第22話 英雄、依頼書について語る

文字数 1,183文字

「さて。じゃあ依頼の話をしようか」

「いよいよ探索者らしくなってきましたわね」

 テーブルに置いたままだった依頼書にみんなの視線が集まる。

「ここにある通りグレーパックというアイテムを最低10個入手するのが依頼内容だ」

「グレーパックというのはなんですの?」

「その名の通り灰色の袋でな。袋はすごく軽い。中にはスカスカの物しか入ってないから当たり前なんだが」

「そんなものをどうして求める人がいるんでしょうか?」

「こいつ中身はスクラップバーと似たようなやつなんだよ」

 思った通り、三人は驚いていた。

「ではレプリケーターを使えば美味しい料理になるんですの?」

「そうだ」

 グレーパックもそのまま食べられる。
 だが口の中がパサパサになるし、味も濃すぎるのでとても美味しいとは言えないところまでスクラップバーとそっくりだ。
 そのお陰かレプリケーターの材料として使える。

「だがグレーパックにはもっと簡単に食べる方法があるんだよ」

「どう、するの?」

「水やお湯を入れて混ぜるんだ。そうするとなんかいい具合になって美味しく食べられるようになる」

「そんなことでいいんですの? ではダンジョンの食事がますます楽しみになりますわね!」

 いや、待て。
 簡単に言ってくれるが、ダンジョンではいつだって水があるとは限らないんだからな。

「ダンジョンで水を確保するのって大変なんだぞ。それによく見かけるスクラップバーに比べると入手は簡単じゃないんだ」

「あんなに美味しいものが食べられるのでしたら少しぐらいの苦労は気にならないと思いますの」

 とりあえず食い気ネタからは離れておこう。
 これではちっとも話が先に進まない。

「今回は入手までの映像も記録してあわせて提出することになる」

「配信をするんですか?」

「いや。録画でいいそうだ」

「どうして映像が必要なんですの?」

「簡単に言えば品質の保証だな」

 グレーパックは水分が多い所にあると劣化してしまうのだ。

 つまり映像を確認することで、そのグレーパックは食用に耐えられるかどうかの判断が可能となる。

「もしかしたらティアたちが以前食べたっていう料理はこいつだったのかもしれないぞ。ダンジョンの物を回収してきてほしいって依頼を貴族がたまに出すんだよ」

「それは楽しみですわね!」

「ローも。また、食べたい」

「いや、依頼品なんだから食べたらダメだ。10個も必要なんだからな。複数のポイントを探し回ることも覚悟しておいてくれ」

「残念ですね。私も食べてみたかったです」

 ササンクアまで心なしかしょんぼりしているようだ。
 それでいいのか、聖女様。
 いや、本人がダンジョンのものにも挑戦していくって言ってたけどさ。

「……多めに確保できたら食べてみるのもいいかもな」

「あの味をまた味わえるだなんて、今から楽しみですわね!」

「ローも、たのしみ」

 あくまで10個以上確保できた場合の話だからな?

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登場人物紹介

ジニア・アマクサ

本作の主人公。29歳。

3年前に塔に入った聖塔探索士の英雄で1年前にチームで唯一生還した。

塔に残った仲間と再会するために改めて塔に挑戦する道を模索する。

現在は塔で受けたダメージによりアームドコートが召喚できず戦闘能力が大幅に低下している。

一方で探索の知識や技術、経験は豊富で有能な人物。

ササンクア・インディゴ

聖塔神鏡会に所属する少女。19歳。8級のガードアームド。

平民出身で聖塔神鏡会公認の聖女。癒やしの奇跡を行使することができる。

教義のために自ら攻撃はできないが、守ることにかけてはランク以上の実力を発揮する。

塔の浄化と神との再会という鏡会の理念を全うするために上層部から命を受けてボールサムのチームに加わったが、ボールサムがチームを捨ててしまったのでジニアに声をかける。

フォーサイティア・アストライオス

貴族の少女。14歳。ローゼルの双子の姉。7級のライトアームド。

祖父が現国王の叔父と一緒に塔に登ったことがあり、彼と同じ光景を目にしたいと思い塔を目指している。祖父が記した本を文字通りバイブルとしており、なにかにつけて記述をそらんじてみせる。

お尻は大きいが動きは機敏で安定感がある。



ローゼル・アストライオス

貴族の少女。14歳。フォーシティアの双子の妹。8級のヘビィアームド。

姉にべったりで甘えたがり。姉が塔を目指すというので付き合っている。ジニアのことを「シショー」と慕う。

おっぱいの大きい方。前が重いためか猫背気味。

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