第6話

文字数 3,206文字

登場人物
  広瀬
  莉沙
  美琴
  三好
  坂井
  孝太郎
  木村
  子供
  父親
  母親
  医師
  看護師
  社員
  人×3
  コンシェルジュ
  
○会社。みんな働いている。坂井、誰かに指示を出すなどしている。それを歩きながら見ている高橋。前を見ておらず柱にぶつかる。
高橋「あっすみません」
○柱だと気付く高橋。
高橋「…。」
 ○それを見ていた広瀬、吹き出す。
高橋「な、なンだよ。悪いか。」
広瀬「いや…まだ話してないの?」
高橋「バカ…こっちは一介の派遣だぞ。そうそう近づけるもんか」
広瀬「うーん、それもそうか…」
社員「おーいそこの派遣君。ちょっと手伝ってくれ」
高橋「は、はい。じゃな」
広瀬「無理すんなよ」
 ○広瀬の背中を触ってくる三好。
広瀬「わ」
三好「広瀬。聞いたか? 今度の社内コンペは坂井組のプロジェクトだってよ」
広瀬「坂井組…典子さんのお父さんの会社ですね」
三好「レジャーホテルだってよ。今度こそ…負けねぇからな」
 ○自信がついてきた広瀬はむっとする。
広瀬「僕だって…」
 ○去る三好。莉沙やって来る
莉沙「あっ、広瀬君」
広瀬「莉沙さん? あの…何かありました?」
莉沙「美琴のお弁当を持ってきたの、私丁度お休みだったから。あの子よく忘れるのよ」
広瀬「美琴さんは今会議なので、僕が渡しておきましょうか」
莉沙「ありがとう、助かるな」
 ○何か言いたそうだが(「美琴から告白された?」的なこと)、仕事中なので言わない莉沙。
広瀬「…?」
莉沙「じゃあ、またね。お仕事がんばって」
広瀬「はい、ありがとうございます」
 ○莉沙の過去回想。自宅で美琴と会話している。
莉沙「ねぇ、広瀬さんとはどうなの?」
美琴「えっ? え、えーと…ま、まぁまぁかなー」
莉沙「でも、脈はあるんでしょう? それとも貴方の方がいまいち?」
美琴「…広瀬先輩って、臆病で、失敗ばっかりで、ほんとに情けないよね」
莉沙「あら…」
美琴「でも、それを励ましたり、慰めたりするのが、なんだかすごく楽しい。今まであんな人に会ったことなかった…ペットを飼うってこんな感じなのかな?」
莉沙「え、、、!? ペ、ペットなの? 広瀬君。」
美琴「分かんない。でも…広瀬先輩といる時のあたし…なんか、『生きてる!』って感じがするんだ…」
 ○回想終わり。頬に手をあててはらはらしている莉沙。
 ○美琴にお弁当渡す広瀬、無音声シーン。
莉沙(off)「あの二人、ちゃんと通じ合えるのかしら…。」
CM
 ○家族四人(1人は赤ちゃん)でドライブをしている。
子供「パーパーまだー?」
父親「もうすぐ着くぞー」
 ○トンネルを抜けると、レジャーホテル「パラディーモール」登場。
家族「わ~」
コンシェルジュ「ようこそ、レジャーホテル「パラディーモール」へ。館内のご案内をさせて頂きます。フロントのございます2階には託児所、保育園が備わっており、未就学児童のお子様でも楽しめるイベントを開催しております。3階より上各階にはマシンジムが備わっておりますので、ご自由にご利用頂けます。各お部屋には最新の電化製品が備わっており、ゲームも充実しておりますので是非お試し下さいませ。中央吹き抜けには噴水がございます、水の流れ落ちる様子をお楽しみください。エレベーターは屋上庭園、各宿泊フロア、1階プール、隣接致します動物園まで直通となっております。医務室は4階と1階にございます。そしてプール入り口は3階となっております。2階から1階へウォータースライダーがございますのでお楽しみくださいませ。冬はスキー場としても開設しております。2階お土産コーナーでは様々なパーティードレス仮装グッズ、おしゃれ雑貨なども販売しております。3階にございますお子様専用入り口からお入りいただきますと、ちょっとした迷路と壁に備え付けられたすべり台で楽しむことができます。他にもお子様専用通路、トンネル、隠しプレイルームなどがホテル内のあらゆる所にございますので、ぜひ探してみてくださいね。また、『火山の部屋』前の『きのこの相談室』では、お子様や保護者様のお悩み相談をお受けする専門カウンセラーが常駐しております。日常生活にお悩みの方は是非ご利用下さい。それでは「パラディーモール」でごゆっくりお寛ぎくださいませ」
