第1話

文字数 3,089文字

登場人物
 レギュラー
  広瀬桃子 女だが男に見える
  林原美琴 女
  坂井典子 女
  木村剛志 男
  同僚 女
  三好琢磨 イケメン 男
 ゲスト
  三間貴文 男
  奥さん 女

 ○ビル風の音
 ○とあるレストランで、三好と美琴が向き合っている。
三好「美琴……オレと結婚しねえ?」
美琴「……ごめんなさい……。」
三好「何故だ!? オレは背も高いし顔もいいし地位もある……いったいキミの何がそこまで男を避ける?」
美琴「それは………言えません………。とにかく、あなたとお付き合いはできません、ごめんなさい…。」
美琴(言える訳ない………だって私……結婚できないんだから……戸籍上は『男』なんだから…!)
 ○免許証を見ている美琴。
 ○去る美琴を見ている三好。
三好「アンタの秘密…ぜってぇ暴いてやるぜ」
 ○ジャングルの建築家 OP
 ○三間夫妻がエントランスで言い争っている。
奥さん「もう、どこ行ってたのよ、約束の時間30分も遅れてるじゃない」
貴文「ご、ゴメン。近くに大きな水族館があるって言うから…」
奥さん「また水族館に行ってたの!? 魚じゃなくてその辺の花でも見てなさい」
 ○美琴、製図室に入る。
木村「林原君」
美琴「はい部長」
木村「今日から東京に転勤して来ることになった広瀬君を紹介する。前に僕が見てた部下なんだ。本社に早く馴れられるよう、キミからも何かと協力してやってくれ」
美琴「分かりました」
木村「広瀬君、林原美琴君だ」
広瀬「…………ひ」
美琴「……ひ?」
広瀬「ひ、広瀬です…。よ、よろしく……。」
 ○おそるおそる手を伸ばす広瀬。
美琴「あ、は、ハイ。よろしく。」
美琴(大丈夫なんコイツ…目合わせへんし…危ないヤツちゃうの?)
木村「広瀬君は東京出身だが、大学は京都で、そのまま京都部署に所属していたんだ。林原君は大阪出身だから、話が合うと思ってね。一応広瀬君の方が先輩だけど…まぁ呼び方は任せるよ」
美琴「は、はぁ…。」
木村「広瀬君のデスクはそこだから」
広瀬「はい…」
 ○何なん? 不愛想なやつ…いや別に愛想は仕事のうちに入らんけど…と思いながら横目で見つつ二人とも席に着く。
 ○場面転換
同僚「ちょっと広瀬君、このスケールの計算間違ってるんだけど」
広瀬「えっ、あっ…す、すみません…。」
同僚「さっきも書類のコピーに失敗した挙句、失くしたでしょ!? ほんと、しっかりしてよね。ろくに挨拶もできない、簡単な計算もできない、整理もできない、何でこんな能無し、本社に来たんだか」
広瀬「す、すみ…ません…。」
 ○木村が入ってくる。
木村「広瀬君。紹介しよう、三間貴文さんだ。この度ご夫婦で新邸を建設されたいとのことだ。設計を君に任せたいそうだが、やってくれるね」
広瀬「は、ハイ。広瀬です、よろしくお願いします。」
木村「三間さんの旦那さんは足が悪いので、段差などに配慮して欲しいそうだ」
広瀬「では、詳しいお話は応接室でお受けいたします、ど、どうぞ……」
貴文「あなたの建てる建築を楽しみにしているんですよ…」
 ○去っていく三人。それを見送っている美琴。
 ○場面転換、トイレ。
美琴「あの男に家の設計なんて出来るんかな?」
 ○広瀬が入ってくる
美琴「ちょ、ちょっと! ここ、女子トイレやで!」
広瀬「あ、ハイ。あ、ぼ、僕一応女なんで」
美琴「アンタ、女なの!?」
広瀬「は、はァ、すみません…。」
美琴「あのなぁ、何で謝るねん。謝るのはうちの方やろ。」
広瀬「でもやっぱり…ヘンですよね」
美琴「ヘンて? 誰がヘンて言ったん? あたし何も言ってないですけど!」
広瀬「えっと…周りの人とか…母とか」
 ○ため息をつく美琴。そこに典子が入ってくる。
典子「…彼、ここで何してるの」
美琴「この人は今日転勤してきた広瀬さんです…女性です…広瀬さん、この人は坂井さん、同じ設計部で、今新宿の高層オフィスビルのプロジェクトに関わっています」
