めて『果実』を選んだ。
『庭師』として働いているストゥにはわからないかもしれないけど、
今も今までも『果実』として好き勝手に自由に生きてきた。

前にも話したことがあるけど、テムっていう幼馴染がいてね。
とてもテムが好きだった。
テムは僕の料理が好きで、僕は料理をテムに食べてもらいたかった。
だから料理を覚えるために店に入って頑張って修行して、月に1度休みをとって、テムに修行の結果を披露した。
でもテムは僕より先に収穫されてしまった。

ストゥに会えてとても感謝している。
テムが収穫されたあと、僕は心にぽっかり穴があいた。
そんな時に、ストゥが話しかけてくれて、僕はストゥのことをテムと同じくらい好きになった。
真剣に僕のことを見てくれて、僕の身を案じてくれた人はストゥだけだった。
ストゥは自分の誇りをしっかりもっていて、地に足を付けて歩いている姿がとても眩しかった。

でも、僕はストゥとの仲がこんなに深まるより前に収穫されると思ってたんだ。
いつ収穫されてもおかしくない年だし、20歳までに収穫されることは決まっていたから、好きに生きてパタリと眠っておしまいだと思ってた。
でも結局20歳の10日前まで生き伸びてしまった。
だから変に返事を先延ばしてしまってごめん。
本当に、もっとはやく収穫されると思ってたんだ。ごめん。

今日、僕の料理をほめてくれてとても嬉しかった。
『果実』の僕が何かを残せるなんてちっとも考えていなかった。
ストゥに何かを残したいって初めて思った。でももう時間がない。
だから、僕が考えたレシピを書いて、遺言をストゥに贈ることにした。
僕の料理をストゥに伝えたいと想いを込めるから、もしストゥが僕の料理を作ってくれたらうれしいな。
でも、いきなりだしちょっと重たいとも思うから、そのまま捨ててもらってもかまわない。
これも僕が『果実』として好き勝手してるってだけだから。
嫌なら本当に気にしないで。

ストゥ、ありがとう。本当に楽しかった。
ストゥにあえてうれしかった。
あと、僕のことはすっぱり忘れてほしい。
僕は食べられるための『果実』なんだから。
それから、ストゥに幸せが訪れることも心から願ってる。
どうか、ストゥがいい伴侶に出会えますように。

アニュより
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