 ○入っていく家族。
 ○朝、美琴が出勤してくると、何やら騒がしい。みんなテレビを観ている。
美琴「何かあったの?」
社員「坂井組の社長が逮捕されたんだって。労働基準法違反で」
美琴「え!?」
 ○思わず典子を見る美琴。切ない顔をしている。
人「あの人が娘…」
人2「やっぱりね、あの娘にしてこの父親あり…」
人3「いい気味だわ」
 ○ふいっと逃げる典子。
高橋「坂井さん!」
 ○それを追う高橋。
高橋「坂井さん! あの…」
坂井「あなたもパパを悪く言うのね…」
高橋「いや…」
坂井「いや、やめて、聞きたくない…罵らないで…どんな人でも…あたしのパパなの…」
高橋「…昔君は言った。東京中の建物を自分が建てたいって。そしてみんなを幸せにするんだって。君と父親は違うものじゃないか。」
坂井「…そうよ、うちの父親はクズで我が侭で畜生で、娘にも平気でセクハラする最低の男だった…私は…私は…!」
高橋「辛かったね…でももう父親は捕まったんだ…もう大丈夫だから…のりちゃん」
坂井「…孝太郎? あなた、孝太郎なの…?」
 ○うなずく高橋。泣き出す坂井。
坂井「…会いたかった…! どこ行ってたの!」
 ○抱きつく坂井。
坂井「あたしが間違ってた…あたしもやっとそこまで来れた。もう誰も、憎んでないよ」
 ○ざわざわしているオフィスに三好がやって来る。みんなの前で言う
三好「プロジェクトは中止になったとはいえ、結局…またあんたの案が通った」
広瀬「……。」
三好「ふん、まあいい。その代わり…お前に一ついいことを教えてやろう。林原美琴は…男だぞ」
 ○お弁当持った莉沙がやって来る。
広瀬「…え?」
美琴「…!」
 ○しーんとなる周り
三好「調べたんだ…」
 ○免許証を見せる三好。
美琴「う、うちの免許証…!」
三好「まああいつが男でお前は女…お似合いのカップルなんじゃねーの?」
 ○ざわつく周り。
広瀬「……逆です」
三好「あ?」
広瀬「逆です…確かに僕は気弱だし、ヘタレだけど…男です。そして彼女は…女性です!」
美琴「…………先輩…」
広瀬「…僕の人生は、恵まれていたと思います。木村部長に出会えて、男友達もできて、同僚にも恵まれた…もしかしたら、恵まれすぎたのかもしれない。このままじゃ、何かばちが当たるかも知れないとさえ、思っていました」
美琴「……!」
広瀬「それでも、僕は…今の幸せを失いたくない…このまま終わりたくないって、思ってしまった。例えそれがわかままだとしても…美琴さん」
美琴「は、はい。あの、手術とかはちゃんとしてるし、戸籍も大阪に色々手続き行くのが面倒なだけで」
広瀬「僕と…お付き合いして下さい!」
美琴「…ゴメン!」
 ○ざわつく社内。
美琴「アンタは優しくて、かっこよくて、イイヤツだけど…三好さん!」
三好「へ、俺!?」
美琴「わざわざこんな事までするその根性、気の強さ…好き❤」
三好「あっ!?」
広瀬「ええッ!?」
美琴「こないだは振ってゴメン。アタシと…結婚して❤」
三好「いやいやいや!!! ムリムリムリ!!!」
美琴「何でよ!! あんなに相性良かったじゃない!!昔なんて毎晩毎晩・・・」
三好「人の性生活を大声で暴露するなぁぁあ!!」
美琴「三好美琴…ステキな響きー❤」
三好「だ…誰か助けてくれ!」
広瀬「何を今更」
三好「く、来るなオカマ!」
美琴「オカマに求婚してきたのは誰だったかしらー?」
 ○逃げる三好を追いかける美琴。
 〇呆然とそれを見送る広瀬。人ごみの中の莉沙と目が合う。
広瀬「あ」
莉沙「あ、えっと…。なにか奢ろうか?」
広瀬「…うん」
 〇戸惑いながらも、おだやかに笑いながら町に消えていく二人。
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