第77話 英雄、生配信を見る
文字数 1,340文字
併設された食堂へ入り、仲間を探す。
気が付いたササンクアが手を挙げて場所を教えてくれた。
「待たせて悪かったな。手続きが増えて時間がかかるようになったんだ」
「いいえ。いつもありがとうございます」
「食事は――」
ローゼルのほっぺたがぷっくり膨らんでいる。
「ローゼルがどうしてもというので、飲み物だけにしましたわ。申し訳ございません」
「それはいいんだが……そんなにイヤか?」
「いや」
イヤなのか……。
気持ちはわからないでもないんだが。
「じゃあ、食事は家に戻ってからにするか」
「うん!」
満面の笑みだった。
この顔を見せられたら許すしかないよなあ。
「あら? ボードに映っているのは、先ほどのシクモア様ではありませんの?」
「地下三層のようですし、服装もあの時見たのと同じですからそうでしょうね」
シクモアたち〈暁の光 〉の生配信のようだ。
「あの方たちはダンジョンに入るのは初めてなのにいきなり地下三層にまで到達されてすごいですわ。母国で活躍をされていたというのも事実のようですわね」
「いくだけなら、アレでも、できた」
ローゼルにアレ扱いされているのはボールサムだ。
彼の場合は実質一人で地下三層までたどり着いたという話だったが、それもチームメイトのフォローがあったお陰だろうと俺は見ている。
おまけにたどり着くのが精一杯で、その上、ゴーレムを不用意に倒して仲間を大量に呼ばれて逃げ出すはめになったのだから評価はできない。
むしろ探索者としては落第だ。
「ゴーレムをどんどん倒しているみたいですけど大丈夫なんでしょうか」
先頭に立っているのはシクモアだ。
彼女の右手が鞭のように長くしなやかな剣になっている。
あれは甲腕衣 の武装化……ということは段位持ちなのか。
「シクモア様のアームドコートの形、あれはなんですの? 見たことがありませんわ。それよりあんなにゴーレムを倒してしまっては……」
ボードを見ている連中もシクモアの無謀ともいえる行動に気が付いてざわついている。
ゴーレムは仲間を呼ぶから倒す時は注意するようにと伝えたのだが、なにを考えているんだ。
「あっちは広いエリアがある方向だぞ。まずいな。囲まれる」
案の定、広間にはすでに大量のゴーレムがシクモアたちを待ち構えていた。
ぐるりと囲まれて、容易に逃げ出せそうにはないように見える。
だというのにシクモアに慌てた様子はなかった。
他の三人もアームドコートの召喚すらしていない。
まるでこの状況を待っていたかのようだ。
「まさか、あの数をお一人で相手にするおつもりなのでしょうか」
前に出たシクモアが右手を大きく振る。
たったそれだけで前面にいたゴーレムが薙ぎ払われた。
「すごい……」
反動をつけ、右足を軸にぐるりと体を一回転させる。
彼女の背後に控えていた三人は跳躍して剣を回避した。
しかし囲んでいたゴーレムたちはまともに攻撃を喰らって破壊されていく。
あっという間のゴーレム殲滅劇だった。
あまりのことに誰もが口を大きく開いて茫然としている。
俺の背後から拍手が聞こえたかと思うと、それに倣って食堂中の連中が拍手し、喝さいをあげていた。
「なんでいつも俺の背後から近づいてくるんだ」
そこにいたのはベテラン探索者のスノウボウルだった。
気が付いたササンクアが手を挙げて場所を教えてくれた。
「待たせて悪かったな。手続きが増えて時間がかかるようになったんだ」
「いいえ。いつもありがとうございます」
「食事は――」
ローゼルのほっぺたがぷっくり膨らんでいる。
「ローゼルがどうしてもというので、飲み物だけにしましたわ。申し訳ございません」
「それはいいんだが……そんなにイヤか?」
「いや」
イヤなのか……。
気持ちはわからないでもないんだが。
「じゃあ、食事は家に戻ってからにするか」
「うん!」
満面の笑みだった。
この顔を見せられたら許すしかないよなあ。
「あら? ボードに映っているのは、先ほどのシクモア様ではありませんの?」
「地下三層のようですし、服装もあの時見たのと同じですからそうでしょうね」
シクモアたち〈
「あの方たちはダンジョンに入るのは初めてなのにいきなり地下三層にまで到達されてすごいですわ。母国で活躍をされていたというのも事実のようですわね」
「いくだけなら、アレでも、できた」
ローゼルにアレ扱いされているのはボールサムだ。
彼の場合は実質一人で地下三層までたどり着いたという話だったが、それもチームメイトのフォローがあったお陰だろうと俺は見ている。
おまけにたどり着くのが精一杯で、その上、ゴーレムを不用意に倒して仲間を大量に呼ばれて逃げ出すはめになったのだから評価はできない。
むしろ探索者としては落第だ。
「ゴーレムをどんどん倒しているみたいですけど大丈夫なんでしょうか」
先頭に立っているのはシクモアだ。
彼女の右手が鞭のように長くしなやかな剣になっている。
あれは
「シクモア様のアームドコートの形、あれはなんですの? 見たことがありませんわ。それよりあんなにゴーレムを倒してしまっては……」
ボードを見ている連中もシクモアの無謀ともいえる行動に気が付いてざわついている。
ゴーレムは仲間を呼ぶから倒す時は注意するようにと伝えたのだが、なにを考えているんだ。
「あっちは広いエリアがある方向だぞ。まずいな。囲まれる」
案の定、広間にはすでに大量のゴーレムがシクモアたちを待ち構えていた。
ぐるりと囲まれて、容易に逃げ出せそうにはないように見える。
だというのにシクモアに慌てた様子はなかった。
他の三人もアームドコートの召喚すらしていない。
まるでこの状況を待っていたかのようだ。
「まさか、あの数をお一人で相手にするおつもりなのでしょうか」
前に出たシクモアが右手を大きく振る。
たったそれだけで前面にいたゴーレムが薙ぎ払われた。
「すごい……」
反動をつけ、右足を軸にぐるりと体を一回転させる。
彼女の背後に控えていた三人は跳躍して剣を回避した。
しかし囲んでいたゴーレムたちはまともに攻撃を喰らって破壊されていく。
あっという間のゴーレム殲滅劇だった。
あまりのことに誰もが口を大きく開いて茫然としている。
俺の背後から拍手が聞こえたかと思うと、それに倣って食堂中の連中が拍手し、喝さいをあげていた。
「なんでいつも俺の背後から近づいてくるんだ」
そこにいたのはベテラン探索者のスノウボウルだった。