広瀬「あ、どうも…」
典子「この会社は実力主義。使えない奴はクビ…実力がないなら話しかけないで」
広瀬「は、ハイ…。」
 ○再びため息をつく美琴。
 ○数日後、プレゼンの準備をする広瀬と美琴。
広瀬「すみません、アシスタントをお願いしてしまって」
美琴「いや、いいけど。」
美琴(ったく、なんでアタシがこんなしち面倒臭いことしなきゃなんないのよ、自分のプレゼンで手一杯だってのに…)
広瀬「あ、気をつけて下さい、そこ…」
 ○段ボールの角に足をぶつける美琴。
美琴「痛った…」
広瀬「大丈夫でしたか?」
 ○三好が入ってくる。
三好「おい、三間さんいらしたぞ」
CM
 ○“アーキテスツ・オブ・ジャングル(※会社の名前デス)”へ車で向かっている三間夫婦。
 ○到着すると広瀬と美琴が待っている。
広瀬「この度はお越し下さいましてどうもありがとうございます」
三間「どうも。いやぁ、設計が出来たと言うには、もう、楽しみでね」
広瀬「それではお見せしますので、中へどうぞ」
 ○四方全て真っ白な何もない部屋に案内する広瀬。
広瀬「では、林原さん、お願いします」
 ○頷いて、プロジェクターの電源を入れる美琴。すると壁じゅうに風景が写る。
広瀬「それではこれより、敷地30坪、三間さん邸のご自宅のプレゼンをいたします。まず、旦那様は足がお悪いとの事でしたので、段差はすべてバリアフリーになっております。玄関のドアは遮光ガラスになっています。では、から入りますね。右手にあるのはトイレです。トイレは幅70cmと広々とした作りになっており、その右が収納スペースです。奥へ進みますと、ダイニング、キッチン、リビングとなっています」
 ○奥さん、壁近くまで行ってキッチンの高さを確認する。
奥さん「丁度いいわね。あら、庭が見えるわね」
広瀬「はい、お庭にはこちらから出られるようになっております。」
奥さん「これだけ広ければ、好きなだけお花を育てられるわ!」
貴文「ハハハ」
広瀬「こちらが奥様のお部屋です」
奥さん「この部屋からも庭が見えるのね。素敵ね」
広瀬「そしてこちらが旦那様のお部屋です。」
貴文「これは…」
広瀬「旦那様のお好きなお魚を鑑賞できるよう、壁を水槽にしてみました。勿論、上げ下ろしは自動で行います」
貴文「おお…素晴らしい…こんな夢みたいな家に住めるなんて! ああ…やっぱりここに頼んでよかった、ありがとう!」
広瀬「いえ、まだ建ってもいないですから…」
貴文「そうだった」
 ○奥さんが笑う。それを見ている美琴。
 ○場面転換。廊下とか
美琴「…好きなものなんて聞いたの?」
広瀬「は、ハイ。あの、人にはそれぞれ、不得意なものと、好きなものと言うのがあると思うんです。もちろん過ごしやすい建物を作るのが僕らの仕事です。だけど、それだけじゃなく…なにか、楽しめるものがあると、きっと人は、人生を楽しく過ごせるんですよね」
美琴「…まぁ少しはやるじゃない」
広瀬「え?」
美琴「だ、だから、気弱なだけじゃないって、言ってんの」
広瀬「…ありがとうございます。あの、林原さん」
美琴「何」
広瀬「足、平気ですか」
美琴「え?」
広瀬「さっき…怪我してましたよね」
美琴「ああ、あんなの…平気よ。」
広瀬「…関西弁でいいですよ」
美琴「美琴」
 ○立ち止まる美琴。
美琴「美琴。ハヤシバラて、呼びにくいやろ」
広瀬「美琴さん…素敵なお名前ですね」
美琴「先輩の下の名前は?」
広瀬「僕………こ…です」
美琴「え?」
広瀬「も…桃子」
 ○笑う美琴。
広瀬「そこまで笑うことないじゃないですか!」
 ○笑いながらアドリブしながら退場。
 ○典子登場。
典子「…広瀬桃子…。面白い子が入ってきたわね」
 ○ペロリと舌なめずりする典子。
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