エピローグ

文字数 352文字

 女は二度目のシャワーを浴びると下着をつけた。スカートに足を通すと、男が「泊まらないの?」と言った。朝まで居ても二人の関係を埋めるものがないことを互いが分かっていた。そして女を引き留めるような男の言葉が飾りである事も。

 二人でチェックアウトすると道玄坂を下る。渋谷の騒めきは、終電も近いというのに来た時と変わらず煩い。
 乗る電車は同じはずなのに、互いに歩いて帰ると言って、交差点の真ん中で抱き合うと手を振って別れた。

 信号機の電子音にせかされて、蜘蛛の子を散らすようにスクランブル交差点の人波が四散する。車のヘッドライトが境界線を引くように流れ、街頭モニターに映るアイドルが、夢に溢れた恋愛を元気に歌い上げる。
 街はまだ眠らない。男女の夢は醒めることはなく、ただ現実と交差する。


〈ミッドナイトロマンチカ〉
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