第13話 新たな情報

文字数 1,610文字

 井原の工務店に三人は訪れてみると、社長は「井原は現場に行っている」とのことだったので、すぐさまその現場に行った。
 その現場まで行くのに結構時間がかかったので、着いた時には正午を回っていた。その為、昼休憩になっていた。
 井原は座りながら工事現場のパネルに背にもたれて、一人で食事をとっていた。近くにコンビニあったので、そこで購入した弁当を食べている。
「こんにちは、井原さん」あかねは井原の近くまで行き、彼があかねを見た時に言った。
「何だ、お前か。あいつのことは昨日全て話したぜ」
「今日はその事じゃないんです。井原さん、大森組ってご存じですか?」
 その言葉に、井原は箸を止めた。いつしか青白い顔になった。
「い、いや、俺は知らねえ」
「知らないって顔じゃないですけど……」あかねは手を腰に当てた。
 今日のあかねは井原に対して緊張感がなさそうだった。バックには菅がいるからであろう、真も気持ちが楽だった。
 井原は菅の存在に気づいた。「そこのあんたは、誰だ?」明らかに警察だと思って動揺している。
「いや、私も探偵でね。二人だけだったら心細いからって、ついてきたんだ」菅はそれを読み取って、咄嗟に嘘をついた。
すると、井原は辺りを見渡しながら言った。「わ、分かった。絶対に警察に言うなよ」
「言わないですよ。あたしと井原さんの仲でしょ」あかねは胡坐をかいて隣に座った。
「二年前から俺と舞子は覚せい剤に手を出すようになったんだ。その時にお世話になったのが、大森組というところだったんだ」
「それで、大森組ってどんなところなんですか?」
「細かいところはでは知らねえ。本当だ」
「どうやって、覚せい剤を受け取ったんですか?」
「繁華街で待ち合わせをしてたんだ。すると、約束の時間になったら、路地裏の隙間からチンピラが出てきて、それで物々交換さ。向こうは薬物を俺に、俺は金をチンピラに渡すんだ。その行動だけだ」
「まあ、よくある光景だな」菅は腕組みをしながら言った。
「それから、大森組とは接点ないんですか?」
 井原は一瞬たじろいだ。「な、ないない。俺はもう薬物はやってねえ」
 あかねは井原の顔を見ながら、「ふーん」と言った。井原は思わず顔を逸らした。
「ありがとうございます。他の同業者の方はどこにいるんですか」あかねは立ち上がった。
「同業者は全員東南アジアの外人なんだ。俺も日雇いでの契約だからな。奴らは一緒に昼飯でも食べてるんじゃねえか?」
「分かりました。ありがとうございます」
 あかねは会釈をした。その後に菅と真も井原に軽く頭を下げた。

「やっぱり、大森組で正解だね」
 あかねは助手席に座っている。今日は菅が運転していたのだ。
「でも、あいつは今も薬物やってるな」菅は運転に集中している。
「確かに、目がいっちゃってるよね」
「ああ、まあ、あいつのことはまた麻薬取締官が捜査するだろう。それよりも、問題は大森組だな。住所は知ってるんだが……」
「何かあるんですか?」
 後部座席で真は顔を出しながら言った。
「まあ、大森組はさっきも言ったように、三年前くらいからできた暴力団なんだ。大森は他の暴力団から独立した奴らしいんだが、大森組は急成長してるから、それなりに建物もしっかりしてるんだ」
「セキュリティとかしっかりしてるところなの?」と、あかね。
「まあな。俺も一回ぐらいしか行ったことないから、何とも言えないが。外面は奇麗なビルだ。しかし、どことなく異様な雰囲気を漂うようないびつな感じでもある」
「うーん」と、あかねは想像しているようだが、ピンとこなかった。
「取り合えず、その前に昼飯ですね」
 真がそう言うと、あかねも目を輝かせながら。
「そうだよ。昼飯、菅さん、あたし焼肉定食がいいな」
「何だよ。俺が奢れというのか?」
「アハハハハ、こんなに可愛い乙女に出させるつもり?」
「もう、分かったよ」
 そう言って、菅たちが乗るハイブリッド車は近くのレストランに車を止めた。
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