第23話 成長しない養女

文字数 1,269文字

「お嬢様、少し
一緒に旅でもしましょうか?」

ジルが突然そんなことを言い出した。

「お嬢様は、すっかり
贅沢に慣れてしまったようですので

お嬢様のルーツを探る旅をいたしましょう」

贅沢?

そんな贅沢をしているような
覚えはないけど……

養父はお金はあったらしいが
それ程、贅沢をするような人ではなかった。

お金があるからと言って
贅沢な人間になるのは良くない、

そんなようなことを
何度か口にしていた記憶はある。

あたしはそれにならった生活を
送っているだけなので、

そこに思い当たる節は
まったく無かった……。

「あたしのルーツって、
ヨーロッパか何か?」

「さすがにこんな時勢ですし、
海外には行けないでしょうから……

国内からということで

お金もそれほど掛かりませんし」

ジルも割とお金には厳しいし、
うちには本当にお金があるのか?

-

養父は、いつも無表情で
何を考えているのか、
よく分からない人だった。

いつもじっと
私のことを見ていて、私が何をしても
笑うでもなく、怒るでもない。

きっとあたしには興味が無いのだろうと
最初はそう思っていた。


私のお父さんの筈なのに、
私を愛してくれない……

触れてすらくれない……

もしかしたら私は汚いから
触るのが嫌なんじゃあないか、

まだ幼かった私は
そんなことすら思いもした……。


でも、いつもずっと見続けているので
次第に私の考えも変わって行った。


あぁ、この人はきっと、あたしのことを
綺麗なお人形さんだと思っているんだ……

ただ、外側だけを見て
観察して楽しんでいるだけで

人間である私には興味がないんだ……

私は、養父にとっては
綺麗なお人形さんでしかないのだと……。



そして、養父は
私の髪を隠したがった……。

お団子ヘアにしたり
帽子を被せたりして

あたしの金髪を極力
他の人に見せないようにしていた。


何故そんなことをするのだろう?

本当のお父さんはいつも
私の髪を撫でていてくれたよ……

私の金色の髪が
そんなに恥ずかしいのかな?

私の髪が他の子みたいに黒くないから
このお父さんは恥ずかしいのかな?

私の金髪は恥ずかしいのかな?

いいようもない悲しみに
胸が張り裂けそうになって

私は怒って帽子を投げ捨てた

……うん、毎回
投げ捨てていたような気がする

時にはお団子ヘアさえも
自分で振り解いた。


ジルはいつもいつも
あたしを抱きしめてくれて

昔も今も変わらず

本人のお母さんのようだと思っているけど、

養父の言うことには
逆らえなかったようで、

いつも私に帽子を被せようとしていた。


学校も、黒い髪の子達が行く学校には
行かせてもらえなかった。

やはり私は他の子と違うんだ……

何がいけないんだろう?

新しいお父さんが
私を愛してくれないのは、

私のこの金色の髪と
青い目のせいなんじゃないかな……

そんなことを思っていた時もあった……。

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